留辺蘂町温根湯(おんねゆ)温泉のふじや菓子舗は、大正2年の創業以来、1世紀続く菓子店です。3代目の現社長とともに菓子作りを担うのが専務の藤田照(あきら)さん。白花豆のPRや消費拡大を目指す「るべしべ白花豆くらぶ」の一員として、白花豆を使った個性的なスイーツを考案・発信しています。
ふじや菓子舗の店内に入り、ずらりと並ぶ和洋菓子を眺めただけでも、白花豆のお菓子がいくつも目に飛び込んできます。「白花羊羹」に「白花パイまんじゅう」「白花パウンドケーキ」「焼きドーナツ」など、その数はざっと10種以上になります。
それらラインアップの中で最も人気が高いのが「白花かすてら」。10数年前に藤田さんが考案したお菓子で、今では地元はもとより観光客やネットショップのファンにも親しまれる代表銘菓となりました。見た目はシンプルですが一口食べると驚くほどのふわふわ食感に感激します。その秘密は生地に練り込んだ地元産の白花ハチミツ。高価なものですが上品な甘さが気に入って、藤田さんはたっぷりと使っています。こうして軟らかさを極めたカステラ生地の中には、自家製の白花豆あんがぎっしり。豆の味わい際だつあんと生地が、抜群のおいしさを奏でています。
「留辺蘂町産の白花豆は粒が大きく、ほくほくとして味も香りも良い高級白インゲンです。しかし皮が厚いため、あん作りの裏ごしに手間と時間がかかってしまうのが難点。そこは大変ですが、白花豆ならではの格別な白あんができます」と藤田さん。白花豆本来の味を生かすため砂糖も控えめにしています。
一般的には甘納豆や和菓子の白あんに使用される白花豆ですが、藤田さんは斬新な発想で生洋菓子にも用いて新商品を誕生させてきました。たとえば、「白花豆のむーす」はミルク&生クリームのコクと白花豆の風味が溶け合う白いムースで、後を引く白花豆の味わいが妙味です。注文を受けてからカップに絞り出すので、繊細な口溶けとフレッシュ感も楽しめます。 そして「白花豆もんぶらん」は、アーモンドクリームのタルトに生クリームと、さらにその上に白花豆のあんと生クリームをブレンドしたものを惜しみなく絞り出したモンブラン。頂上に飾られた白花豆のグラッセがチャームポイントです。これら新しい発想で生まれた和洋折衷のご当地スイーツにも注目が集まってきています。
このように白花豆は可能性を秘めた素材ですが、それだけではなく、栄養価も極めて優れていることはまだあまり知られていません。白花豆はビタミン類やカルシウムを豊富に含み、その量はフルーツをしのぐほど。100g当たりの食物繊維はゴボウの3倍ともいわれています。これほど素晴らしい素材が身近にあったことは、菓子職人・藤田さんにとっての幸運でしょう。
「道の駅 おんねゆ温泉」の一施設である「果夢林(かむりん)の館」のショップで、今年4月から地元産白花豆を使ったご当地ソフトクリームが登場しています。これは、ふじや菓子舗の藤田専務がレシピ監修を担っている本気のソフトクリーム。だから味は折り紙付きです。しかも白花豆は食物繊維が豊富だから体にもうれしい♪ 牛乳のコクも相まったおいしさを楽しんでください。1個350円、通年販売予定。
「るべしべ白花豆くらぶ」(森谷裕美会長)は、留辺蘂町の白花豆のPRや消費拡大、地域活性を図ろうと2015年に発足しました。白花豆を生産する農家の女性たち6名が業種の垣根を超えた連携を呼びかけたことから始まり、現在会員は18名(17年8月現在)。 生産農家や観光ホテル役員、レストランシェフに商工会職員。ふじや菓子舗の藤田さんを含めた2名の菓子事業者もそろう強力な輪となっています。四季の地域イベントで白花豆料理やスイーツの販売を行うほかレシピ提案なども実施。 それぞれの特技を発揮し合いながら幅広い場で活動しています。
藤田さんは「るべしべ白花豆くらぶ」で生産者と交流を重ねているため、白花豆は種をまいて芽が出た後に、気が遠くなるほどの支柱を立てたり、伸びてきたつるを支柱に巻き付けたりと、春から晩秋まで人の手仕事が必要なことをよく知っています。 だからこそ、ふじや菓子舗の白花豆スイーツは、生産農家40戸の情熱や努力をも引き継いで作り上げる味。種からお菓子になるまで半年以上の時間と人の連携を経た、留辺蘂町の幸です。
10月20日(金)まで、おんねゆ温泉の「丘と畑の早朝のウォーク」が毎日催行中です。ガイドと白花豆グルメ・プレゼント付きで1人1,000円。
2017年9月18日 特集157号 ※記事の内容は取材当時のものです。