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>HOME >特集一覧 >VOL.222「北海道とカーリング」(2023年2月20日)
特集「北海道とカーリング」の表紙の写真です

特集Vol.222
『北海道とカーリング』

公開:2023年2月20日 ※記事の内容は取材当時のものです。

私がカーリングを始めた訳

高校生のチーム 帯広の「ジュエリーアイス」
高校生のチーム、帯広の「ジュエリーアイス」、左からコーチの川平操子さん、市山ひおりさん、市山ひまりさん、佐藤七希さん、中村碧音さん。週に2〜3回はリンクで練習する。

 オリンピックでの北海道勢の活躍もあって、すっかり人気のスポーツとなったカーリング。北海道は日本でも競技人口がいちばん多く、日本カーリング協会に所属するチームも、カーリング場の数も日本一だ。日本でカーリングが最初に行われたのは、1977年の池田町が最初だったと言われる。1981年には北海道カーリング協会ができ、1998年に長野五輪でオリンピック種目となった。そして、2022年北京五輪での「ロコ・ソラーレ」の銀メダルは記憶に新しい。とはいえ、スキーやスケートに比べれば実際にやったことがある人はまだまだ少ない。どんな人たちがカーリングを楽しんでいるのだろう。カーリング場を訪ねてみた。 

微妙なデコボコのある氷

 最初に行ったのは、帯広市にある「カールプレックスおびひろ」。この施設は、寒冷地の農産物貯蔵などを専門とする農機具会社が作った民間の施設で、通年営業している。北海道の中でも、十勝はカーリングが盛んな地域だ。

 中に入ると、暖かいロビーの中からガラス越しにカーリング場が見える。扉を開けて氷のあるエリアに入るとさすがに寒いが、カーリングをしている人たちはけっこう薄着だ。やはり体を動かしているからだろうか。

 約20キロの「ストーン(石)」が氷の上を滑っていく。ゴロゴロという音がする。カーリング場の氷は、スケートリンクと違って、表面に「ペブル(小粒)」と言われる微妙な凹凸がついている。これは氷の摩擦を少なくして石が滑りやすくなるように、氷の表面に霧を吹きかけ人工的にデコボコを作っているためだ。ゴロゴロいうのは、このデコボコの上を石が滑って行くときの音だ。ブラシで氷を磨いている姿もおなじみだが、あれはストーンが進むコースの氷を磨いて溶かし、ストーンが進む距離を延ばしたり曲りを調整する「スイープ(掃く)」というテクニックだ。ストーンを狙ったコースで投げる、思った位置に置く、スイープでそれを微調整する、というのがプレーヤーのやることだ。カーリングという名前は「カール(曲る)」という言葉に由来するので、ストーンが真っすぐ進まないのは当然のことなのだ。

 簡単にルールを説明すると、「シート」と言われる競技エリアに描かれた「ハウス」と呼ばれる丸い輪の中心のできるだけ近くにストーンを投げ入れた方が勝ち。1チーム4人で行い、1人が2投ずつ交代で投げ、中心に近いストーンのあるチームが勝ちとなり、そのストーンの数が得点となる。負けたチームの得点は必ずゼロだ。この勝負を「1エンド」といい、これを正式な試合では10回繰り返して合計点を競う。

ストーンを滑らせるために氷を磨くためのブラシ
ストーンを滑らせるために氷を磨くためのブラシ
カーリングのシューズ
カーリングのシューズは左右で違う。力を入れる足は滑らないようにゴム底、もう片方は滑りやすい素材が貼られている。

帯広の高校生チーム

 訪れた日は帯広の高校生の女子チーム「ジュエリーアイス」の練習日だった。高校1年生が3人、2年生が1人。チーム名は、厳冬期に十勝・豊頃町の海岸に打ち上げられる十勝川から流れ出した宝石のような氷の愛称にちなむ。ジュエリーアイスは23年1月に行われた北海道高校選手権で見事優勝し、2月9日から青森で開かれる全国大会に出場する。本誌が発行されるころには結果が出ているはずだ。(※追記:ジュエリーアイスは全国大会準優勝)

小学生時代の体験会から

 どんなきっかけで高校生たちはカーリングを始めたのだろう。4人とも、いわゆるスポーツが得意なタイプではなかったそうだ。市山ひおりさんと、ひまりさんは双子の姉妹、そして佐藤七希(なつき)さんが高校1年生、中村碧音(あおね)さんは2年生だ。共通しているのはみんな小学校のときにカーリングの体験会に参加したこと。学校の部活には入っていないのでいわゆる「帰宅部」なのだが、カーリングの練習は週に2、3回行う。練習メニューも自分たちで決める。通っている高校もまちまちなので、ときにはオンラインでつないで筋トレなどを行うこともある。

 チームのキャプテンは市川ひおりさん。「投げて、スイープして、みんなで考えながら一投一投決めて勝利できるのが楽しい」と語る。「スキップ」と呼ばれる作戦の司令塔の役割は佐藤さんだ。「いろいろな年代の人とゲームができて、年上の人たちのチームに勝ったり、もっと小さい子のチームに負けたりということも面白いところ」という。

 世界を目指すチームを作りたい

 チーム結成のきっかけになったのは、現在チームのコーチを務めるカールプレックスのスタッフでホールマネージャーの川平操子(みさこ)さんだ。その時の一言が「カーリングで世界を目指すチームを作らない?」だった。川平さんは15年前にこのカーリング場ができたときに、事務職として入った。カーリングはやったこともなく、お客さんに勧められ、せっかくカーリング場で働いているのだからとやってみたのが最初。スポーツを本格的にやった経験も無かった。ママ友を誘って、毎週1回カーリングをやってランチを食べるという軽いノリでやっていたが、だんだんと大会に出たりしているうちに、自分でも知らなかった負けず嫌いの気持ちが呼び覚まされたという。勝ったり負けたりを繰り返し、だんだんと勝てるようになっていくうちに面白くなってきた。強豪のチームと戦って、カーリングのことがより深くわかるようになってきた、という。

 オリンピック出場チームの「ロコ・ソラーレ」と対戦したときもあった。負けたが「けっこういい試合」をして、満員の会場で、観衆に見守られながらプレーするのが楽しくてしょうがなかった。川平さんはシニアチームのメンバーでもあり、4月に韓国で開かれる世界大会に参加する。

 カーリングの体験会も続けている。「子どもたちには、こういう楽しい冬の遊びもあるよ、と伝えたい。ジュニアの活躍なくして競技の繁栄はない。いつか一緒に世界大会に出るのが夢です」と語る。

伊藤哲也さん
シニアチームを作ってカーリングを楽しむ伊藤哲也さん(後ろ中央)たちのチーム。年齢をそれほど考慮せずにプレーできるのもカーリングの特徴だ。いちばん体を使って疲れるのはスイープと呼ばれるブラシで磨くところだという。

いちばんハマったのがカーリング

 このカーリング場を中心に同じくシニアで活躍するのが、帯広カーリング協会会長で北海道カーリング協会理事の佐藤真康さんだ。70歳の今も現役で、「カーリングエバンジェリスト(伝道師)」と名刺に書いている。カーリング歴は42年だ。

 カーリングとの出会いは、カーリングを日本に紹介するため北海道を回っていたカナダ人のウォーリー・ウォースリアックさんの通訳を友人がやっていたのが縁で、「見に来てくれ」と誘われ、屋外の即席リンクで体験したのがきっかけ。当時、カーリングを知っている人はほぼ皆無の時代で、もちろん佐藤さんも初めて聞く競技名だった。元々野球少年でスキー、スノーボード、空手といろいろなスポーツをやっていた佐藤さん。最初にやってみた感想は、「これ、スポーツなの?」だった。それが「ちょっと面白いかも」となり、結局いちばんはまったのがカーリングだった。

 「一発逆転のギャンブル性というか、いいショットを決めたときのアドレナリンの出方がすごい。『氷上のチェス』と言われることもあるがちょっと違うと思う。なんせ思ったところに石を置けないのだから。氷を読むことがとても大事なんです」という。

 佐藤さんはシニアの世界選手権に6回出場している。本場カナダに行ったときに、小さな村にもカーリング場があってそれが地域に根ざし、時にはお酒を飲みながらカーリングをやり、社交場のようになっている文化に感激した。100万人とも200万人とも言われる本場の国での競技人口。対する日本は全国で約2500人くらいだという。

 世界選手権では5位が最高。そのとき、最後にカナダのチームに当たってボロボロに負けた。「でもシニア大会では勝ったチームがビールをおごってくれるんです。それも楽しい」と語る。「100歳になっても公式戦に出たい。それが今本気で考えていること」と語る。

カーリング場は不足気味

 札幌市もカーリング場を持っている。2012年に完成した「札幌市カーリング場」がそれで、ネーミングライツ(命名権)で「どうぎんカーリングスタジアム」の名で知られる。人口集中地であることと、カーリングの知名度が上がったことにより利用者が増え、予約でいっぱいの日が多い。札幌のリーグに所属しているのは約90チームあり、カーリングをやりたいけれど場所がない、という状況になりつつあるのが現状だ。

北海道カーリング協会理事を務める佐藤真康さん
北海道カーリング協会理事を務める佐藤真康さん。カーリング歴42年。
2013年カナダのシニア世界選手権に出場したときの佐藤さん(左から3人目)
2013年カナダのシニア世界選手権に出場したときの佐藤さん(左から3人目)。世界選手権には6回出場。大会後の交流会も楽しみのひとつ。

シニアは粘り強さで一日の長あり

 大会に出るのに年齢制限は無いが、50歳を超えると「シニア」というくくりになり、シニアの日本選手権もある。札幌Sr(シニア)というシニアチームもこのカーリング場を練習場所としている。2022年11月、青森のシニア日本選手権では3位になった。このカーリング場ができて間もなく、近くに職場があった関係で、初心者の体験から始まったチームだ。スキップを務めるのは会社員の伊藤哲也さん(57歳)。10年ほど前、初めて体験したときのことを思い出す。

 「誰でもできるかなと思ったけど、思ったよりできない。最初はみんなで滑ったり転んだりしながらも楽しくやりました。試合に出るようになっても下手は下手なりに楽しい。思ったところにストーンが行かないので、もうちょっと練習しようかとなりますね」と語る。

 「シニアは体力では負けますが、粘り強さやメンタルの強さが特徴かも」と言う。

 伊藤さんの妻の朋子さんは埼玉県出身。「北海道らしいスポーツをやりたい」と自身もカーリングを始め、シニアでは無いが「札幌Sr」のコーチでもある。

 「初めてやったとき、ハウスの中にストーンが入ったのがすごく嬉しくて。もっとうまくなりたいと思いました」と振り返る。

 リーグ戦の試合を見学させてもらった。この日の伊藤さんのチームはシニアメンバーが3人と若手1人。対戦相手は全員20代の女子チーム。札幌のリーグに男女の区別はない。なかなか手強いチームで、ストーンをいいところに置いてくる。見ているとだんだんと分かってくるのだが、よい位置でストーンが止まったりすると「うまい」と思う。結果は残念ながら大敗。年齢を重ねたメンタルの強さを発揮するチャンスは無かった。

 スコットランドか北欧で発祥したといわれるカーリング。冬が長く、寒さの厳しい地域で始まった冬の娯楽だ。ヨーロッパや北米が強豪だが、日本や韓国でも広まりつつある。冬のスポーツとしてはまだ新しい競技。北海道カーリング協会によれば、地域のカーリング協会があるところは、苫小牧、伊達、平取、室蘭、札幌、妹背牛、南富良野、士別、名寄、稚内、北見、網走、帯広、池田、釧路、別海だ。一度経験してみたいという人には体験会に参加するのが手っ取り早いだろう。10年後、20年後、北海道のカーリングはどんな様相を呈していることだろう。
(文・写真:吉村卓也)

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ここからは特集に関連して会員の皆さんからよせられたコメントをご紹介します。

投稿テーマ
『冬のスポーツ、やりますか?』
寒いですね〜。ちょっと家を出るのもおっくうですが、体動かしてますか?
私は関東出身なので、ウィンタースポーツには全く疎いのです。
スキーやスケートを軽々とこなす北国のみなさんには、憧れます。
冬に汗をかくのは雪かきぐらいという生活です(笑)。
みなさまの冬のスポーツ、冬の運動法、ありましたらぜひ教えてください。

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冬はどうしても体が冷えるもの。なので午前中に血の巡りをよくして体を温めるためにも、HIITをしています(HIITとは、短時間集中型のトレーニングで、高い脂肪燃焼効果が得られると注目を集めています)。
寒さ対策にもなるし筋肉もつくし、一石二鳥です!(ニーナさん)

冬はウォーキングして身体をあっためます。(マスタクさん)

スノボをやっています!(りりさん)

スキーが好きです(さとみさん)

お布団の生でまるまってぬくぬくするのが至高の自分には、冬のスポーツなんて…(笑)
見るだけならフュギアスケートと陸上(マラソンや駅伝)は好きですけど。(にゃあさん)

やっぱりスキー。
シーズンに一回でも行っておきたい(よもぎさん)

ウォーキングぐらいしかやってないです(パンナさん)

冬でもほゞ毎日ウオーキングします
おうちで寒さで固まった体をストレッチして解します(櫻子さん)

学生時代にスキーをやっていたのですが、今年からスノーボードを夫婦で始めました。初心者同士でしりもちをついたり、転びながら練習しています。もう少し上達したら、ニセコやトマムなどに遠出をできたらなと思っています(タクミさん)

冬のスポーツはきついです。ウォーキングのみ。(たんばトッシーさん)

寒いの苦手で、小さい時、スキー場によく家族で行きましたが、寒いし幼すぎて滑れないし、食堂のストーブの前で一刻も早く帰りたい時間よ早く過ぎろ!と願っていた記憶があります。苦い記憶なので、もうウィンタースポーツはこの先も無縁かもしれません(まるさん)

スキー、除雪(タッチさん)

休みの日に2時間位のジョギング(sabu46さん)

ウォーキング(きゃまさん)

私の中で冬のスポーツといえば、スケートです。学校の授業で習っていたのはスキーですが、スポーツがあまり得意でなかった私はイヤイヤスキーを滑らされるよりも、親や親戚、友達といくスケートの方が何倍も楽しかった記憶があります。円山の屋外スケート場で、赤い三角コーンを軸にスイスイ滑ることができたのは、本当に良い思い出です。(ちろるさん)

自転車。寒いけど気持ちよくなります。(桜月夜さん)

寒いのがめちゃくちゃ苦手な私には、冬に外に出ることすら大変で、冬にスポーツしようと思ったことがないです。(ゆなりちゃさん)

スノーボードにはまって休日の度に行ってましたが、寒さに弱くなって膝も痛めてすっかりウィンタースポーツから離れてしまいました。今は岩見沢なので雪かきに追われてますが…。(れいさん)

寒いと家に篭りがちですがワンコがいるので散歩に行かなければならず。。。20分くらい歩くと体があったまってきます。それが唯一の冬の運動法ですかね〜(笑)(macobkkさん)

雪かきがトレーニングです
スノーダンプで雪の坂を上り、スコップで膝を使い遠くへほうり投げる。
心拍数が上がりますよ(まろさん)

冬のスポーツになるのかはわかりませんが、10キロの一歳息子を抱っこしてスクワットしています(笑)寝かしつけにも私の運動不足解消にもなるしあったまるので一石二鳥です!(えむさん)

ストレッチ体操です(チイチイ江森さん)

ジョギングしています(キンキン江森さん)

冬だけとは限りませんが、ほぼ毎日のように軽くですが筋トレをしています。夕方に時間のある時は、ジョギング又はトレーニングバイクを漕いでいます。
(アッシさん)

ウォーキングが大好きです。寒い冬場に歩き出して、どんどん体がポカポカしてくる感じが好きです。(まもるさん)

やりません。冬は観る専門です。ちなみに夏もです。(ミツコさん)

子どもの頃は、スケートが大好きでした。釧路、江別にいた頃は、学校のグラウンドにリンクがあり、スケートざんまい。中学の体育の授業は、男子に混じってスピードスケートをやりました。子育て中、スキー、スケートに子どもを連れて行きましたが、今はもっぱら、通勤のウォーキングと、職場の階段上がり降り。ちょっとした、スポーツジムだと思っています。(北斗七星さん)

運動はなかなかできません。
今は犬を飼っているので、朝晩の散歩が唯一の運動です。(ふうかさん)

スキーもスケートも楽しみましたが向いてはいなかったようです。
スキーは何故か初心者なのに、熊落としコースに迷い混み、挙げ句のはてに深雪に入り込み動けなくなり、下から仲間がスキーを脱いで助けに来てくださる始末、、。
今は雪落としが一番の運動かなあ~(momijiさん)

冬の運動法、それはずばりアイススケートです。とにかく翌日筋肉痛になります。それほどに、普段使っていない筋肉を使うということ。ぜひオススメです!(cervejaさん)

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