和民族(和人)である私はアイヌとどう向き合えばよいのだろうか?そんなもやもやした思いが積もり積もって、この本を知った。読み進めると、アイヌと日本人(ではなく和民族)、マイノリティ(少数)とマジョリティ(多数)の関係性や存在の在り様が、薄皮をめくるように眼前に提示される。差別の根源がどこにあるのか、私はそれをどう考え、何に対してどう行動するべきかといったことが、田房の漫画と北原の解説で感覚的かつ論理立って理解できる。反省自戒を込めつつ読み返す。
著者 北原モコットゥナシ 漫画 田房永子 出版 303BOOKS 発行 2023年12月12日 価格 1760円(税込)
エッセイの名手が現れた。とにかく面白い。物心ついてからの利尻島生活を下敷きに、札幌の高校時代、金沢の学生時代、アルバイトから書店員として働く現在、時折の帰省、それぞれのエピソードにその時々の思いを交錯させ、テンポよく進む語り口はページを繰る手を止めさせない。爆笑はないが読み手を微笑ませ、ちょっとホロっとさせる。その文章には独特のリズムと、人を飽きさせない巧みさがある。お世辞でも過大評価でもないのは、一話読んでいただければお分かりになるだろう。
著者 工藤志昇 出版 寿郎社 発行 2023年10月15日 価格 1870円(税込)
評者:鈴木幸夫 知床自然大学院大学設立財団理事・元朝日新聞文化財団事務局長