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>HOME >特集一覧 >VOL.227「育て、サーモン」(2023年7月18日)
特集「育て、サーモン」の表紙の写真です

特集Vol.227
『育て、サーモン』

公開:2023年7月18日 ※記事の内容は取材当時のものです。
陸上にある孵化場で育てた稚魚を海に移すため、 ポンプで魚を吸い上げてタンクに移す様子
2022年11月、陸上にある孵化場で育てた稚魚を海に移すため、 ポンプで魚を吸い上げてタンクに移す。

池で育て、海で育て、出荷。

はねる魚はトラウトサーモン

 道南の渡島半島真ん中あたりのちょっと細くなったところ、その日本海側に八雲町の熊石漁港がある。5月下旬のある日の早朝、漁師用のツナギのカッパを身につけた人たちが三々五々集まって来た。漁港の埠頭のそばの海には直径20メートルほどのいけすが2つ並んでいる。これから始まるのは、このいけすで養殖されたトラウトサーモンの水揚げだ。

 いけすの縁に何人かの人が立ち、陸上から操作されるクレーン車のアーム

から下りてくる大きな袋状の網を、いけすの中に誘導する。網に魚を入れ、クレーン車が網を引き上げると、まとめられた網の中にはびっしりと大きな魚が入っている。埠頭に置かれた台の上で網の底を閉じていたロープが外されると、30匹ほどのトラウトサーモンが台の上に放たれ、魚は大きくはねる。その場で処理され、まとめて計量し、一辺1.5メートルくらいのプラスチック製の丈夫な四角いコンテナに氷と共に入れられて、トラックに積まれ「北海道二海(ふたみ)サーモン」の名前で出荷される。八雲町は日本海と太平洋、二つの海に面する町なのだ。今年は約7000匹が出荷され、この作業は2日間に渡って行われた。

パイプで吸い上げられて、この後トラックに乗せられて、海へ運ばれる。
パイプで吸い上げられて、この後トラックに乗せられて、海へ運ばれる。

海面養殖のスタートは八雲・熊石

 トラウトサーモンの海面養殖を道内で行ったのは、ここ熊石が最初だった。今年で4年目になる。2005年に八雲町と合併するまでここは熊石町だった。その頃いちばん取れていたのはスケソウダラやイカ。どちらも最近はめっきり取れなくなり、当時売上の半分を占めていたスケソウダラの水揚げは、今はゼロだ。減り続ける漁獲高や漁業従事者。このままではまずいと、取り組んだのがこの海面養殖事業だ。

トラウトサーモンはニジマス

 そもそもトラウトサーモンとはどんな魚かというと、陸の淡水にいたニジマスが海に下って大きくなったものだ。回転寿司のサーモンはまずこのトラウトサーモンだと思って間違いない。圧倒的に輸入が多く、ノルウェー産やチリ産がおなじみだ。養殖物をトラウトサーモンと呼ぶのが一般的だが、自然界でも海に下るものはいて、英語ではスチールヘッドなどと呼ばれている。

熊石漁港に作られた直径約20メートルのいけす
熊石漁港に作られた直径約20メートルのいけす。陸のプールから移された魚はここで約半年かけて大きく育つ。

回転寿司のベストセラー

 そもそもサケ(サーモン)を生で食べる習慣は日本にはあまりなかった。生のサケには寄生虫のアニサキスがいることが多いのも、生食が避けられてきた理由でもある。1980年代初頭、ノルウェー産のサーモンが輸入されたあたりから生食が一般的になってきた。配合飼料で育った養殖なので、アニサキスの心配が圧倒的に少ない。

 生まれたときからサーモンを生で食べている世代が増え、水産会社の市場調査によれば、回転寿司で食べるネタの1位は12年連続でサーモンなのだ。

 農林水産省の調査でも、20年前に養殖魚にあった「脂臭い、イワシ臭い」などのイメージはほぼ払拭され、「おいしい」という評価の方が勝ってきている。サーモンは日本語で言えば「サケ」となるが、刺身や寿司にのっているのはやっぱり「サーモン」と呼びたくなるし、そのような区別をしている場合が多いようだ。

サケ?マス?サーモン?

 サーモンという英語にはサケもマスも含まれ、シロサケ、ベニザケ、サクラマス、カラフトマスなどいろいろあるが、サケとマスは生物学的には区別できるものではないようだ。川にいる小さなヤマメが海に出ると巨大なサクラマスになるのはよく知られたことだが、サケなのかマスなのか、あまりにも呼び名がいろいろあってなかなか覚え切れない。トラウトは日本語ではマスと訳されることが多く、これは淡水で育つ陸封型、サーモンは海に降りる海降型の魚を指すことが多い。トラウトサーモンは、陸封のトラウトが海に降りてサーモンになったのでこの2つをくっつけてこう呼んだようだ。

いけすからすくわれて、クレーンで水揚げ
いけすからすくわれて、クレーンで水揚げ。その場で処理されて氷漬けに。 計量の後、水産加工場に送られる。
北海道二海サーモン
国産の海面養殖サーモンとしてブランド化された「北海道二海サーモン」。生食が人気だが焼いてもうまい。(写真提供:八雲町役場)

始めて4年、サイクルの確立へ

 さて、今回水揚げされたトラウトサーモンだが、この海面のいけすに入る前は、陸にある池にいた。25グラムくらいの稚魚のときに道外から仕入れ、同町にある熊石サーモン種苗生産施設のプールの中で「ニジマス」として約1年間育成されていた。

 ある程度の大きさに育ったところで、人の手で海に移したのが去年の11月だ。チラチラと雪が舞うまだ暗い早朝から、大きなホースでニジマスを吸い上げ小さな水槽に移し、トラックで港まで運んで海面のいけすの中に移す。

 海水温度が下がる冬の間、約6カ月この中で育てる。毎日2回、漁協の漁師さんたちがエサをやって丁寧に管理する。エサやり担当はイカ漁師だった。海に出てもイカはいないのだ。配合飼料で育つサーモンは臭みもなく、国産のサーモンに対する安心感もある。

 八雲町サーモン推進室参事の吉田一久さんは、この事業に当初から関わってきた。かつてはサクラマスの海面養殖も試みたことがあったが、なかなかうまくいかずトラウトサーモンに切り換えた。

 「最初は小さないけす1つで800匹から始め、その後20メートルの円形いけす2基を使用するまでなりました。今年はもう1ついけすを加えてさらに増やす計画です」と語る。

 今、ひやま漁協熊石支所で取れるのはサケやナマコが多いが、トラウトサーモンも全体ではかなりの売上を占めるようになってきたという。同町のある二海(ふたみ)郡にちなんで「北海道二海サーモン」としてブランド化され、地元の水産加工場で加工され、各地に出荷されはじめている。

 「生食でも焼いてもうまい魚です。輸入物に比べると値段が高いですが、安心安全と食べやすさで高値安定を目指したいです」と話す。

 これまでは稚魚を買っていたが、今年からは同町で卵だけを購入して、卵から孵化したものを育てていく予定だ。

サーモン養殖は全国で激戦

 北海道内では八雲町から始まったトラウトサーモンの海面養殖は、江差、奥尻、せたな、泊、木古内、岩内の一部、函館などで行われている。北海道全体でサケ・マス類の漁獲が激減していることも養殖が注目される理由だ。全国でもさまざまな地域で行われていて、サーモンの養殖漁業は激戦の様相を呈している。

 漁船に頼るこれまでの漁業はこれからも厳しい時代が予想されている。引き続き北海道が「魚王国」と言われるためにも、新しい漁業のスタイルに期待が高まる。

(文・写真:吉村卓也)

トラウトサーモン海面繁殖プロセス

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ここからは特集に関連して会員の皆さんからよせられたコメントをご紹介します。

投稿テーマ
『サケ、マス、サーモン』
サケ(鮭)なのかマス(鱒)なのか、はたまたサーモンなのか?
これほど区別がややこしい魚も珍しいのではないでしょうか。
海に下ると名前が変わる、ヤマメとサクラマスは同じ魚?、サケというべきかシャケといいうべきか、アキアジってサケと同じ?、トキシラズってなんだ?、ケイジなんてのもある。回転寿司のサーモンはサケなのか?などなど、私は何度聞いてもよくわかりません。
でもどれも美味しいからいいですけど。
北海道といえばサケですね。木彫りの熊もくわえていますし。
サケといえばなんでしょう?美味しい食べ方、サケの思い出、サケの採り方……。
サケ、マス、サーモン、にまつわるお話、なんでもござれ。お待ちしております!

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おにぎりと言ったら、やっぱり鮭!!!(のるんさん)

九州出身なのですがサケって言い方しか使われてなかったような気がします。。。(マスタクさん)

サーモンをお刺身でいただくのも、鮭のチャンチャン焼きなど調理したものも大好きです。(このあーさん)

めちゃくちゃ大好きです、鮭。
寿司屋のサーモンもうまい、焼いた銀はらすもうまい、スーパーの安売りの塩鮭もうまい、酒のつまみに鮭とばもうまい……
こんなうまい魚を生み出した神に感謝です。(おかゆさん)

大葉を重なるように円形に敷いていき、サーモンを同じように並べるだけで、薔薇のような見栄えになります。
それにレモン汁をかけると、さっぱりと食べられて、とても美味しいです。
スーパーのサーモンでも、ちょっとした一工夫をするだけで、食卓を鮮やかに出来るので、オススメです。(朝焼けさん)

さけかしゃけかどっちが正しいかは正直分かりません。函館に生まれ育ったのでルイベは当たり前だと思っていたのですが転勤で関西に来てみたら周りの関西人はルイベを誰も知りません。口に入れた時のシャリっとした食感と口の中でトロっと溶けていく味わいが貯まりませんね。もっと全国的にルイベを広めたいです。毎年当たり前に食べていた時鮭も周りの関西人で食べた事がある人はいなくてすごくギャップを感じました。(KANTON$さん)

テーマを決めてパッチワークでタペストリーを作っています。
「海の生き物」を作った時に、あとから考えて、どうして「鮭」がいないんだろうと不思議でした。
淡水魚になっているんですね。最後の晩餐、酒の塩焼きが食べたい。(ノリコさん)

鮭はシャケです!サケだと酒と紛らわしいし、サーモンは気取ってます!(プリンさん)

最近、名前が成長により変わると知りました。

ただ、どれもおいしいから、どんな名前だって気にしません!(まるさん)

苫小牧に住んでいる時、鮭をくわえたクマの置物たくさん買った(チバタロウさん)

塩引きが美味しい(オリジナルリリーさん)

昔北海道へ行ったときに鮭が川に上がってくるところを見ました。(とらぴいさん)

焼いて食べるのが一番好きです。(はなちゃん3さん)

おにぎりの具はシャケで決まり!(鉄人シルバーさん)

サケという言葉はニシン科の魚を指します。海から川に遡上して産卵を行うことで有名で、産卵後に死ぬ特徴があります。マスは、淡水魚の一種であり、サケと同じニシン科に属しています。釣りや食材として、人気があります。そして、サーモンは、北極圏や太平洋北部に生息するサケ科の魚であり、特別な遡上行動を行わず、海で生活を送ります。鮮やかな肉の色と豊かな油分を持っており、多くの国で愛される食材です。(ユウジさん)

子供の頃は親が歳暮で新巻鮭1匹分まるごと貰うなんて事、よくありましたね。
今は塩分気になるし、自分じゃうまくさばけないし、まあくれる人もいませんが。(クロネンコさん)

サケと呼ぶのは、コンビニのおにぎり・朝ごはんの添え物。マスと呼ぶのは、へしこのような小さめのサイズで焼いて食べる。サーモンと呼ぶのは、刺身で食べる。どれも美味しくいただいています。(アッシさん)

釣り堀で60cm越えの大きニジマスを釣り上げたが、家に持ち帰っても調理できないので、釣り堀やで塩焼きにしてもらい、8人で食べました。しかし、想定外の値段になってしまいました。(だてっこパパさん)

鮭大好きです゚+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゚チャンチャン焼きや、普通に塩で焼いたり、あ~食べたくなってくる。ちなみに生は苦手です。すべて火をとおして頂きたいです。そして、あまり脂ののっていないのが好きです( 〃▽〃)(kawaさん)

思い出に残っているのは、地引き網体験で取ったのがいい思い出です。(Kさん)

サケ、マス、サーモン全部あっさりしていて大好きな魚です(みちさん)

北海道千歳の鮭水族館でオスとメスの顔立ちの違いは解りました。(シズオさん)

焼き鮭が一番好きです。
この場合は「じゃけ」に変化してますね。(シュンさん)

最近,海水温の関係で鮭がとれにくくなったとききました。たとえ高級魚でも〇〇は使い慣れてなく手が出にくいです。カムバックサーモンです。(ゆさん)

サケは大好きなので、よく食べます。アルミホイルに鮭の切り身を置いて味噌とマヨネーズをブレントしたものを鮭の切り身の上に塗って、アルミホイルでくるんでオーブントースター焼いて食べるのがお気に入りです。(うさぴょんさん)

東京出身なので、北海道に住むようになってはじめて、生の鮭の美味しさを知りました。そしてお値段もお手頃!バターでサッと焼くだけでご馳走!幸せです。(よっしーさん)

サーモンはサケの英語表示なのでサケとサーモンは同じですが、サケとマスは違う魚だと思います。サケの方が脂がのっていて、マスの方があっさりしています。(まろんさん)

サケといえば思い出すのが千歳の「インディアン水車」。子供の頃、堰のすぐそばまで行けて、学校の写生会もあったよ。鮭が飛び跳ねる様子圧巻だったね。(りんごちゃんさん)

一に塩焼き二に刺身です。で、三にスモークサーモン、かな。(タカハシさん)

サケ、マス、サーモン…私も、良く分からないと思いながら齢を重ねてきた一人です。幸か不幸か、サケよりも、タイ、アジ、ブリ、ハマチなどが好きなので、普段は、あまり気に留める必要もなく生活しています。(ゆひかさん)

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