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>HOME >特集一覧 >VOL179「草香るバターを、地麦のパンと食べよう。」
特集「草香るバターを、地麦のパンと食べよう。」の表紙の写真です

麦畑から15kmのパンに、何のせる?
小麦…たよろ春小麦の会、パン…ベーカリー イシダ、バター...プティフロマージュ ニウプ

麦畑から15kmのパンに、何のせる?
「量は限られているけど、ここの気候は春小麦に最適でいい麦ができるんだ」(村中さん:右)。「村中さんたちの顔が見える小麦を使うのは、パン屋の幸せ」(石田さん:左)。

食のプロが共鳴しあい道北の美味を育てる

 朝6時、パン職人の石田誠次さんは「ベーカリーイシダ」で仕事を始める。生地を仕込みながら、8時の開店時間までひとりでパンを焼く。食パンやバゲットが窯に入るのは昼11時。20分弱で焼き上げて売場に並べると、お客さんが焼きたてを喜んで買っていく。キャンバス布にフランスパン生地を並べ、クープ(切れ目)を入れるしぐさは静かで正確だ。工学部卒業で神戸発祥の有名ベーカリーチェーンで働き、2015年に生まれ故郷の名寄にUターンして開業した。

 昼前、ベーカリーに急いで立ち寄ったのは市内の「AOZORA料理店」オーナーシェフの須藤民篤さんだ。ベーカリーに自社の手づくりバターを届けに来たという。

 2人のなれそめはこうだ。須藤さんが結婚を機に札幌から移住してきたのは2017年。仕事のできる料理人が来るという噂は、石田さんも耳にしていた。ある日の午後、レストラン開店予定地の民家を覗くと、大工仕事中の須藤さんがいて、抱えていったフランスパンを喜んで受け取ってくれた。「すぐに打ち解けました。ここで開業した者同士、何でも話せる初めての相手でした」(石田さん)。


石田さんのフランスパンは、老舗チェーン「ビゴの店」仕込みだ。確かな味は地元の食卓を担い、遠くの客を引き寄せる。製パン工場を営んだ父も、自ら現場で働く人だった。(写真:深江園子)

 「名寄に住むなら、いいパン屋さんがあるよ」。須藤さんのほうも、石田さんのことは聞いていた。出会ってから発想を転換し、「料理に合うパンを石田さんにお願いしよう」と自家製パンから切り替えた。 それから2年、この地域に小さな変化が起きている。2人は名寄市立大学栄養学科と協力し、朝食抜きの学生のためにワンコインメニューを開発。「アマムの会」という食関係者のユニットを結成して、地域一帯の食を発信するマルシェや勉強会が始まった。地域にとっては、2人の頑張る姿そのものが変化のタネとなっていった。

無農薬の放牧牛乳でつくるバター

 食堂なみの気楽さで、近郊のおいしいものが楽しめる店。AOZORA料理店がそんな評判をとって軌道に乗り始めた2018年、須藤さんは新たな事業を始めた。「何と言うのか…誰かがやるしかなかったんです」。

 隣の美深町には、無化学肥料、無農薬の美しい放牧牧場がある。その牛乳のチーズを、須藤さんはピッツァや料理に愛用していた。ところがチーズ職人が引退することになり、人探しは難航。悩んだ末、須藤さんは自ら工房を引き継いで同町仁宇布に「プティフロマージュ ニウプ」を立ち上げた。製造担当者の目黒英二さんは名寄出身で、機械メーカーなどで製造と営業職を11年ずつ務めた後、ここでチーズ作りをしたいと自ら手を挙げた。今は発酵バター、ヨーグルト、モッツアレラチーズを製造中だ。

 毎朝7時半、目黒さんはすぐ隣の塩崎牧場にしぼりたての牛乳を取りに行く。朝夕2回の搾乳時間が近づくと、広い放牧地で1日遊んだ牛たちが集まって牛小屋はにぎやかだ。牧場主の塩崎智史さん夫妻と子どもたち、時にはご近所さんも加わって、牛を囲んだ幸福なだんらんが生まれる。「仁宇布はとても気持ちのいい場所。うまく説明できないけれど、塩崎さんのご家族とここの牛乳が大好きなんですよ」。

 そんな目黒さんに放牧シーズンを知らせるのは、牛乳の中の「草の色と香り」だ。毎日チーズやバターを作っていると「ああ、全然違うなぁ」とはっきりわかる日がある。それは雪が解け、牛が放牧地に出て1週間ほどの時期だ。塩崎さんに聞くと、「ちょうどその頃、牧草が十分食べられるようになって、乳に青草のカロテンや風味が反映されるようです」と教えてくれた。「牛乳からそれが伝わっていたなんて、何だか嬉しいですね」。

牛乳100%
絞った乳は主に出荷され、乳業メーカーの飲用乳になる。塩崎さんの牛乳100%で製品を作るのは目黒さんだけ。互いに一対一の稀有な関係だ。

牛のミルクが原料の、希少なバター
ほぼ牧草だけで育てる(グラスフェッド)牛のミルクが原料の、希少なバター。牛の本来の主食は、穀物でなく草だ。100ha規模の放牧牧場でのびのびと暮らす牛たちが、このグラスフェッドバターを生み出す。


草香るバターが喜ぶパンはどこ?
ミルク…塩崎牧場、バター…プティフロマージュ ニウプ、企画…AOZORA料理店

若手酪農家
塩崎さん(中)は大阪出身で帯広畜産大学を卒業。後に美深町へ移住して循環型酪農を営む若手酪農家だ。須藤さん(左)はこの牛乳の加工を継続しようと新事業を設立し、目黒さん(右)がチーズ、バター、ヨーグルトをつくる。製品は須藤さんの店で使うほか、シェフたちに早くも注目されている。

顔の見える春小麦で焼くパン

 一方でパン屋の石田さんも、地域の宝を活用している。それが、“地元生産者限定小麦”の食パンだ。名寄市に接する士別市の多寄町には、小麦の生産グループ「たよろ春小麦の会」がある。リーダーの村中吉宏さんはタマネギ、小豆、小麦などをつくるベテラン農家。天塩川沿いの15haを小麦畑に当てて、主に「春よ恋」を栽培している。

 「石田さんは2年ほど前に1人で訪ねて来られて、地元の小麦でパンを作りたいと話してくれました」と、村中さんは当時を振り返る。同会は10年ほど前からオリジナル小麦粉をつくり、品質安定の工夫を重ね、直販で販路を増やしてきた。だから、石田さんの気持ちは十分汲み取れた。「きっと、地元のものを外に発信したい思いがあったんじゃないかな」(村中さん)。

 輸入小麦をベースにパンの仕事を覚えた石田さんにとっては、「地域の小麦を使えるのはラッキーで特別な事」だ。香り高くてでんぷんの甘みが広がるこの食パンに、お店では「多寄の村中さんたちの春よ恋を使用」と書き添えてあった。

ご近所同士でつくる、土地の美味

 食の職人にとって「地元の宝で作る、ここだけの味」はひとつの理想形だ。だが現実に、お客の求めにしっかり応じつつ自分の思いを形にしていくには、我慢強さが必要だ。顔と顔を見合わせる相方がいることが、どんなに支えになるだろう。塩崎さんの牛乳と目黒さんのバター、村中さんの小麦と石田さんのパン。同じ空気を吸って働く人同士が、物を通してわかり合う。このパンとバターを食卓にのせる時、彼らの幸福感も一緒に付いてくる、そんな気がする。
(文・深江園子/写真・吉村卓也)

バターの粒
タンポポのように鮮やかな色の、バターの粒。牛乳から分離したクリームに乳酸菌を入れ、保温して一晩発酵させる。狙ったpHになったら攪拌し、へらで練って布に包んで揉み、白い水分(バターミルク)を絞ると、やっと発酵バターの完成だ。


ベーカリー イシダ
名寄市西4条南2丁目10-1
TEL 01654-8-7615
https://bakery-ishida.com/

プティフロマージュ ニウプ
名寄オフィス 名寄市大通北3丁目17 AOZORA料理店内
TEL 01654-8-7416

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『パンがあれば幸せ!』

ここからは特集に関連して会員の皆さんからよせられたコメントをご紹介します。
面白かったコメント、私も同じ!と思ったコメントは、ぜひいいね!を押してください。

1ページ

お母さんと一緒に食べたあんぱんの味が忘れられません。私の大好きな粒あんでおいしかったです。

このあーさん

カレーパンが大好きです♪
特に、ゴロゴロ具材が入ったカレーパンが好きです♥

ぴのこだっくさん

子供の頃、つまらないことでよく兄弟や親と喧嘩をしたものです。そんな時にいつも助けてくれたのは、穏やかなメロディーと共に車で移動販売にやって来るパン屋さんの美味しいパン達でした。
今も家族で大喧嘩をしていても、一緒に美味しいパンを食べると、なぜか仲直りが早く出来る気がします。

かはりんさん

好きなパン屋さんの判断にクロワッサンの美味しい店を重要視しています。

のるんさん

めんたいフランスが好きです。
福岡なので、色々なめんたいフランスがあり、そのお店お店のめんたいフランスが楽しめます!

あっしゅさん

1日3食分パンを食べたりするくらいにはパンが好きです。
多くは語るまい…。

ゆずれもん香るお水さん

血糖値が高めなので低糖パンを自分で作り始めました。パン生地をこねる、焼くは機械が勝手にやってくれますが、出来がまちまちなのが悩みの種。

フンコロガシさん

私がパンが大好きでよく食べているので、子どもが大きくなったらパン屋さんになる!と言ってくれてとても嬉しかったです。

きなこさん

パンは大好きなので1つに決められませんが、今も塩バターパンのマイブームが続いています。
この春、試行錯誤しながら初めて自家製酵母を起こしてパンを焼く事にチャレンジしたのが良い思い出になりそうです。

so-taさん

以前住んでいた街のパン屋さんにあったプリンパンはぷりんがまるごとのせてあって見た目もよくてすごくおいしくて好きでした。

パンナさん

近所のスーパーには店内で焼いているパンを売っていて、結構美味しいのでよく買いにいきます。
が、スーパーの経営母体が変わったタイミングで店頭から消えてしまったパンがいくつか。特に好きだった3種類のチーズがはいったパンとレーズン食パンがラインナップから消えてしまって、テンションだだ下がりになってます。しょうがないですけどね。

にゃあさん

昔の昔、家にイチゴのジャムパンがり、おやつ替わりに、毎日毎日、今では考えなれない、防腐剤が、カビが生えないパン。

なぁ〜おさん

ハチミチをつけると全てのパンがいきいきします

オリジナルリリーさん

トーストにバターをこってりだけでもおいしいです

チバタロウさん

トーストにバター

とらさん

2ページ

子供のころから、朝食はパンでした。
母は食べ物にはお金を惜しまないほうなので、兄弟3人にいつもいろんなパンを準備してくれてました。
3人でじゃんけんでパンを決めてたのが、いい思い出です。

ひーたんゆうゆうさん

パン

カワサキさん

1年くらい北海道で仕事をしていた時のこと。そんなにパンが好きでもなかっだのですが、北海道の有名なパン屋さんに行った時の事。地元と比にならないパンのおいしさに取り憑かれました。パン貧乏になるくらい北海道のパンを買いあさりました。個人的に好きなのは上川郡のかむかむです。今でも食べたくなります。パンを食べるたびに北海道のことを思い出します。

まるさん

すきっ腹に食べる調理パンが大好き!

ronさん

わたしはパンが大好きで、毎食パンでもいい派です。休みの日、夜勤明けの日にはついついパンを買いに行ってしまいます。
お気に入りのパン屋さんもありますが、新しいところや、行ったことのないパン屋さんに行くのも好きで、いろいろ試したくなります。
特にクリームパンがすきで、クリームのずっしり詰まった、でも食べても重たくないのが最高に好きです!

ゆうさん

チョココロネが好き!

ふくタローさん

エピー

パステルさん

子供の頃はクリームパン、あんパン位しかなかったけど
今はすごい種類あって当たり前にいろいろ食べてますね!
お米大好きですが朝はパンです!
もちろん今も(クリームは格段に美味しくなった!
バニラビーンズたっぷりの)クリームパンが
一番好きです!

マンゴーさん

週に1回はパンを食べます。

はなちゃん3さん

お出かけした時は、帰りに、パン屋さんで、甘いパンを買ってもらいました。 パン屋さんのクリームパンは濃厚でおいしいです。

りんごさん

フランスパンがすきです

hnさん

パンが大好きです
昨日近所の方から高級食パンを頂き家庭菜園で育てたトマトやキュウリ、ピーマンなどをはさみサンドイッチを作って食べましたとっても美味しかったです!

みちさん

乃が美のパン大好きです。
しっとりもちっという感じで好きです。

ぴくさん

毎朝食パン。旅行に行く出先で買うパン(サービスエリアなど)は贅沢しちゃいますね。やっぱりカレーパンは買っちゃいます。
若い頃はハンバーグやメンチの入ったパンが大好きでしたが、年々変わってきました。
また新しいパンに出会いながら休日を楽しんでいきたいですね。

どらやきさん

最高

AFCの神様さん

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