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>HOME >特集一覧 >VOL.196「小豆のこだわり、あんこのこだわり。」(2020年12月21日)
特集「小豆のこだわり、あんこのこだわり。」の表紙の写真です

特集Vol.196
『小豆のこだわり、あんこのこだわり。』

公開:2020年12月21日 ※記事の内容は取材当時のものです。

北の小豆は、赤く熟す。

北の小豆は、赤く熟す。
写真:箕浦信雄

畑一枚で変わる、小豆のおいしさ

十勝地方の西側にある清水町で100年近く続く森田農場は、72ヘクタールの畑作農家。小麦、ジャガイモ、豆類を作っている。
 「小豆は天候の影響が大きい上に、草取りは機械で刈り、鍬で刈り、それでも出る草は手で抜いています。でも、手をかけるほどおいしくなってくれるのも小豆なんです」。収穫後の農場で、森田里絵(りえ)さんが話してくれた。4代目の森田哲也さんと里絵さんは共に、北海道農政部の元職員で、里絵さんは横浜育ちだ。「結婚した頃、義母の作り立てのあんこを一口食べたらもう止まらなくて…。市販のあんことは別の味で、うまく言えないけれど身体に染み渡ったんです」。

森田哲也さん・里絵さん夫妻
森田哲也さん・里絵さん夫妻。明治時代、哲也さんの曽祖父が岐阜県から移住して4代。2011年に農業法人A-Netファーム十勝となり「これまで100年、これから100年」をうたっている。(写真:箕浦信雄)
松の実最中
「松の実最中」は先代が60年前に発売。「60歳だから自分より年上だね」(谷川さん)。 2020年12月現在「北海道どさんこプラザ札幌店」(011-213-5053)でも取り扱い中だ。

 小豆の魅力に目覚めた里絵さんは2013年、法人化と同時にに始めたインターネットショップに小豆農家のあんこの作り方を書いてみた。するとお客さんからメールやSNSで質問が届き始め、会話が始まった。伝えたいことはたくさんある。小豆が女性の健康を守る、食べるとお乳がよく出ると言い伝えがある通り、食物繊維、タンパク質、鉄、カリウムなど栄養が豊富なこと。赤い皮が含むポリフェノールに守られて、小豆は5年10年後でも芽が出ること。逆にお客さんから食べ方を教わることもある。
 「毎年作っていると、畑一枚違うだけで小豆の煮える時間や味が違うのがわかります。それを混ぜてしまうと、仕上がりにムラが出る。直販ならひとつの畑、ひとつの品種の小豆をお届けできるので、煮えムラのないおいしいあんこが作れます」
 畑の個性まで語れる、このこだわり。まるで単一農園のコーヒー豆や、銘醸ワインのブドウ畑のようだ。森田農場のサイトにある動画を見て実際に煮てみると、目安より早めにふっくら柔らかくなり、あっけないほど簡単だった。途中で水を換える“渋切り”をしないのは、タンニンが少なく皮の薄い小豆ならではの方法だそうだ。

電話一本で始まった業務用取引

オホーツク沿岸の浜頓別町にある「菓子司松屋」が、森田農場に初めて問い合わせをしたのは2013年の秋。店主の谷川淳一さんはもとシステム関連会社のサラリーマンで、父の店を継いだ。店のあんこに使う小豆を探していた時、森田農場のホームページを偶然見つけたそうだ。
 他の豆と混ぜていないか、豆の選別はどうか。電話越しに納得いくまで色々聞いた谷川さんは、業務用袋を注文した。
 菓子司松屋の売れ筋商品に、2つの最中がある。観光客に有名なのはレトロな牛乳缶型でミルク入りあんの「牛乳もなか」。地元客の定番は、最中皮の合わせ目が閉じないくらいあんこたっぷりの「松の実最中」だ。帰省客が多いお盆には、毎日あんこを炊くほど売れる。最中やどらやきに使う粒あんは製あん機の釜で煮てグラニュー糖を加え、熱を入れながら回転羽根で練っていく。
 十勝清水から届いた小豆を初めて煮て、谷川さんは驚いた。
 「豆がつやつや輝いてた。まるで釜の中で羽根から豆が逃げるように動いて、皮が薄くて柔らかいのに粒が立って生き生きしてる。すごいな、いい豆と出会えたなあって思いました」。谷川さんのあんこ作りは、前よりワクワクする仕事になったそうだ。
 「粒あんは小豆の皮が破れたところに味が入っていくもので、柔らかく煮るけれど、食感に変化があるほうが楽しい。だけど固いところが残っちゃいけない。何度もチェックするうちにお茶碗一杯くらいは味見しているかも」。
 一方、谷川さんの問い合わせを受けた時の事を里絵さんに聞くと、「本当に去年の豆が混ざっていないかと、何度も念押しするような会話だったかな?」と笑う。「でも松屋さんはそれ以来、うちの業務用のお得意様の1人なんですよ」。里絵さんは谷川さんと電話でやりとりするだけで、面識がなくお店に行ったこともない。ただ、松の実最中は何度か食べたことがある。「身近なお菓子ひとつで小豆の味を伝えられるんだ」と、ひそかに舌を巻いている。取材時に谷川さんにそのことを伝えると、「俺は自己流だから。でも、小豆を見てればきっと森田さんて真面目な人なんだなあと思うよ」と言った。

森田農場の小麦畑
2020年10月上旬、今年も無事に刈り終わった森田農場の小豆畑。(写真:箕浦信雄)

「小豆ともだち」は海を越えて

小豆を通じて出会った人たちのことを、里絵さんは自分の中で“小豆ともだち”と呼んでいる。農作業の傍らインターネットショップを続けられたのも、「こんな小豆が食べたかった、待っていた」と励まされたからだ。病気の家族のためにあんこを手作りする人に出会って、小豆が人を癒す力を感じたこともある。そういう間柄の人は、北海道から沖縄まで各地にいるそうだ。
 フランスでも、里絵さんは小豆ともだちに出会っている。2016年、森田さん夫妻は「十勝人チャレンジ支援事業」を利用して小豆の調査をするためフランスへ行った。そこでパリ1区で人気のどらやき専門店「パティスリー朋(とも)」の日本人パティシエと知り合った。その店を会場に、2018年2月には里絵さんがあんこ作りと産地品種別の食べ比べをした。2020年2月には森田農場の小豆を愛用する東京の和菓子職人を同伴し、50人の食関係者の前で小豆の発表と和生菓子の実演をした。

谷川さん
菓子司松屋では、製あん機を使って一回で約50kgの粒あんができる。「やけど防止のために、割烹着を着て作業しています」と谷川さん。(写真:渡辺登)
谷川さんの粒あん
森田農場の小豆で炊き方を試した結果、谷川さんの粒あんは“渋切り”をする。「家庭のあん こ作りとは炊き方が違う。でも、森田さんが求める小豆らしい渋味を少し残しています」(写真:渡辺登)

 「フランスではドラえもんがテレビ放映されていたり、どらやきがモチーフの日本映画『あん』の影響もあって、皆さんどらやきに興味津々。きっかけは様々ですが、皆さん味覚が鋭くて、品種や産地の味の違いがすぐ伝わるんです。パティシエやシェフも来られて、味の表現が豊かで的確で驚きました」。
 パリでは賞味期限を一度も聞かれなかった。1日しかもたないお菓子だと説明するとブラボー、と言われたり握手を求められたりして、ここには新鮮で混じり気のないものへの価値観があると感じた。日本独自のものだからと思わず、純粋に味の話ができるのが嬉しかった。そして哲也さんの3年越しの働きかけの末、2020年にパリの高級日本食材店のカタログに森田農場の小豆が載った。
 里絵さんが、パリで感心した事がある。有名なパン屋さんで話を聞いた時、店主が「うちのパンに合う小麦は、この産地、この農場の、この小麦なんだ」と言うのだ。指名買いする使い手がいて、指名される作り手がいる。きっと幸せな関係だ。「自分たちも、そんな風に小豆を感じ取ってくれる人にもっと出会いたい。指名買いされる小豆って、すごいですよね」と、里絵さんの眼が輝いた。
 小豆生産日本一の北海道は今、小豆に日本一詳しいだろうか。産地ならではのおいしさを知っているだろうか。昔、ストーブにかけた鍋でことこと煮えた豆はおいしかった。この冬は、家で小豆を煮よう。
(文:深江園子)

●菓子司 松屋
 枝幸郡浜頓別町大通2丁目3
 tel. 01634-2-2002
● (株)A-Net ファーム十勝 tel. 0156-63-2789
 https://www.azukilife.com/
パリでどらやきの実演販売
2020年2月、パリで森田農場が行った小豆PRのひとつ、どらやきの実演販売に列ができた。 (写真提供:森田農場)

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ここからは特集に関連して会員の皆さんからよせられたコメントをご紹介します。

投稿テーマ
『好きです、あんこ!』
北海道は小豆の大産地。小豆といえば、やっぱり「あんこ」だなぁ〜。
和の甘さ、と言えばこれでしょう!
そのまま食べてもおいしいけれど、定番のお餅、おしるこ、あんパン、どら焼きだけじゃない。あんこトースト、あんことアイス、氷あずき、あんこクリーム…。いろいろなものによく合いますね!他にも、意外に美味しい組み合わせもあるかな?
あんこレシピ、小豆のじょうずな煮方、あんこの思い出、などなど、どうぞお寄せください!

それにしても、北海道は日本の小豆生産量の9割以上を占めているのですね!
もっと身近に感じたいですね。

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つぶあんのものが好きです。(のるんさん)

本州の友達に「北海道(十勝産)の餡子は美味しいよね」と言われたことがあるけど、子供の頃から食べているので当たり前というか(^^
いつも美味しいおはぎが食べられてありがたいなぁと思いました。(かなさん)

周りに驚かれるほどあんこ大好きです!一番食べるのは今川焼き。まずは半分に割って熱々の小豆の香りを嗅いでから食べます。最高です。(このあーさん)

毎回の応募期間、締切日がよくわからないのですが。(りんてんきさん)

お正月、美瑛町に住んでいたお婆ちゃんが杵と臼でお餅をついてくれて、中にたっぷりのあんこを入れた出来たてのお餅をほおばって食べるのが大好きでした!(キューピー姫さん)

あんこはおじいちゃが、あずきバー好きだったことを思い出しますね。(あこさん)

あんこは…どちらかと言うと苦手です…(ぴのこだっくさん)

小豆は十勝産が最高(はしもさん)

あんこ大好きです。絶対に、こしあん派です。好みの食べものは、あんぱん、あんドーナッツ、串だんご等々たくさん有りますが、唯一苦手なものが有ります。おはぎです。お米大好きですが、もち米と一緒にされるとダメです。(まいいさん)

あんこといえば、やっぱりたい焼きが最高ですね❗️(タレちゃんさん)

和菓子を選ぶときは何故かあんこの所で立ち止まっている
家でも季節を問わずぜんざいを食べているぐらい好き
口に含んだ時の幸せは満面の笑みになります~
餡子のない生活は考えられないですね(櫻子さん)

たまに急に襲ってくる糖分欲求。その時に口にするのが小豆!色んな甘味物がある中で、小豆(あんこ)は食べても太りにくそうなので食べますね。なんとも言えない幸せな気持ちになります。(ありりん1213さん)

京都へ行くと、ランチを抜いてでも甘味屋へ行ってしまう。
北海道産小豆使用、と誇らしげにかいてあると
なんとなく胸を張って食べてしまう。
それなのに、地元には わざわざいきたくなるような甘味屋が
すくないのは何故なのか、、、、
本州出身の私はいつも疑問に思います。
確かに和菓子のおいしい店は数あれど、
あんみつ や あわしるこをイートインしたい!

産地なのにもったいない!(itomakiさん)

好きなあんこは今川焼き♡(ゆずむぎさん)

ダイエット中でスイーツを我慢している時でも、あんこを使った和菓子だけは、“だって食物繊維いっぱいだし!”とか“利尿作用のあるサポニンが摂れて、むくみ取れるし!”とか、自分に言い訳して、あまり罪悪感を感じずに食べれる・・・・・。(キャットさん)

美味しいあんこは北海道が主役(ronさん)

今の時季に食べたいのはやっぱりおしるこ!体があったまります!(エリンギさん)

あんこと言えば「塩大福」、これに尽きるのではないでしょうか!白い大福の表面に見えているつぶあんを店頭で見かけると、ついつい財布の紐が緩んでしまいます。餅のしょっぱさがあんこの甘さを引き立て、なんとも絶妙。それに、あんこの甘さを引き立てるという点では、「あんバター」も好きです!近年、パン屋にてよく見かけるようになりましたし、あんバターの需要も高まっているようですね。私は、縦横に切り込みを入れあんこを乗せた食パンをカリッカリに焼き最後にバターをのせて食べる瞬間、たまらなく幸せに感じます。(マイさん)

子供の頃あんこが苦手だったんですが、大人になって食べてみるととても美味しく感じて大好きになりました!
特に桜餅がお気に入りです!(アオイさん)

あんこを使ってお正月にあんころ餅を作るのが好きです。(チカリンさん)

たまに無性に食べたくなります
桜餅が特に好きです
あんこの甘さと葉っぱの塩味がたまらない!(ヨシコロリさん)

御座候のあんこが甘すぎずで大好きです!!(なっきーさん)

あんこは好きです。羊羹も好きです。
おかゆに小豆を入れるとひと味変わります。(多次元さん)

大福にはやっぱり粒あんです!(パンナさん)

デーツで作るあんこにはまっています。
たくさん食べても罪悪感が少なく、体にも良さそう(まもるさん)

あんこは、やっぱり大福が好きです!お饅頭も大好きです!(ミヤトシさん)

毎年十勝産小豆を圧力鍋で煮て自家製あんこを作ります。市販のは人工甘味料も入っているのできび砂糖を使って優しいあんこを年末に作ってお正月にあんこもちで頂くのがお約束です。今年は年老いた祖母もいるので関西から函館への家族4人での大移動は感染の危険もあるので帰省は見送る事になりましたが年末にあんこを多めに作ってきんつばを作りに挑戦しようと思います。あと帰省出来ないのでノースマンを手作りしようと思います。(KANTON$さん)

あんこを使ったレシピは作ったことがないんですが。。。笑
疲れているときやイライラした時、あんこを食べるとやっぱり落ち着くし、
日本人だなぁっていうのを実感して癒されます!(マスタクさん)

いつも楽しくサイトを拝見させていただいております。更新作業は大変かと思いますが、これからも楽しみにしておりますので、引き続きよろしくお願いいたします!(cervejaさん)

毎日あんこトーストを食べています。
しっかり目にトーストした食パンにマーガリン
、あんこ。最高です。(ヒメネスさん)

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