このWebサイトの全ての機能を利用するためにはJavaScriptを有効にする必要があります。
>HOME >特集一覧 >VOL178「夜明けの港に、佃煮の匂いは流れる。」
特集「夜明けの港に、佃煮の匂いは流れる。」の表紙の写真です

しらす到来!
山下水産 寿都

しらす到来!

“生しらす”の季節は1ヶ月

 5月初旬、午前3時。まだ暗い寿都(すっつ)港に、まばゆい集魚灯をつけた漁船が一隻二隻と戻ってくる。陸に揚げられた発泡スチロール箱の中に、爪の先くらいから人差し指ほどまでの小魚がサイズごとに収まっている。寿都で“しらす”と呼ばれるイカナゴの稚魚だ(※)。この魚は入札だからセリ場のような掛け声はなく、響くのは船やリフトのエンジン音のみ。箱が市場内に積み上げられると、仲買や地元加工場の仕入れ担当者たちが集まってきた。歩き回りながら品定めをする買い手たちの中に、山下水産社長、山下邦雄さんの姿があった。場内を三周ほどした後、山下さんが手招きした。指さした箱をのぞくと、小さな魚が青く透き通っている。「先に取ったのと後のでは透明感が違う。同じ船の荷でも鮮度に差が出るほど、足が早いんです」。 寿都漁協のしらす漁は、4月末から5月末のわずか1ヶ月。漁のある日は山下さん自ら仕入れに来るが、眼にかなう魚がない日は佃煮がつくれない。「少しでも鮮度が落ちると、身が崩れて佃煮が固まってしまう。だから、今日みたいにこれぞと思う魚が手に入ると心底ホッとします」。市場を出た山下さんの表情が、少しだけ緩んだ。

※全国的にはイカナゴの稚魚を小女子、カタクチイワシの稚魚をしらすと呼ぶ地域が多い。

 山下水産は1915(大正4)年創業、寿都で水産加工業が生まれた頃から続く企業だ。主にしらす、ホタテなどの佃煮や飯寿司、昆布巻などを製造しており、山下さんで4代目になる。港にしらすが揚がる日は、町じゅうの加工場が早朝から動き出す。夜が明けたら、山下さんの工場へ佃煮づくりを見に行く約束だ。/p>


「工場で炊き上がった状態をイメージしながら魚を仕入れる」と山下邦雄社長。


指ですくうと、粘らずさらさら落ちていく。 「とにかく魚の質が一番です」と山下邦雄社長。

鮮度を逃さず炊き上げる

 「始まりましたよ」と電話で呼ばれて駆けつけると、沿岸の道をはさんで工場が2棟。海側にある昔からの作業場に入ると、壁沿いには正方形のかまどがずらりと9基。直径70~80cmほどの丸底釜が1基につき4つ、サイコロの目のようにはめ込んである。外から釜へ魚を運ぶ人、釜にたれを入れる人、両手で丸めた水飴を釜に入れる人、釜を長い棒べらでかき混ぜる人、炊き上がりをざるに受ける人。山下さんはと見ると、20人ほどの職人さん、パートさんの間を縫うように歩き、ひとつひとつの釜をにらんでは指示を出している。さまざまな役目の人が声もかけずに紙一重ですれ違い、誰もぶつからずに動き続ける姿は圧巻だ。

 釜の中にしょうゆ色のたれが入ると、さっき港で見た一番小さなしらすがざるでざあっと注がれる。たれが吹き上がってこぼれる!と思った瞬間、鉄の刃のついた棒べらで鍋肌からぐるぐるとかき混ぜられた。「炊く時間は30分ほど。一番小さなものから始めて、昼前には全て炊き終わります」。そういいながら山下さんは時々味見をし、一斗缶から柄杓でたれを足していく。「魚を釜に入れると、初めは魚の水分が出てうまみがたれに溶け込む。それを程よく炊き続けると、今度はうまみがたれと一緒に魚に戻る。その味を調整しているんです」。その上、魚が硬くならないよう短時間で炊き上げなければならない。味もタイミングも違うたくさんの釜を次々仕上げる、短期決戦の繰り返し。それがあの見事な集団行動だとわかってきた。

しらす到来!
海辺の工場に、魚の匂いとたれの甘辛い湯気が充満する。

崩れずふんわり、生たきの技

 炊き上がったしらすは竹ざるですくい取り、棚に並べて粗熱を取る。それをひとつまみ、手のひらに乗せてもらって驚いた。一尾一尾、まだ完全な魚の形をしているのだ。 口に入れると軽くふわっとほどけ、佃煮の甘辛さの中に、しらすのうまみがある。「この食感と柔らかさの共存した状態を、私の母は”硬くソフトに炊く”と言っていました」。山下さんのお母さんは毎年粘り強く工夫を重ね、昔風の保存食の味付けを今の繊細な味へ生まれ変わらせたという。確かにこの味は、しらす佃煮のイメージを覆す。ふわりと軽く、味ははっきりしているが辛すぎず、つい後を引く。山下さんと、工場で会った職人集団が今も受け継ぐ独自の製法だ。

 海側の旧工場は、窓から寿都湾が一望だ。「お忙しくても、こんな景色を見ながら働けていいですね」と言うと、「そう、この窓際の釜前が一番好きですね。母も昔、ここが定位置だったんですよ」と山下さん。北海道日本海側のしらすの品質は日本有数だが、道内では意外に知られていない。だから山下さんは、シーズン始めの生炊きしらすには「初釜」、その中でも特に目の細かいものを「プレミアム生炊き」と名付けて売り出している。一年で1週間だけの前浜の魚を食卓に届ける、旬と鮮度の生たきしらす。このデリケートな味わい、今年も期間限定販売だ。
(文・深江園子/写真・吉村卓也)

炊き上がったしらすを入れたざるが次々と運び込まれ、棚に並べて冷まされる。
炊き上がったしらすを入れたざるが次々と運び込まれ、棚に並べて冷まされる。


山下水産
北海道寿都郡寿都町字大磯町75番地
TEL 0136-62-2023
https://www.yamashitasuisan.com/

山下水産の生たきしらすができるまで

全文を読むにはログインしてください。

メールアドレス
パスワード
自動ログイン

『ごはんと佃煮!』

ここからは特集に関連して会員の皆さんからよせられたコメントをご紹介します。
面白かったコメント、私も同じ!と思ったコメントは、ぜひいいね!を押してください。

1ページ

やっぱり海苔の佃煮が一番ですね。ワカサギの甘露煮もいいですね。

のるんさん

あさりの佃煮が大好きで、昔おにぎりの中に入れてよく持って行ってました。

すぎゆきさん

佃煮は食べた事がありません!

あんなさん

海苔の佃煮です!!
海苔、大好きです♪

ぴのこだっくさん

昆布の佃煮が大好きです。
ご飯の上にのせてそこにお茶をかけてお茶漬けで食べるのが最高にいいです。

ビーフヘッドさん

アユの佃煮が大好きです。

めんばめいさん

小あじの佃煮が好きです。

アイヨリブルーさん

しいたけの佃煮が好きです。

みのりのあきさん

牛肉のしぐれ煮が大好きです。しぐれ煮ってネーミングも素敵だし、あったかごはんに乗せたときに立ち上る香りも好き。野菜も食べたほうがいいのは解るけど、これでもかーってのっけて、かきこむのはなんともいえませんね。

にゃあさん

佃煮を食べないので分からないけどごはんと相性がいいから

亜香音さん

海苔の佃煮 いつも食べてます

フンコロガシさん

アサリの佃煮が好きでおにぎりに入れたりして食べます

みちさん

ご飯と昆布の佃煮があるだけで幸せ

プレミアさん

のり佃煮が好きです。ただ市販品は保存料などの添加物が心配なので長いこと食べていません…

マネーさん

昆布の佃煮が一番好きです。昆布はいろんな食べ方があるけど、佃煮にするとなぜあんなに美味しいのか不思議です。

7091Maxさん

2ページ

しらすとくるみの佃煮が好きです

すーらいるさん

昆布の佃煮が好きです。

シスカルメンさん

クジラ肉の佃煮が好きです。

たぶえむたぶさん

昆布の滋味深い味が好きです。
昆布はミネラルも入っているので、夏にも良さそうです。

りんごさん

先週青森に旅行に行った両親が
お土産物に買ってきた
しじみの佃煮なかなか美味しくて
ご飯にかけてよし、豆腐にかけてよし、おにぎりに入れてもよしで、
あっという間に無くなりました。

あずみんさん

いりこが好きです。

ひーたんゆうゆうさん

ご飯にそのままかけるのが好きです

ことねさん

 「海苔の佃煮」をジャム代わりに食パンに塗って、食べてます!

フクちゃんさん

卵かけ御飯と佃煮がおすすめ

nimoさん

やっぱり海苔ですね!

SaLIさん

佃煮と梅干しにお茶をかけて豪華お茶漬け

オリジナルリリーさん

ごはんに佃煮とお茶をかけて子供の頃食べたのが懐かしい

チバタロウさん

定番かもしれませんが、海苔の佃煮が大好きです。白いごはんやお粥にのせて食べるのが一番美味しいです。個人的なおすすめは、納豆にのせて食べる方法です!

あずきなこさん

肉や海苔や貝など、佃煮は好きなものが多いですね!

あっしゅさん

ノリの佃煮。あまり裕福では無かったので、ご飯とノリの佃煮さえあれば、お腹いっぱいになりました。ノリの佃煮を食べると今でもおかずの少なさより、幸せな家族で食卓を囲む幸せを思い出します

まるさん

3ページ

先頭へ戻る