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>HOME >特集一覧 >VOL.194「札幌に常設の寄席をつくろう」(2020年10月19日)
特集「札幌に常設の寄席をつくろう」の表紙の写真です

特集Vol.194
『札幌に常設の寄席をつくろう』

公開:2020年10月19日 ※記事の内容は取材当時のものです。


市民が取り組む笑いの文化づくり

 この寄席を開いたのは、「狸小路に常設演芸場をつくる会」という市民団体。「狸小路」と名前がついているのは、活動を開始した2013年に、狸小路5丁目の劇場「札幌プラザ2・5」を会場としていたから。今回の寄席をお寺で行っていたのは、その会場が改装され、今は「サツゲキ」という映画館となったため、これまでのように使えなくなったからだ。明治時代には実際に狸小路に「寄席」があり、庶民の娯楽の場として賑わっていた記録もある。
 「寄席」とは、落語を中心に、「色物」と呼ばれる落語以外の漫才、講談、マジック、きり紙、といった出し物を総合的に見せる興行だ。寄席で最後に出演する者をトリ(主任)と呼ぶが、これを勤められるのは基本的に「真打ち※」の落語家のみである。トリまでどう寄席を持たせるか、個々の演じ手の技量だけではなく、それらを複合的に組み合わせ、どんな芸人さんをどの順番で出すかというプログラムを作っていく作業、寄席用語で「顔付け」というプロデューサー的技量も求められる。(※江戸落語では前座、二ツ目、真打ちの三階級がある)

落語家の同級生との出会いから

 「つくる会」は、一般市民有志によってできたボランティア団体だ。代表を務めるのは、会社員の住出尊史さん。寄席に関わるようになったのは、偶然とも言える出逢いがきっかけだった。
 住出さんは、札幌旭丘高校出身。人づてに、同級生が大学の落語研究会を経てプロの落語家になったという話を聞いていた。その同級生は春風亭柳朝さん、本名・谷田正宏さんだ。高校時代、それほど親交があったわけでもなく、特に落語好きでもなかった住出さんだが、東京に行ったときに、「同級生の落語でも聞きに行くか」と軽い気持ちで上野の黒門亭で開かれていた高座に出かけたのがこの活動に関わるきっかけとなった。

「狸小路に常設演芸場をつくる会」代表の住出尊史さん(中央右)
「狸小路に常設演芸場をつくる会」代表の住出尊史さん(中央右)も舞台であいさつ。三遊亭志う歌さんや、漫才の「やすと横澤さん」との掛け合いに、会場は大きな笑いに包まれた。

 落語だけ聞いてそのまま帰るつもりだったが、帰りがけに目が合って、柳朝さんから「あれ、住出君じゃない?」と声をかけられた。「やぁ、谷田君」と、積もる話に花が咲き、その後同窓生のサポートも加わって、翌年には札幌で柳朝さんの落語会を開催してしまった。やってみたら、これが人気で、なにより面白い。その後、現在副代表の金山敏憲さんらを巻き込みながら、「柳朝落語会」を数年続けていたが、落語会としてだけではなく、東京でやっているような寄席を目指すことにした。柳朝さんとも前座時代からの知り合いで気心が知れ、札幌でも自身の会を開催し、大の北海道ファンでもある柳家三之助さんとその会のメンバーとともに、狸寄席を立ち上げることになる。
 そんな同窓生たちの動きをニュースで知って気になっていたのが、現在、もう一人の副代表を務める福井拓史さんだ。福井さんも札幌で司法書士事務所を経営しながらボランティアで運営に関わる。同窓会の幹事会の席で「本当に『寄席』にしたいならやり方を考えよう」と、住出さんに提案した。

賛同者を求めて活動開始

 「あのままでは長続きしないと思った。同級生だから言えたこともありますね」と福井さんは当時を振り返る。自身も東京に何度か寄席を見に行き大いに影響を受けるが、同じスタイルを札幌で実現しようとしても無理だということもわかった。
 資金は入場料収入の他、賛同してスポンサーになってくれる企業や個人を求めて、2人で営業に回った。寄席や落語のしきたりや「顔付け」なども含めて、狸寄席のレギュラーメンバーともなる柳朝さん、三之助さんがアドバイスをし、サポートした。
 「町に文化があることの大切さ、外から来たものを消費するだけでなく、生み出す場所にしたいということを思って賛同してくれる人は多かった」と住出さん。
 これまで公的な支援には頼らず、運営スタッフもボランティアだ。持ち運びできる高座の演台も、自分たちで木材を組み合わせて作ったものだ。
「こういうことをやってます、と興味がありそうな人に説明に回って。今で言うクラウドファンディングのアナログ版みたいなことをやってました」と住出さんは言う。

北海道スタイルの「寄席」とは

 狸寄席は言ってみれば素人(しろうと)の市民による運営で、本業を持ちながらのボランティアだ。落語家の出演はその多くを東京や大阪に頼ることになり、資金的にも負担が大きい。そんな中で、札幌という地方都市でどういう「寄席」のスタイルが可能なのか。
 「文化を作る活動だと思っていますが、それが北海道ではどのような形でできるのか、まだ見えない状況です。お客さんの意見も受け入れながら模索中。でもやり続けないと終わってしまう恐怖感があります」と福井さん。
 住出さんも、「まだ揺らいでいます。常設となると建物の問題等、ハードルは高いです。来てもらう落語家さんにも理解していただき、『色物』を担当する地元の芸人さんにも育って欲しいですね」と話す。
 代表の住出さんは4年前に静岡県に転勤になったことで、今は東京の落語家さんとの交渉を担当、副代表の福井さんが主に札幌の芸人さんの発掘と交渉に当たっている。また、若い世代のスタッフも会に加わるようになった。

「つくる会」のメンバー
第26回狸寄席を無事終えた「つくる会」のメンバー。中央が代表の住出さん。向かってその左が副代表の金山敏憲さん。向かって前列右端がもう一人の副代表・福井拓史さん。

 冒頭に触れた9月5日の狸寄席は、出演者の1人で今年3月に真打ちになった三遊亭志う歌さんの昇進披露を兼ねていた。志う歌さんは真打ちになる前の「二ツ目」の時代、三遊亭歌太郎の名で狸寄席にもこれまでに2回出演している。この日は、入門した師である三遊亭歌武蔵さんも出演した。志う歌さんはトリを含めて1人で3席を演じ、大きな笑いと拍手を浴びていた。
 志う歌さんは東京生まれの東京育ちだが、狸寄席で北海道を訪れたときにふらりと立ち寄った小樽の町がとても気に入り、住まいを借りてしまった。小樽は今や第二の故郷であり、充電する場所になっているという。志う歌さんに狸寄席について聞いた。
 「北海道には北海道のやり方があると思います。一から十まで東京の寄席を真似る必要はないでしょう。落語以外の『色物』で、地元の芸人さんが、単なる発表の場ではなく、この寄席に対する思いを強く持てる場所になっていくとよいと思います。私は小樽に家もあるし、呼ばれればいつでも来ますよ」と話す。
 今回の狸寄席に出演していた「色物」系の芸人さんたちのほとんどは札幌在住だ。その中で、きり紙芸人の「キリガミストちあき」さんは常呂町(現北見市)出身、札幌の短大でデザインを学び、今はきり紙のパフォーマンスを道内各地で行っている。昔テレビで見たことのあるきり紙の技、間近で見ると、巧みな話術で観客の笑いを誘いながら即興で見事な作品ができ上がるのに感動する。観客からも感嘆の声があがる。地元にこんな芸人さんがいたことに驚いた。

高座も手づくり。会場の設営も片付けも「つくる会」のメンバーがすべて行う
高座も手づくり。会場の設営も片付けも「つくる会」のメンバーがすべて行う。

 「狸寄席は東京の寄席のように、食べたり飲んだり、ぶらりと訪れることができるような粋な雰囲気を大事にしていると思います。地元の芸人としては、演じる場がいつもあるのはとてもありがたい。あそこに行けばあの人が出てる、と思ってもらえるのがいいですね」と、ちあきさん。
 次回の「狸寄席」は11月21日土曜日、同じく成田山新栄寺で開かれる。寒さも深まる初冬の一日、笑いの中に身を置いてみるのもよさそうだ。
(文・写真:吉村卓也)

北海道の笑いの文化をめぐる動き

北海道でも笑いを主とした演芸場を作る動きはいろいろとあったし、今もある。1999年に小樽に吉本興業の「小樽よしもと」がオープンしたが3年後に撤退。上方落語の桂枝光さんは2005年からさっぽろ市民寄席として「平成開進亭」という名の公演をいろいろな会場で開いている。2017年には札幌在住の林家とんでん平さんが「すすきの演芸場」を開設、その後「新琴似演芸場」に移転して毎月末に公演を行っている。また、十勝出身の上方落語家・桂三段さんも札幌を拠点に公演を行っている。

※狸小路に常設演芸場をつくる会(狸寄席の会)への問い合わせは、副代表の福井さん(さっぽろ福助司法書士事務所) 011-300-2929まで。
サポーターも随時募集している。

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ここからは特集に関連して会員の皆さんからよせられたコメントをご紹介します。

投稿テーマ
『笑う門には福来たる!』
ワッハッハ〜〜!と、最近思い切り笑いましたか?
コロナもなかなか収まらなくて、あんまり笑う気分じゃないかもしれませんが、どんなときにも笑顔は忘れたくないですね。行き詰まったときこそ、ちょっと「笑い」のスパイスを入れて。そうするとすーっと楽になるかも。たくさん笑ったあとは、なんだか気持ちがいいですよね。なるほど「福」も来そう!
最近のみなさんのたくさん笑ったエピソード、思わず笑える楽しいお話、どうぞお聞かせください!

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そう言えば最近、大笑いしていないですね…クスッとならありますが。
やっぱり、笑いって大切ですよね!!(ぴのこだっくさん)

残念ながら、正直ありません。(のるんさん)

こんな時期に家庭菜園のキュウリが巨大化して育っていました
思わず大笑いしました!(みちさん)

我が家の10歳のポメラニアンが、笑顔の元です。
最近は寒くなってきたので、ソファーで寝てることが多いのですが、寝姿がおなか上にして、白目の時などは、思い切り笑わせてくれます。(ひーたんゆうゆうさん)

楽しいエピソードが思つきません。毎日毎日平穏に過ぎていく生活が良い事なのでしょう。そんな生活を淡々としています。(タカサンさん)

今、第一子を妊娠中で、実家に帰った時のこと。両親や兄弟に会って、自然と笑顔が増えました。いつも主人は、仕事で昼間は一人だったのもあって。こんな時期だから、閉鎖的になりがちなので、コミニュケーションのありがたさを痛感しました(まるさん)

4月から仕事を辞め、ぼおっとしてますが、そう言えば笑い方忘れたみたい。こうちゃん(kouichiさん)

子供がたまにわざと変顔するのがすごくおもしろくて思わず笑ってしまいます(パンナさん)

わらっていません(ronさん)

クロスワードパズルを解いていて5文字のマスでヒントが「たつまき」だったので「トルネード」と思ったが周りの他のヒントの文字と合わなくて、妻にこれおかしいと思わない?って、ちょっと怒りながらみせたら、「ビリヤード」じゃないの?「へっ?」と先ほどのヒントを見たら「たまつきともいう」でしら^^。(masaさん)

母がマクドナルドのことを【マックン】と言う(まもるさん)

近鉄電車に乗って明らかにご懐妊?と思われる40位の女性が立っていたので席を立って譲って「何か月ですか?」と聞いたらまさかの妊娠しておらず中年太りのもっと太りすぎの方でした。周りで少しウケました。(KANTON$さん)

冷汗〜〜!(Y)

巨人が強すぎて、笑いが止まらない(忍者さん)

えーー!(Y)

うわー最近全然笑ってないです。皆さんのお話ぜひ聞かせて欲しいです。(kawaさん)

子供がお遊戯会の主役に選ばれました!(FJさん)

ステテコを前後間違えて穿いている我が夫、笑ちゃいました。
きっと、トイレに行くまでわからなのかなあ ?(フクちゃんさん)

娘が自転車に乗って通学をしていたら、カラスが頭に止まったらしく、どうしていいのかわからず、そのまましばらくカラスを頭に乗せたまま自転車を漕いでいたそうです。自転車を漕いでいる女子高生の頭にカラスが止まっていると想像しただけで面白すぎです。(うさぴょんさん)

北海道出身の芸能人、大泉洋ちゃんの「福山雅治スーパースター談話」は、いつも夫婦で大笑い、コロナかで沈んだ気持ちをたのしくしてくれています。(さぼちゃんさん)

スーツの上下がバラバラのものを着ていた時。はずかしかってし、めっちゃ笑いました(めめめさん)

作業をした後「腰が痛い」と言うと、主人が「婆さんになったな」と言います。爺さんから言われたくないと言い返し、笑いあっています。(オレンジロードさん)

ボーリング大会の日時を間違え、ひたすら練習していた。(ふじゃれさん)

最近は、笑えるはなしもないなあー(はらちゃんさん)

ペットの動画を観て、笑い、癒されてます。(ユキちゃんさん)

自分の人生で1番笑ったのは…やはり学生時代!箸が転がっても笑う(´∀`*)まさにそんなお年頃でした(ガムボールさん)

鏡を見たら、取り合えずニコニコ顔にしてみる。すると不思議に、悩んでいたことが「あぁ分かった!」に変わる瞬間が来る事が多いのです。こうゆうの好きです。(愛舞みぃさん)

今は笑う気分にも機会にもないです。せいぜいテレビのお笑い番組を見て笑うのがせいぜいです。(のみすけさん)

このところは、孫の仕草や芸で笑顔になっております。(みーやんさん)

家にいる時間が増えたので、過去の写真を整理しています。家族の変顔写真が思ったより多く、笑わせてもらっています。(ぽっちさん)

今年はマスク生活で、ストレスが溜まってしまう。
大きな口を開けて、大笑いしたい。
(ゆーちゃんさん)

私と妻と祖母の3人で、スマホを新しくしました。
ネットショッピングでスマホケースをそれぞれ好きなものを注文して、それぞれケースが自宅に届きました。
ある日妻がつぶやきました。
「お父さん。毛少なかったね。」
と急に言われたので、「そ、そうかい?」と返しました。

ちょっと考えると、「お父さんケース来なかったね。」と言ったのだと分かりました。(こうすけ000さん)

急に奥様に言われたら動揺しますよね。ケースで良かった・・・・(H)

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