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窓の外のブドウ畑を眺めながら、北海道産ワインを味わってみました。(札幌市南区の八剣山ワイナリー)
ワインの魅力は、風土、品種、作り手の、3つの個性の織りなす味。日本ワインの中でも、北海道産ワインは独自の気候を生かした味わいで評価されています。特にGI(地理的表示)認可も追い風になり、その人気は高まる一方!北海道産ワインに詳しいソムリエのセレクトで、今飲んでみたい7本をご紹介します。
国産ワインの製造量は約8.2万キロリットル。最近よく耳にする「日本ワイン」は国内醸造、国産ブドウ100%などの諸条件をクリアしたもので、国産の約2割にあたる。
その日本ワインの製造量では山梨、長野に次ぐ3位の北海道だが、醸造用ブドウ品種の栽培面積では全国一。寒冷地向きの品種と栽培技術に独自性がある上、近年は高級赤ワイン向け品種ピノ・ノワールの栽培にも成功。2019年調べで全国303の醸造所のうち、道内は40カ所まで増え、今後も開業が続きそうだ。味わいも多様化し、海外の人気レストランに採用される小規模ワイナリーも現れた。
人気の背景には、ワインに「土地らしさ」を求める嗜好や、産地へ旅するワインツーリズム、気候変動に対応する産地への期待などがある。2018年には北海道に地理的表示(GI)制度の指定が行われ、認定ワインにロゴマークが表示できるようになった。 (深江園子)
<参考>:国内製造ワインの概況 (平成30年度調査分、令和2年2月 国税庁課税部酒税課)、NPO法人ワインクラスター北海道HP
ワイン用のブドウの樹は、「棚」を作らず、水平に樹を延ばす「垣根づくり」が一般的だ。 収穫後は剪定し、雪が降るとその重みで樹は雪の下に埋もれ、越冬する。(八剣山ワイナリーで)
7種の北海道産ワインを飲み比べながら、3人の方に対談していただきました。 ワインのセレクトは札幌のワインショップ「グランヴァンセラー」のソムリエ・神谷亮さん、対談のお相手は本誌でお酒のコラムを執筆中の高田まゆみさん、聞き手とまとめはフードライターの深江園子さんです。
※新型コロナウィルス感染拡大防止を考慮し、今回の試飲対談は屋外テラス席のある札幌市南区の八剣山ワイナリーにて、「新北海道スタイル」に準拠しながら行いました。
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深江園子/札幌生まれ函館育ち。「月刊居酒屋」はじめ飲食ホテル雑誌の編集部を経てフリー。北海道らしさを求め、食材産地から三つ星レストランまで取材。 | 高田まゆみ/札幌出身のフリーアナウンサー。大のワイン好きで、本紙ワインコラム連載中。 HTB「Hit.com Night」(毎週木曜深夜)ほか。 | 神谷亮/日本ソムリエ協会認定 ソムリエ。ワイン1,800種以上を揃える札幌のワイン専門店「グランヴァンセラー」さっぽろ東急店・すすきの店 統括店長。(取材当時) |
神谷 1本目はスパークリングです。今日は南区のワイナリーに伺っているので、ご近所のワイナリーを選びました。
高田 優しくていい香り。なのに味はキリッとしておいしい!
神谷 ナイアガラというブドウはマスカットのような鮮烈な香りで一般的には甘口に仕上げられますが、このワインは食中酒として楽しめる辛口。色々な香味成分が残るよう無濾過で仕上げています。アルコール度数9.5とスパークリングの中ではやや低めですし、テラスにお似合いですね。
高田 泡がきめ細かくて口当たりもなめらかですね。
神谷 スパークリングにはガスを加えて作るものもありますが、これはシャンパーニュと同じ製法で、ワインを瓶詰めする時に糖を補って二次発酵させます。こんなに手間をかけたワインが身近で作られていて、値段も2000円以内とお手頃なんです。
深江 ホームパーティーや手土産にしたくなりますね!
高田 キラキラと淡い緑色がきれい!香りが立ち上るというより、口に含んで鼻からふっと抜ける時に感じる、やさしい香りです。
神谷 ケルナーという品種には、白い花や白桃のような香りがあります。樹齢20年以上のブドウを使った貴重なワインです。
高田 1よりも、味の余韻がありますね。少しレモンっぽい風味がハーブポテトに合う!
神谷 爽やかな酸のあるこのワインには、ハーブや生クリームを使ったお料理、サーモンなどがおすすめです。セミハードチーズもいいですね。
深江 このワインは、歴史あるブドウ農園の原料だと聞きました。
神谷 はい。余市・木村農園は、北海道の醸造用ブドウづくりの第一世代。その背景には千歳ワイナリーとの長い信頼関係の上に、このワインがあるのでしょうね。
主に赤ワインになるピノ・ノワール(左)と白ワインになるシャルドネ(右)。こうした品種の栽培に成功したことが北海道産ワインブームの基礎になった。(三笠市 山﨑ワイナリー 2019年9月撮影)
高田 こちらは2に比べるとコクがありますね。果実っぽさとふくよかさというか、味に丸みを感じます。
神谷 面白いことに、こうした果実味豊かなワインにはきんぴらなどのお惣菜が合うんですよ。
深江 ナイアガラもデラウェアも生食用品種ですね。
神谷 ヨーロッパには伝統的に醸造用ブドウ品種がありますが、日本では生食用ブドウ品種もワインに使われています。
高田 味も違いそうですね。
神谷 ワインの味は醸造法によって可能性が広がるので、一口には言えません。ただ、果樹一本当たりの収穫量は生食用の方がずっと多いので、カジュアルワインをつくる上で生食用ブドウは欠かせません。
高田 樽っぽい、程よいスパイスのような香りですね。酸も強めだから、シーフードマリネを食べてみようかな。
神谷 いいですね。白ワインは、木樽に入れるものとそうでないものに二分されます。1,2,3はステンレスの発酵タンクで密閉してフレッシュな風味を保ちますが、木樽を使うとナッツやバニラのような香りや複雑な味わいを得られます。飲み分けると楽しいですよ。
高田 白ワインは冷やして飲むことが多かったので、グラスを並べてじっくり味と向き合うと一層楽しいです!
神谷 山﨑さんは2002年創業で、道産ワインの節目になったワイナリーです。それまでワインづくりはワインメーカー、ブドウづくりは農家の仕事。農家がワイン醸造までというのは道内初でした。
高田 農家製の道産ワインは初めて飲みました。コクがあって、チーズたっぷりのピザにも合いますね。
ソムリエ、神谷亮さんの選んだ道産ワインを試飲する高田まゆみさん。思わず笑みがこぼれる。
取材協力:●八剣山ワイナリー(会場提供) 札幌市南区砥山194-1 tel. 011-596-5778 レストラン併設。地元野菜等の販売あり。水曜定休。
●グランヴァンセラーさっぽろ東急店 (ソムリエによるワインセレクト) さっぽろ東急百貨店B1 tel. 011-218-2222
高田 フクロウのラベルがかわいい!
神谷 大学との共同研究から生まれたワインで、道産ブドウ100%です。酵母もこの八剣山ワイナリーの試験圃場のブドウから分離したものだそうです。
高田 ヌーヴォー(新酒)的な若くてキャンディのような香りで、酸味は感じません。
神谷 こうした優しめの赤ワインはタレの焼鳥や根菜の煮物に合いますから、ぜひお試し下さい。軽く冷やしてジンギスカンと飲むのもいいですよ。
高田 これなら初めての方も飲みやすそうですね。
ワインに合うお料理を考えるのも楽しい
ワインコルクにも個性が現れている
高田 色が濃いですね。グラスからバニラやシナモンのような香りを感じました。
神谷 醸造所では、フレンチオークやアメリカンオークなど樽にもこだわっているんですよ。
高田 赤ワインらしいタンニンも十分です。こんな本気モードの道産ワインもあるんですね!
神谷 寒さに強く、果実の色が濃くて凝縮感が出る、北海道向きの品種です。造っているのは創立1972年の、自治体をバックボーンに持つワイナリーで他と違う挑戦ができる企業です。長期熟成ワインもその一つだと思います。
高田 各ワイナリーのホームページには歴史や想いが載っていて、一層興味が湧いてきますね。
神谷 最後は、余市の個人農家であり醸造家の方のワインです。
高田 ラベルがシンプルでおしゃれ!外国産ワインかと思いました。
神谷 平川さんはフランスで大学の醸造学科を経てソムリエになり、超一流の産地とレストランの両方で学ばれた方です。平川さんのように、自らブドウを栽培しワインをつくる小規模ワイナリーも増えています。
高田 とてもいい香りです! 黒々とした濃い赤色。余韻は少し短めですが、ヨーロッパのワインの一種という感じの風味で、大きめのグラスで飲んでみたいです。
神谷 ブドウは100%余市産。「余市の大地(テール・ド・ヨイチ)」という名前が言い表していますね。
高田 今日は厳選のラインアップのお陰で、北海道産ワインの印象が進化しました!北海道はもちろん全国の方にも、もっとお知らせしたいですね。
神谷 場面や好みに合わせたり、おうちご飯に合う提案もお伝えできて、何よりです!
深江 近年の北海道産ワインは本当に幅が広がって、別世界になったと感じています。飲み始めるなら今かもしれません。
(まとめ:深江園子 写真:吉村卓也)
対談の最後には、聞き手の深江さん(左端)、高田さん(中)にソムリエの神谷さん(右端)もテーブルを囲み、話がはずんだ。
1. <スパークリングワイン> 藤野ワイナリー(札幌市) ナイアガラ ナチュラルスパークリング
2. <白ワイン> 千歳ワイナリー(千歳市) 北ワイン ケルナー
3. <白ワイン> TAKIZAWA WINERY(三笠市) デラウェア サン・スーフル・アジュテ
4. <白ワイン> 山﨑ワイナリー(三笠市) シャルドネ
5. <赤ワイン> 八剣山ワイナリー(札幌市) 北海学園ワイン
6. <赤ワイン> ふらのワイン(富良野市) ツヴァイゲルトレーベ
7. <赤ワイン> 平川ワイナリー(余市町) スゴン・ヴァン テール・ド・ヨイチ
ここからは特集に関連して会員の皆さんからよせられたコメントをご紹介します。
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北の大地でお待ちしています
冬にホットワイン、身体もあたたまっていいですよね
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