AFC アサヒファミリークラブ

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 札幌の円山球場、旭川のスタルヒン球場に愛着を持つ北海道人は多い。札幌ドームに主役の座を譲ったとはいえ、道内の野球ファンや関係者にとって、ここが数多くの思い出をはぐくんだ特別な場所であることは変わらない。(その思い出の数々は6ページの「投稿塾」で)。特に、高校野球、学生野球で決勝戦の行われる両球場は、「聖地」とも言える。

 しっかりと整備されたグラウンドは今もその輝きを失わない。きれいに刈り込まれた芝、まっすぐに引かれた白線。どんな熱戦の後にも、次の試合までには新品のグラウンドが現れる。その舞台裏を見ようと、両球場を訪ねた。

円山球場 オープンは昭和10年

 円山球場を含む総合運動場を管理するのは、市の委託を受ける「さっぽろ健康スポーツ財団」。場長の駒井広行さんが案内してくれた。通算15年間、円山球場の整備にかかわるベテランだ。

 整備道具が置かれた部屋を見せてもらう。手作りの整備用品がところ狭しと並ぶ。太い釘を何本も打った、土を掘り起こす道具、何種類ものシャベル、個人用の特製レーキ、手作りのライン引き道具・・・。「ホームセンターでいろいろ材料買ってきて作ってるんです」と笑う。


ベースラインを引く。まっすぐに引けるようになるには経験が必要だそうだ。円山球場で使われているのは、よくある車輪付きのものではなく、手製のライン引き道具。ここに体に害のない専用の白粉を入れて、ガイドロープに沿って引いていく。この道具も個人の好みがあるそうで、微妙に違うモデルが複数ある。(円山球場)

整備道具を置く部屋には、さまざまな形のシャベルが整然と並ぶ(円山球場)
整備道具を置く部屋には、さまざまな形のシャベルが整然と並ぶ(円山球場)

グラウンドの土を掘り返す道具は自家製。太い釘がたくさん打ってある。(円山球場)
グラウンドの土を掘り返す道具は自家製。太い釘がたくさん打ってある。(円山球場)

ベースはすぐ汚れる。洗って、ライン引きに使う白粉を水で溶いたものを塗ってきれいにする(円山球場)
ベースはすぐ汚れる。洗って、ライン引きに使う白粉を水で溶いたものを塗ってきれいにする(円山球場)

 球場の整備は雪解けとともに始まる。3月中旬からグラウンドに融雪剤をまく。4月上旬に雪が消えたら、下旬にオープンするまでは忙しい日々が続く。まず、内野グラウンドの表面を堀りおこす。土を軟らかくして均一になじませてから、最後にローラーをかけ均一に固める。土は、北海道の追分産のものを使い、必ず2ミリ網のふるいを通す。細かい粒だけがグラウンドの土となる。

 「プロが来ていたころにはガチガチの固めに、高校生やアマチュアのときには少し軟らかめに調整します」と駒井さん。雨が降ると、砂を増やしたりして水はけを調整する。外野の天然芝は耐寒性の強いケンタッキー・ブルーグラスだ。もちろんタンポポは一つもない。

 夏期に酷使されたグラウンドは、10月中旬にシーズン中の使用を終える。痛んだ芝を張り替え、新しい種をまき、雪が降るのを待つ。

 2000年を最後にプロ野球の公式戦はなくなったが、その後何度か不定期にセパ交流戦の試合が行われた。

 「プロは来なくなりましたが、グラウンド整備の基本は変わっていません。いつも通りの最高の状態を作ってます」と駒井さんは語ってくれた。

スタルヒン球場 個人の名を冠した球場

 スタルヒンの名は、旭川で育った亡命ロシア人で、戦前から戦後にかけて日本の野球界で活躍した名投手、ヴィクトル・スタルヒンにちなむ。

 球場外に立つ彼の銅像がまず出迎える。正面ロビーにはスタルヒンのレリーフや写真がずらりと展示されている。

 球場を管理する旭川市公園緑地協会職員で、花咲スポーツ公園管理事務所の建部正和所長に案内してもらい、グラウンドに降りてみる。周りに高い建物がなく、見えるのは広い空と緑ばかりだ。屋根のない観客席、その解放感は特筆に値する。


球場ロビーにはスタルヒンにちなむ数々の品が展示されている。少年時代の学生服を着たスタルヒンにも出会える。

マウンドは傾斜を正確につけるのが重要なのだという。スタルヒン球場では大きな「定規」を使って、ブルペンもグラウンドも同じ角度になるように調整する。
マウンドは傾斜を正確につけるのが重要なのだという。スタルヒン球場では大きな「定規」を使って、ブルペンもグラウンドも同じ角度になるように調整する。

 グラウンド整備の年間スケジュールはほぼ円山球場と同じ。外野の芝にはケンタッキー・ブルーグラスに加え、寒冷地でも成長の早いペレニアルライグラスをブレンドしている。

 スタルヒン球場では今も年に2回、プロ野球の日ハム戦が行われている。

 「試合の前には日ハムの専属グラウンドキーパーも来て、ウチの職員と一緒に整備しています」と建部さんが説明してくれる。

 ピッチャーズマウンドはグラウンド整備の中でも特に時間をかけるところだという。投手の脚が着地するところが大きく削れるので、そこだけを別種の固い土で固める。「大谷選手が投げたときは、背が高いので着地点がすごく前になる。普段は固めないところをがっちり固めましたね」と思い出を語る。


北海道追分産の土は、2ミリのふるいにかけられ、それより大きなものははじかれる。(スタルヒン球場)


このベースに戻ってくるために、選手たちが全力を尽くす。スパイクで踏まれてすぐに痛むので、1シーズン5、6回は交換される。(円山球場)

 両球場とも、夏の高校野球はいちばん盛り上がる大会だという。球音、歓声、ブラスバンドの音楽が、屋根のない広い空に突き抜けてゆく。爽やかな暑さの中での高校野球観戦は北海道の特権だろう。高校野球の南北北海道大会の決勝戦で入場者のピークを迎えたあとも、大学野球や社会人野球など、10月中旬までまだまだ野球観戦が楽しめる。
(文・写真:吉村卓也)

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