道南・今金町出身の本間照蔵社長は1932(昭和7)年生まれの御年84歳。農業や自動車の営業マンといった職歴を経て、38歳で同社に就職した。
「当時は大量生産・大量消費の高度経済成長期。納豆市場も安価な輸入原料と大規模な機械化で価格競争が起こり、中小メーカーにとっては厳しい環境でした」。
転機は85年、北海道立総合研究機構中央農業試験場の委託を受け、納豆に適した大豆の研究に取り組み始めたこと。元々凝り性かつ研究家肌でもあった本間さんは、大豆の歴史から最適な栽培方法、品種改良まで独自に勉強とフィールドワークを重ね、いつしか「大豆のことなら本間さんに聞け」と言われる存在に。同時に他社製品との差別化を図るため、工場も品質重視の製造体制に転換していった。
研究開発に協力した納豆専用の道産大豆を使った「スズマル納豆」を90年に発売。以来、こだわりの納豆を次々と世に送り出してきた。豆そのものの風味や違いが楽しめる商品は、全国各地に多くのファンを抱えている。
「豆腐は中国伝来ですが、納豆は日本古来の発酵食品。実は大豆をそのまま食べる文化を持つ国は意外と少ないんですよ」。また最近は黒千石に代表されるように、その土地の気候風土に合った個性派の品種が見直されている。
「寒暖差と日照量のバランスから見ても、北海道ほど大豆栽培に適した地域はありません。北海道産の大豆は栄養価も満点で、納豆にするとさらにうまみが際立ちます」。
現在も毎晩300gの納豆を食べているという本間社長。「しょうゆをかけずにそのまま食べていますが、これが毎日でもまったく飽きない。今も元気そのものなので、『本間さんのところの納豆はもう薬ですね』なんてお医者さんに言われているんですよ(笑)」。
元祖健康食品とも言える納豆。本間社長の情熱と快活さを見れば、その効能の程は推して知るべしだ。
(株)豆蔵 札幌市東区東雁来5条1丁目4-26 TEL 011(781)1311
カメラマンの上野さんとライター能登が3種の手づくり納豆をじっくり食べ比べ。ちなみに二人とも納豆は大好物。上野さんはタレをかけてそのまま食べる派、能登はしょうゆと刻んだネギを混ぜて炊きたてご飯と一緒にかっこみたい派です。
世界にひとつの大豆品種「ホンマー号」を使用
まぼろしの納豆
上野しっかりとした歯ごたえがありますね。食べた瞬間、口の中に大豆の香りがフワッと広がります。
能登1粒1粒の豆の大きさと、青黒い表皮の見た目にちょっと驚きますが、大豆本来の風味が味わえます。糸引きは少なめ。私はご飯にかけました。
最高級の大粒大豆「つるの子大豆」を納豆に
つるの子納豆
上野ふっくら軟らかい口当たりが特徴。クセのない豆の香りが際立っていて、とても食べやすいですね。
能登別名『豆の貴婦人』、本間社長が太鼓判を押す大粒大豆だけあって、納豆にしても抜群の美味。豆のホクホク感が堪能できます。糸引きは普通。ご飯との相性もバッチリです。
道産極小黒大豆「黒千石」の発芽豆を商品化
なんとみごとな黒千石なっとう
上野小粒で軟らかく、力強い大豆の香りが特徴。発芽のせいか、豆の味に野性味が感じられました。
能登発芽黒千石を使った納豆は初めて食べました。糸引きも十分で、かめばかむほど大豆の滋味が染み出してくる逸品。やっぱりご飯にかけてしまいました。
※あくまでも個人的な感想です。皆さんもぜひお試しを。
2016年3月27日 特集139号 ※記事の内容は取材当時のものです。