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>HOME >特集一覧 >VOL148「ウイスキーを愉しむ〜新しい道産酒を目指す・厚岸蒸溜所」(2016年12月25日)
特集「ウイスキーを愉しむ〜新しい道産酒を目指す・厚岸蒸溜所」の表紙の写真です

英国スコットランドの伝統的製法に適した水、気候。
厚岸でしか出来ないウイスキーで町に恩返しを。

別寒辺牛湿原
堅展実業「厚岸蒸溜所」外観

 厚岸町で、道東地方で初めてとなるウイスキーの蒸留所が完成し、11月からウイスキー造りを始めている。本場の英国スコットランドの伝統的な製法を用いて、将来的には厚岸で作った大麦などを使った道内産のウイスキーを目指している。

 製造を始めたのは、食品原料の輸入などを手がける専門商社「堅展実業」(本社・東京都千代田区)。

 同社は、国産のウイスキーの原酒の輸出もしていたが、2010年ごろから、「ジャパニーズウイスキー」が海外で人気になり、入手が難しくなったため、自社製造を検討していた。

 候補地を探したところ、厚岸町の水がウイスキー造りに適していることやピート(泥炭)も豊富。気候もウイスキー造りが盛んな英国スコットランドのアイラ島に似ていることから、同町に「厚岸蒸溜所」を建設した。蒸留器などの重要な設備はスコットランドの企業から導入し、現地の担当者が設置した。

英国スコットランド製の蒸留器
厚岸蒸溜所の設備

 同社が目指すのは、スモーキーフレーバー(モルトウイスキーの特有の香味)。麦芽をいぶすために使うピート以外に、同町で大麦栽培にも挑戦し、将来的には道内産のウイスキーも目指している。

 出来立ての原酒は「非常にフルーティー。想像以上の風味」と評価している。今年度は3万リットルの生産を目標にしており、3年ほど熟成させる。中心ブランド「厚岸」を 年度から全国のウイスキー専門店などで販売する予定で、海外展開も検討している。

 厚岸町は、カキ養殖や酪農が盛んな地域。カキやチーズなどと組み合わせた発展的な取り組みも考えている。

 同社の樋田恵一社長は「厚岸でしか出来ないウイスキーを造りたい。高品質のウイスキーを全国発信し、町に恩返し出来れば」と意欲を見せている。

 (朝日新聞釧路支局記者 佐藤靖)

●堅展実業(けんてんじつぎょう)
株式会社厚岸蒸溜所 〒088-1124 厚岸郡厚岸町宮園4丁目109-2
→堅展実業「厚岸蒸溜所」
※現在工場見学などは行っておりません。


スコットランドのアイラ島ってどんなトコ?

 英国スコットランドの西岸に位置し、住民は約3000人。メキシコ潮流の影響で、スコットランド本島より温暖な気候。ウイスキー蒸留は島の基幹産業で、現在8つの蒸留所がある。ピート(泥炭)によるスモーキーさが特徴のウイスキーは「アイラ・モルト」として知られており、モルトウイスキーの聖地となっている。

モルトウイスキーとシングルモルト

 モルトウイスキーとは、大麦の麦芽(モルト)を使用して造られたウイスキーのこと。スコットランドで造られるモルトウイスキーは、大麦麦芽を100%使用し、単式蒸留釜で2回から3回蒸留させたもの。また、1つの蒸留所で造られたモルトウイスキーをシングルモルトと言う。アメリカでは大麦麦芽が原料の51%以上のものをモルトウイスキーと言い、とくに原料が大麦麦芽のみの場合にシングルモルトと呼ぶことがある。

もっと深くウイスキーを愉しむために

101 Legendary Whiskies 伝説と呼ばれる至高のウイスキー101

 ハイボールで気軽にウイスキーを味わう方も増えてきた近年。そこから少し本格的に嗜みたい方に、手にして欲しい1冊です。世界の希少なウイスキーを、その歴史を含めて詳細に解説しています。ボトルの写真だけでもマニアをうならせる、まさに「至高」の1冊です。

紀伊國屋書店札幌本店 竹田順子さん

 

BAR CARAVEL

ウイスキーを正しく理解する、もてなしと空間
オーセンティックなホテルバー「キャラベル」

札幌市中央区北1条西4丁目 札幌グランドホテル東館1階
TEL:011(261)3376/営業時間:18:00~24:00
定休日:無休/総席数 :31席
http://www.grand1934.com/rest/bar/

 札幌グランドホテル内にある「バー キャラベル」は、大航海時代の帆船のキャビンをモチーフにしたヨーロピアンスタイルのバーで、「スコットランド・アイルランド・アメリカ・カナダ・日本」の世界5大ウイスキーを中心にそろえる。中でもウイスキー好きに特に人気があるアイラ島のものは、現在9種類ほど味わえる。「同じ産地でも、製法や樽、ブレンドの違いなど、ワインと比べると味と香りのバリエーションが驚くほど豊富です。造り手の個性の違いをぜひ味わっていただきたいですね」と同店シニアマネージャーの黒田信行さんは説明する。

 厚岸産ウイスキーについて、黒田さんは2008年に誕生した台湾産ウイスキーを引き合いに出す。「台湾の『カバラン』は誕生からわずか2、3年で世界のあらゆる賞を受賞し、まさに今注目を集めています。近年は熟成が長ければ評価が高いという概念が変わりつつある。ですから厚岸も大いに期待できると思います」。

「ウイスキーは農業製品。ブレンダーの人間味が出るので、知れば知るほど深みにはまります」とバーテンダー歴25年の黒田さん
アイラ島のボトラーズは1杯1万円と高価だが、その理由を知りたい方は同店へ

ウイスキーに合うオススメメニュー

ウイスキーに合う同店のメニューで、黒田さんのおすすめは『レーズンバター&イタリアンクラッカー』。「塩分が強いアイラ島のウイスキーは、甘みのあるものと良く合います。隠し味にフレンチドレッシングを使った『ベーコンと北海道産フライドポテト』も人気のメニューです」(黒田さん)

THE NIKKA BAR(赤れんがテラス店)

北海道産ウイスキーの先駆者、
ニッカウヰスキーの神髄を味わう

札幌市中央区北2条西4丁目1
札幌三井JPビルディング 赤れんがテラス1F
TEL:011(222)2000
営業時間:18:00〜23:30/定休日:無休
総席数 :68席

 札幌駅近く、道庁に面した開放的な雰囲気の「ザ・ニッカバー 赤れんがテラス店」。「先代オーナーが、ニッカウヰスキーの創業者竹鶴政孝さんの息子、竹鶴威さんに許可をいただいて店を開いたと聞いています」と同店バーテンダーの井出匠さんが話すだけに、余市と宮城峡の蒸溜所でしか手に入らない銘柄をはじめ、そのラインアップは豊富。新しい道産ウイスキーの誕生については、「短期間でどういう酒造りをするのか気になるところ。道産子としても心待ちにしています」とのこと。

同店の看板メニューは、余市と仙台で熟成した年代別の3つの味を飲み比べ出来る『竹鶴ピュアモルトセット』
「焼き立てのアップルパイや生キャラメルのような味と香りがするものも。何通りも味が変化するウイスキーの魅力をお伝えしたい」(井出さん)

Maltheads

小規模ウイスキー蒸留所ブーム到来の予感
「厚岸蒸溜所」が目指す酒造りが楽しみ

札幌市中央区南3条西8丁目 大洋ビルB1F
TEL:011(522)5152
営業時間:19:00 ~ 1:00
定休日:不定休総
席数: 9席
http://maltheads.net/

 アイラ島をはじめ、国内外のスコッチタイプのウイスキーを中心に取りそろえるビールとモルトウイスキー専門店「モルトヘッズ」。店主の坂巻紀久雄さんは、1999年にアイラ島を訪問。その印象について、「厚岸と驚くほど風景や環境が似ている」と話す。さらに坂巻さんによると、世界各地でウイスキー蒸留所の建設ラッシュが起きているそう。「日本でも、『イチローズ・モルト』で有名な埼玉県秩父のベンチャーウイスキーを筆頭に、滋賀や静岡、鹿児島などで小規模の蒸留所が次々と誕生し、東京五輪の開催前にはブームが到来するような気がします。そうした中でも、厚岸蒸溜所が目指そうとしている酒造りは明確なので、個人的に一番楽しみです。これを契機に、道産酒文化が盛り上がることを期待します」。

 日本ビール検定1級、ウイスキー検定2級などの資格を持つ坂巻さんは、クラフトビールの祭典「Sapporo Craft Beer Forest」実行委員も務める。
「初心者は口の広いグラスで、アルコールを飛ばしながらゆっくり味わうと、麦の甘さが感じやすくなります」(坂巻さん)

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2016年12月25日 特集148号 ※記事の内容は取材当時のものです。
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