まず、なぜ新聞記者になろうと思ったのかを聞かせて下さい。
新田:(以下、新:)大学では哲学を専攻していました。学外ではNPOの活動に関わっていて、沖縄の基地問題や核軍縮、若者の労働問題など社会問題には強い関心を持っていました。その延長線上にあるのが新聞記者だった、という感じですね。でも経済については素人でした。
どのようにして経済担当になったのですか。
新:秋田に赴任していたときに、地域の人口減少や高齢化の現場に直面しました。それらをいかに乗り越え、地域を活性化させるかという問いに対して、自分では答えを出せず、太刀打ちできないことを痛感しました。そんなとき、経済部にいたことのある先輩記者が自分にない視点を持っていることを感じ、自分も経済の視点を身につけたいと思い、自ら経済部を希望しました。
これまでどんな分野を担当してきたのですか。
新:大阪では、電機メーカー等の民間企業を中心に取材し、東京では財務省で税制、経産省でエネルギー政策や電力会社を担当していました。
エネルギー問題は今も関心が深いと聞きました。
新:そうですね。灯油価格や電気代が高騰している昨今、冬の暖房もあるので、北海道では重要なテーマだと思います。道外出身なので、冬暖かい北海道の住宅や建物がどんな仕組みになっているのかにも興味があります。これまでは灯油ストーブや温水パネルヒーターが主流でしたが、最近は道外のように、エアコンだけで暖房する住宅も出てきました。床暖房も普及しています。北海道は住宅から出る二酸化炭素量が多いので、脱炭素を目指すうえでも新しい動きかと思います。
電気といえば北海道では胆振東部地震に起因するブラックアウトが記憶に新しいです。
新:そうですね。電力の供給の観点から言うと北海道は「大きな離島」のようなイメージなんですね。その島にある大きな発電所がダメになったときの全体に与える影響が大きいんです。ブラックアウトの反省もあり、バックアップのために道外とつながる送電線の容量は1.5倍に増やされました。4年後には地震前の2 倍になる予定です。
北海道は、海岸沿いに並んでいる風車もずいぶん増えて、再生可能エネルギーの発電も多いようなイメージがあります。
新:実は道内でも全国でも太陽光発電に比べると、風力の割合はそれほど多くないんです。そして、いちばん再生可能エネルギーの割合が多いのは九州なんです。
へえ〜、そうなんですね。これからはどんな発電が増えそうですか。
新:今は洋上風力発電が注目されていますね。北海道のみならず、全国いろいろな地域で事業者が手を挙げています。でも再生可能エネルギーの発電所がどれくらい地域に恩恵をもたらすのかは、よく見ていかないといけないと思います。
原発もありますが、泊は止まったままですね。
新:はい、もう10 年以上止まっています。東日本大震災後に最初に再稼働申請をした全国5原発の中で、再稼働していない唯一の原発となっています。
最近では、千歳に来る半導体のラピダスが注目を集めていますね。
新:経済界はすごく活気づいていますね。チャンスを逃すな、という感じです。北海道は製造業が弱いという課題があり、転機となるかもしれませんが、これもそれによって恩恵を受ける人たちは札幌圏が中心とみられ、地域間の格差は広がりそうです。
いろいろなテーマがありますね。他に関心があるものはありますか。
新:新幹線開業を控えたJR 北海道には関心がありますね。「新幹線頼み」なところがあり、新幹線がないと鉄道事業者として自立できないという大きな問題がありますが、その新幹線もどのくらい利用されるかは未知数です。流通ではコープさっぽろに興味があります。組合員数が200 万人を突破し、道内世帯の8 割以上が加入していると言われていますが、1998 年に経営破綻してどうやってここまで支持されるまで回復したのかとても興味があります。取材してみたいですね。
北海道生活はいかがですか。
新:都会と自然のバランスがとてもいいです。休日は道内を巡って楽しんでいます。なるべく長くいたいと思っています。
新田 哲史(しんでん さとし) 記者
2012年朝日新聞社入社。神戸総局、秋田総局、大阪本社経済部、大阪社会部、東京経済部を経て、2022年春から、東京経済部兼務、北海道報道センターへ。エネルギー問題やJR北海道等、道内経済全般を取材テーマとする。
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