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>HOME >特集一覧 >VOL186「冬のイチゴはどこから来るの?」
特集「冬のイチゴはどこから来るの?」の表紙の写真です

震災で再び繋がる
宮城の農家×北海道の菓子職人

イチゴイメージ


おらほのいちご
業務用イチゴを一年中使うには、多くの産地や品種、そして時には流通ルートの開拓が必要だ。「おらほのいちご」も、梱包や輸送に工夫を重ねて札幌へ届くようになった。

ケーキが変えた?イチゴの「旬」

 日本のイチゴの旬が冬になって久しい。本来の実りは春から初夏。だが今は、プランターと温室で季節をずらして育てる方法が主流だ。例えば、東京・大田市場のイチゴ取扱量が増えるのは12月~5月で、これは札幌市中央卸売市場も同様だ。ではなぜ、冬がピークなのか。理由のひとつは、パティシエたちが大量のイチゴを必要とするからだ。一般に洋菓子店は、クリスマス、バレンタイン、ホワイトデー、入学式と来てゴールデンウィークまでが忙しい。その結果、業務用のイチゴが冬から春の需要を押し上げる。そもそも洋菓子業界では、店にイチゴのケーキを並べると売り上げ全体が伸びるという定説がある。つまり、日本人のイチゴのケーキのイメージが、冬のイチゴ市場を大きくしたとも言える。

「お菓子のドルチェヴィータ」の安孫子さん
「お菓子のドルチェヴィータ」の安孫子さん。伊達市へ移転した農家に会いに行ったのがきっかけで、製菓関係者が亘理町とつながった。
「ケイク・デ・ボア」の森さん
「ケイク・デ・ボア」の森さん。命の誕生を祝うバースデーケーキが売れるたび、売り上げの5%を募金し、安孫子さんに賛同した。

「イチゴ産地が流される」

 2011年のクリスマス。北海道の洋菓子店はイチゴの品薄におののいた。東北最大のイチゴ産地、宮城県亘理(わたり)町が、東日本大震災で被災したからだ。道内にもイチゴ産地はあるが、端境期の夏~秋に出荷が多い。北海道にとって亘理町のイチゴは、冬の流通量の半分以上を占める、頼みの綱だった。

 同年3月11日の札幌、ホワイトデー直前の午後。パティシエの安孫子政之さんが休憩時間につけていたテレビ画面に、災害速報が飛び込んできた。間もなく北海道にも揺れが来て、店の通用口を慌てて開け放した。再びテレビの前に戻ると、東京で都知事の会見場が揺れる映像が、宮城県の海岸のビニールハウスが波に押し流される映像に切り替わった。町の名前は出なかったが、とっさに札幌のイチゴの仕入先担当者、兜森一嘉さんに電話した。「大変です、産地が津波で流されてる」。

 電話を受けた時、兜森さんはイチゴの冷蔵保管庫の中で荷分け中だった。「まさかそんな。きっと大丈夫ですよ」と答えたが、夜のテレビで状況の深刻さを知った時には、現地との電話は不通になっていた。

 同じ札幌のパティシエ、森伸司さんは、自分の店の揺れの異常さに驚いたが、厨房のラジオでは津波のニュースは地震よりだいぶ後だったと記憶している。森さんも帰宅してからニュースを見て、被害の甚大さに初めて気づき慄然とした。

平間克己さん
ハウスの様子を見る、宮城県亘理町「おらほのいちご生産組合」創設者の平間克己さん。「おらほの」は「私たちの」という意味の方言。(2016年10月撮影。写真・深江園子)

自ら動いたパティシエたち

 北海道のパティシエたちが行動を起こしたのは、2011年4月。北海道洋菓子協会と札幌洋菓子協会が、すぐ食べられて日持ちする焼き菓子を被災地へ運び、炊き出しを行った。同じ頃、安孫子さんは店頭で被災地への募金を始める。「届けるあてはなかったけれど、とにかく何かせずにはいられなかった」。

 亘理の被害は予想通り甚大だった。被災した亘理町のイチゴ農家のうち、北海道の伊達市に5軒が移転した。亘理町と伊達市は明治3年、亘理伊達家当主・伊達邦成公の開拓移住以来の縁があり、姉妹都市でもある。そこでいち早く、被災したイチゴ農家を技術指導員として受け入れていた。

 同年9月、安孫子さんはこのことを知り、伊達市のイチゴ農家に募金箱を抱えて駆けつけた。そこで彼らと初めて会い、亘理のイチゴ農家の多くが家や畑を、そして家族を失ったことを聞く。

 それからまもなく、安孫子さんはインターネットで「One More-仙台いちご再生支援プロジェクト」というブログを知る。ブログの主は、亘理のイチゴ農家出身の「みさ」さんという人物だった。メールをしてみると、あちこちに散らばる同郷の人々とネット上で協力しあってイチゴのステッカーを販売しているという。

 安孫子さんと森さんはこの活動に賛同し、ステッカーにメレンゲ菓子などを添えて一枚500円で販売し、寄付することにした。同様の取り組みは室蘭の洋菓子店も始めており、2人が声がけした市内のパティシエやジェラート職人にも広まっていく。

 北海道からこのプロジェクトに賛同したのは、主にスイーツ関係者だった。その理由は、”亘理のイチゴ”の存在感だ。札幌で冬のイチゴと言えば、亘理のイチゴ。パティシエたちはそれを肌身で知っている。札幌市の統計によれば、市場のイチゴの5割以上を支え続けた宮城県産イチゴは、震災のあった2011年に3割に減少。翌2012年には1割強になる。それは同時に亘理の生産者が復帰できずにいることを示していた。

 「赤いイチゴはケーキ屋にとってなくてはならない大切なもの。一度失った時、それを作ってくれる人の大切さに気づかされました」と、安孫子さんは振り返る。

平間克己さん
左)ホールサイズの「フレジエ」(ケイク・デ・ボア)、右)「ドルチェヴィータ風ショートケーキ」(お菓子のドルチェヴィータ)

「支援でなく取引を始めよう」

 2013年6月、安孫子さんと森さんは、初めて亘理町を訪ねることにした。札幌での支援ステッカーの売り上げに自分たちの寄付金を加え、寄せ書きを携えて亘理町を訪ねた。出迎えたのは、ずっと電話で現地の状況を聞いていたイチゴ農家の平間克己さんら、若手グループ「おらほのいちご生産組合」のメンバー5人。初めてお互いに顔を合わせ、電話では言えなかった話を居酒屋で語り合った。東北の湘南と言われる温暖な気候で、以前は日当たりの良い海辺に土耕栽培のハウスがずらりと並んでいたこと。地震の時、幾人もの仲間がハウスへ行こうとして津波にのまれたこと。内陸に新しく大規模ハウス団地が建ったけれど、自分たちはより一層こだわったブランドを目指し、独自に組合を作ったこと。ただ売るのでなく、イチゴへのこだわりが直に伝わる売り先を求めていること。互いに、「もっとイチゴが取れるようになったら、今度は支援でなく取引をしましょう」と、約束し合って別れた。

兜森一嘉さん
業務用イチゴ販売「フォレスト・ビー」代表の兜森一嘉さん。道内道外の産地から届くデリケートなイチゴを、確かな品質でケーキ店に届ける。

北海道お菓子フェア
宮城県から「おらほのいちご生産組合」メンバーがイチゴ苗持参で駆けつけ、「北海道お菓子フェア」のステージで親子にイチゴ狩り体験を提供した。(2016年7月3日撮影)
チャリティ当時のステッカー
チャリティ当時のステッカー。「宮城亘理の津波災害復旧を気にかけています」とある。



「作る、運ぶ、使う」を結び直す

 それから4年。2017年11月、洋菓子店にイチゴを届けていた兜森さんは、業務用イチゴ専門業者として独立した。安孫子さんや森さんらの要望で「おらほのいちご」も取り扱うことにした兜森さんは実際に亘理へ行き、平間さんたちが一粒一粒、ヘタの際まで色づいてから摘む姿勢に納得した。それだけではない。「荷物に何かあったら直すから教えて、と言われたんです。農家さんとそこまで話せたのは初めてでした」と兜森さんは言う。平間さんも「イチゴの行く先は全部、顔を合わせて知っています。だから一層、作りがいがある」という。

 梱包から輸送まで互いに工夫を重ねた結果、おらほのいちごは兜森さんが胸を張って届けるブランドの一つになった。4年前の「今度は取引を」の約束は、こうして実現した。

 この冬も、赤いイチゴは北海道のケーキを彩る。香りも味も、今からが最高潮だ。

(文・深江園子/写真・吉村卓也)

菓子工房 Les Cakes des Bois(ケイク・デ・ボア)

札幌市豊平区月寒西3条10丁目 1-16
011-855-5078

お菓子のドルチェヴィータ

札幌市清田区美しが丘2条2丁目 9-10
011-886-5455

この春、おらほのいちごに出会えるお店があります

 以下のケーキ店では「おらほのいちご」を使ったケーキが買えます。青果店では「おらほのいちご」が買えます。※3月20日頃までの予定ですが、イチゴの入荷状況によっては取り扱いがない場合があります。

ケーキ店

  • 菓子工房 ケイク・デ・ボア(札幌市豊平区)
  • お菓子のドルチェヴィータ(札幌市清田区)
  • ショコラティエマサール(札幌市中央区)
  • ル・パティシエ・フルタ(札幌市東区)
  • ビーネ・マヤ(札幌市白石区)
  • パティスリー ラネージュ(札幌市白石区)
  • バースデーイヴ 札幌店(札幌市東区)
  • 菓子工房 サンディアル(札幌市西区)
  • パティスリー アリュール (石狩市)

青果店

  • フーズバラエティすぎはら(札幌市中央区)
    ※「フーズバラエティすぎはら」は、2月1日付朝日新聞「be」にて紹介されました。
    (朝日新聞デジタル会員向け有料記事です)
    https://digital.asahi.com/articles/DA3S14346456.html

お菓子のドルチェヴィータ
白いクリームに赤いイチゴは洋菓子店の人気者。(お菓子のドルチェヴィータ)

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『なんたってイチゴ!』

ここからは特集に関連して会員の皆さんからよせられたコメントをご紹介します。
面白かったコメント、私も同じ!と思ったコメントは、ぜひいいね!を押してください。

1ページ

さがほのかの「ほのか」は娘の名前と同じ。小さい頃、自分の名前のイチゴに大喜びで、その当時リカちゃんがパックにプリントされていたのもあり、さがほのか以外は買えませんでした(笑)でも、美味しくて文句無しです!

あめゆきさん

いちご鼻といちごの見分けがつかない!

りょうちんまるさん

酸味がほどよくある苺が好きです。
練乳をたっぷりつけて食べるのが毎年の楽しみになっています。

林檎さん

一度だけイチゴ狩りに行きましたが、普段あまりイチゴをたくさん食べる機会がないので、とても楽しかったし美味しかったです!!

ぴのこだっくさん

下の娘がいちご嫌いで、恒例の幼稚園のいちご狩りも楽しめないと可哀想かな?と思って、いちごの苗を買って家でなったいちごを食べさせたら美味しいといって食べれたので、翌日のいちご狩りどうだった?か聞いたら、すごくたくさん食べれて美味しかったよ!と楽しめたみたいで良かったです。それ以来いちごは大好物ですね!

桃さん

イチゴを買ったら真っ先に食パンに生クリームと挟んでいちごサンドにして食べます。

Natsuさん

お菓子はイチゴ味なら絶対売れるそうですね。
分かる気がします。
私も絶対イチゴ味を選ぶと思いますから。

キャットさん

イチゴは断然「生食派」ですね。前は加工派だったのですが、ジャム作りに失敗してしまったこと、そして品種ごとに甘さの違いがあることに気付きはじめてから生食一筋になりました。

またイチゴは採れたてが一番!私の住んでいる秋田県ではイチゴ狩りイベントが豊富です。採れたてイチゴがお腹いっぱい楽しめる今の時期は、毎年家族みんなの楽しみのひとつです♪

ぴょんすさん

いちごは生食派です。そのまま頂くのが一番美味しいですね。
いつも家族と頂きますが、母に1個多めに食べてもらっています。

レイチェルさん

イチゴ狩りで食べるイチゴが一番好きです!
もう何年も行ってないので寂しいです。

ひまわりあんちゃんさん

近所の小さい子をよく預かって練乳をかけて一緒に食べていました。美味しかったな!

やーさん

白い磁器の中に真っ赤なイチゴを載せ、照明を効かせて写真を撮り、SNSに投稿したところ、‟イイね!”をたくさんもらいましたので、毎年時季となるとアップする写真のクオリティハードルが上がってシマッテマス(笑)

ぽしさん

私は飲食店勤務の21歳です。
先日、常連のお客さんから《とちおとめ》を頂きました。ですが、量が多く食べきれなかったため、他の常連んにもお裾分けしたのです。
後日、「苺どうでした?」と聞くと、「苺のおかげで甘酸っぱい体験をさせてもらった」と言われました。どうやら、いちご一緒に食べようよ、の口実で女の子を家に連れ込んだらしいのです。
私は、苺を見ると複雑な気分になってしまうようになりました。

つーさん

イチゴビュッフェに行きたいと毎日同僚と言っています!
香りを嗅ぐだけで幸せになれる、見た目もとっても可愛いし女子のあこがれ!
それがイチゴです♥

まもるさん

今年こそ、「イチゴ狩り」に行くぞ~~!

ゆーちゃんさん

2ページ

イチゴは生食です!スパークリングワインと一緒に頂きます。

桜月夜さん

私は栃木県人です。栃木といえばイチゴ生産日本一です。美味しく大きなイチゴがいっぱい生産されてます。とちおとめ大好き!

よしぼうさん

イチゴ美味しい

不動遊星さん

福岡のあまおうが、大好きです。こないだ奈良県産のパールホワイトという白い苺を食べて甘くて不思議な感じでした!

まりあんぬさん

イチゴは娘が大好きで、洗って出して目を離すと無くなっているので、しばらく食べていない。

yukariさん

いつも止まらない。

たまたまっくすさん

いちごはそのままが一番好き!でもって、イチゴ大福やショートケーキとかスイーツとしても大好きです!!

くろすけさん

ケーキを作るときは必ずイチゴ

satoさん

ウチの息子たちはイチゴが嫌いです。何故かはわかりません。でも、私は大好きです!私が気がつかないところで、よほど酸っぱいイチゴを食べたのか、大人になった今もダメ‼️おかげで、私がほぼ独り占めです。個人的には、今では珍しくもないイチゴ大福がイチオシです。今はもうない、菊水の和菓子屋さんの、大きなあまおう入りのイチゴ大福を、もう一度食べたい~‼️

みんみんさん

イチゴはやはりショートケーキ!生クリーム&スポンジの中に一粒だけのイチゴ。それがいいのです。美味。

cervejaさん

イチゴ、本当に大好きです!とちおとめは、定番のようで意外と購入する場所や産地によって味のバランスが違うので面白くて好きです。もちろん生食派ですが、今年は悲しいことに不作が続いているので、ストロベリージュースなどにしてミルクと一緒にいただくととっても甘みが出て好きです。あとは、パフェなどもやっぱり最高です!

もちもちさん

1度桐の箱に入ったいちご食べたいです。

ちい坊さん

イチゴの王様あまおうを思いっきり食べたいと思っていました。福岡に旅行した時、博多駅ビルの最上階のフルーツパフェ屋さんで念願かなって「あまおうパフェ」を食べました。2000円以上したはずです!イチゴもたっぷり。かかっているソースもあまおうのジュレ。最後の一口までとても美味しい一品でした。

オリオンさん

私が小学生の頃,我が家にとってイチゴは高級品でした。とても親からは買ってはもらえません。しかし,私にはイチゴを手に入れる方法がありました。それは,家から歩いて20分の市場に,親戚の八百屋の叔母さんが居たのです。遊びに行くと必ず『何が欲しいのよ?』と聞いてくれます。私はすかさず答えます。『イチゴ!!』。そんな思いでの市場も時代の波に呑まれもうありませんが,私の記憶の中では今でも鮮明に残っています。

ヒロさん

子供の頃は、イチゴと牛乳と砂糖を一緒に器に入れて、イチゴをすり潰して食べるのがたまにしか出来ない贅沢でした。おいしかった。最近は、値段が高くて滅多に食べなくなりました。

ダークサイドさん

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