厚岸町で、道東地方で初めてとなるウイスキーの蒸留所が完成し、11月からウイスキー造りを始めている。本場の英国スコットランドの伝統的な製法を用いて、将来的には厚岸で作った大麦などを使った道内産のウイスキーを目指している。
製造を始めたのは、食品原料の輸入などを手がける専門商社「堅展実業」(本社・東京都千代田区)。
同社は、国産のウイスキーの原酒の輸出もしていたが、2010年ごろから、「ジャパニーズウイスキー」が海外で人気になり、入手が難しくなったため、自社製造を検討していた。
候補地を探したところ、厚岸町の水がウイスキー造りに適していることやピート(泥炭)も豊富。気候もウイスキー造りが盛んな英国スコットランドのアイラ島に似ていることから、同町に「厚岸蒸溜所」を建設した。蒸留器などの重要な設備はスコットランドの企業から導入し、現地の担当者が設置した。
同社が目指すのは、スモーキーフレーバー(モルトウイスキーの特有の香味)。麦芽をいぶすために使うピート以外に、同町で大麦栽培にも挑戦し、将来的には道内産のウイスキーも目指している。
出来立ての原酒は「非常にフルーティー。想像以上の風味」と評価している。今年度は3万リットルの生産を目標にしており、3年ほど熟成させる。中心ブランド「厚岸」を 年度から全国のウイスキー専門店などで販売する予定で、海外展開も検討している。
厚岸町は、カキ養殖や酪農が盛んな地域。カキやチーズなどと組み合わせた発展的な取り組みも考えている。
同社の樋田恵一社長は「厚岸でしか出来ないウイスキーを造りたい。高品質のウイスキーを全国発信し、町に恩返し出来れば」と意欲を見せている。
(朝日新聞釧路支局記者 佐藤靖)
●堅展実業(けんてんじつぎょう)
株式会社厚岸蒸溜所 〒088-1124 厚岸郡厚岸町宮園4丁目109-2
→堅展実業「厚岸蒸溜所」
※現在工場見学などは行っておりません。
英国スコットランドの西岸に位置し、住民は約3000人。メキシコ潮流の影響で、スコットランド本島より温暖な気候。ウイスキー蒸留は島の基幹産業で、現在8つの蒸留所がある。ピート(泥炭)によるスモーキーさが特徴のウイスキーは「アイラ・モルト」として知られており、モルトウイスキーの聖地となっている。
モルトウイスキーとは、大麦の麦芽(モルト)を使用して造られたウイスキーのこと。スコットランドで造られるモルトウイスキーは、大麦麦芽を100%使用し、単式蒸留釜で2回から3回蒸留させたもの。また、1つの蒸留所で造られたモルトウイスキーをシングルモルトと言う。アメリカでは大麦麦芽が原料の51%以上のものをモルトウイスキーと言い、とくに原料が大麦麦芽のみの場合にシングルモルトと呼ぶことがある。
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紀伊國屋書店札幌本店 竹田順子さん
2016年12月25日 特集148号 ※記事の内容は取材当時のものです。