AFC アサヒファミリークラブ

AFC(アサヒファミリークラブ)は、朝日新聞北海道支社オリジナルの会員制クラブです。どなたでも無料でご入会いただけます。

ログイン後にご利用いただける便利な機能があります。ぜひご登録の上、ログインしてご利用ください。

「意見の対立はしょっちゅうですよ」と、とみおかクリーニングの社長、富岡裕喜さん(左)、「わははは」と、父で会長の重喜さん。中標津町の本社工場で。
「意見の対立はしょっちゅうですよ」と、とみおかクリーニングの社長、富岡裕喜さん(左)、「わははは」と、父で会長の重喜さん。
中標津町の本社工場で。

「北海道の海を汚さない」そんな思いから生まれた、
中標津のクリーニング屋さんのミルク缶入り洗剤

 札幌駅地下街の、ちょっとこじゃれた生活雑貨の店の入口に、かわいいミルク缶が並んでいた。部屋のインテリアによさそうな、酪農王国北海道を象徴する小さなミルク缶。でもその中に入っているものは洗濯洗剤なのである。

 「北海道だからミルク缶に洗剤かぁ」とそのアイデアに感心しつつ、商品ラベルに小さな字で書かれた1行に目が止まった。販売者「とみおかクリーニング」、その所在地「中標津」。

 とみおかクリーニングは1950年に中標津で創業し、今年で創業68年を迎える中標津の老舗クリーニング店だった。聞けばこの洗剤、リピーターの多い人気商品であるらしい。この生活雑貨の店も直営店だ。

 歴史あるクリーニング店が、なぜミルク缶入りの洗剤を売るに至ったのか、その物語をひも解いてみたい。

銀行員からの転機

 中標津は酪農の町だ。人口約2万3,500人、牛の数は約4万頭と言われる。札幌からは約400キロメートル。車で行けば、休憩を入れてたっぷり6時間以上は必要だ。

 とみおかクリーニングの社長を務めるのは富岡裕喜さん。昨年、父から社長の座を継いだ。

 裕喜さんの最初の仕事は銀行員だった。大学を卒業して「たくぎん」の外国為替課に勤務し、東京にいた。入社2年目、ちょうど札幌での合宿研修中の朝、たくぎん破綻のニュースが飛び込んで来た。

 「大変だ!起きろ!すぐ店に戻れ!」

 ほとんどの社員にとって全くの寝耳に水の話。職場は大変な騒ぎだった。やりたかった海外との仕事を担当できたのも束の間、思いもかけぬ事態となった。結局、銀行員として新たな仕事を探すことはせず、東京で他のメーカーに再就職し、海外部門を担当していた。

 転機は30歳を過ぎた頃。当時、とみおかクリーニングの社長だった父、重喜さんから連絡があった。

 「帰って来ないなら、会社を売ろうと思う」。

こだわりの父
先代の社長。

 「いやぁ、何としても継いで欲しいという気持ちは全くなかった。人様のものを預かるっていうのは大変な仕事ですからねぇ」と重喜さんは当時を振り返る。

 結局、裕喜さんは、父の会社で働く決心をした。その後、クリーニング業から洗剤や雑貨の販売へ事業を広げたのは裕喜さんのアイデアだが、ミルク缶の洗剤の誕生には父・重喜さんの築いたものが土台にある。

 「父は健康オタクみたいな人でして・・」と裕喜さんは言う。

 食べ物、健康法、よいと言われると何でも試す。

 「幼い頃から体が弱くて、体力も無くすぐに風邪ひいて、運動会ではいつもビリ。そんな子でしたね」と重喜さん。だから人一倍体に気をつけて、食べ物や環境にもこだわりを持つようになったという。

洗剤は特注のミルク缶入りがギフトにも人気。詰め替え用もある。
洗剤は特注のミルク缶入りがギフトにも人気。
詰め替え用もある。

店舗では洗剤の量り売りもやっている。
店舗では洗剤の量り売りもやっている。

海を汚したくない

 自分のクリーニング店で使った水が下水に流れ、それはやがて海に流れる。中標津は海まで約20キロ。いくら下水終末処理場を通るとはいっても、本当にきれいになっているのか、自分の食べる魚に影響があるのではないか、と心配になる。

 調べていくうちに、洗剤には欠かせない界面活性剤が環境問題になっていることを知る。界面活性剤をほとんど使っていない洗剤を作るメーカーと出会い、工場の水洗いに使う洗剤はすべてこれに変えた。ミルク缶の洗剤の中身は、この自社工場の洗剤とほぼ同じものだ。

 「工場で使っている洗剤がそんなにいいものなら、売ってみよう。中標津だから入れ物はミルク缶でどうだ、という軽い気持ちでした」と裕喜さん。

 この洗剤、界面活性剤の含有率が0.5%以下で、ほとんど泡は立たない。現在、3種類を販売しているがうち2種類は無香料だ。そのうちの1種類は消臭除菌効果のあるもので、部屋干しにも向く。

来るのが楽しい店を

 父のこだわりは洗剤にとどまらなかった。布団やじゅうたんがダニの住み家となって、アレルギーの原因になっていると聞くと、「日本人を健康にするため」と、布団洗いと、じゅうたんのクリーニング機械をいち早く導入した。「こだわっちゃったんですねぇ。はははは」、と重喜さんが笑いながら話す。

 「私は在庫をかかえる仕事はどうもね・・」と父は物販には反対したようだが、裕喜さんは押し切った。人口はそれほど減ってないのに、クリーニングの需要は最盛期と比べて半分近くになっている。それは家で洗う人が増えたから、と見込んだ。クリーニング店はお客さんが2回足を運ぶ必要がある。ならば来るのが楽しくなる店をと、雑貨販売コーナーを設け、インテリアにも気をつかった。

 「あの破綻がなかったら、今も銀行員だったかもしれないですね」と裕喜さん。

 中標津の本社、札幌や道内に展開している店舗を行き来する。海外への販路拡大も計画中だ。
(文・写真:吉村卓也)

コーヒーショップ?いえ、クリーニングの受付窓口です。中標津町のショッピングセンター、東武サウスヒルズにて。
コーヒーショップ?いえ、クリーニングの受付窓口です。中標津町のショッピングセンター、東武サウスヒルズにて。

とみおかクリーニング 本部:中標津町東35条北4丁目
札幌本店:札幌市中央区 北7条西19丁目38-28)
とみおかクリーニング LIFE LAB.:札幌アピア店)
http://www.tomioka-group.co.jp/

先頭へ戻る