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>HOME >特集一覧 >VOL.206「北海道でもできました シャインマスカット 仁木町での挑戦」(2021年10月18日)
特集「北海道でもできました シャインマスカット 仁木町での挑戦」の表紙の写真です

特集Vol.206
『北海道でもできました シャインマスカット 仁木町での挑戦』

公開:2021年10月18日 ※記事の内容は取材当時のものです。

 札幌から車で約90分、小樽からさらに西へ進むと仁木町に着く。隣の余市町と共に果樹栽培が盛んなところだ。トマトやサクランボが有名だが、とあるブドウ園で北海道らしからぬ風景に出会った。ブドウ棚からいっせいに垂れ下がっているのは、青色の袋がかかった見るからに大きそうなブドウ。生産者に袋を外してもらうと、現れたのは輝くような黄緑色、はちきれんばかりの実がついたシャインマスカットだ。これまで北海道ではできないと言われた大粒ブドウ。ついに北海道にも大粒ブドウの時代がやって来るのか。

シャインマスカット

大粒ブドウへの挑戦
仁木町がシャインマスカットの産地になる

北海道のブドウといえば

 最近のブドウといえば大粒で皮ごと食べられるものが大人気だ。色も、黒系、赤系、緑系とさまざまで種類も豊富だが、北海道の気候では栽培が難しく、シャインマスカット、巨峰、ピオーネといった人気の大粒ブドウは道外からやってくるものだった。
 北海道のブドウといえば、ナイアガラ、キャンベル、ポートランド、スチューベンといった小粒のもので、皮は硬く、種もある。これを一度に1〜2粒指でつまんで口元に持っていき、指で押してつるりと皮を外して口の中に押し出し、チューチューと皮を吸う。種は気にせずそのまま飲み込むか、吐きだすかは人それぞれ。止まらなくなる美味しさで一房などあっ
という間、というのがかつてのブドウの普通の食べ方だった。生食ではなく加工に回るものも多かった。

国内市場を席巻した大粒ブドウ

 巨峰という大粒黒ブドウの傑作が静岡県で生まれたのが1937年。さらに種無しをつくる技術も進み、種無しのピオーネや、種無しの巨峰も現れ、世の中はすっかり大粒種無し中心の時代に。そして、1988年、大粒ブドウのスーパースターが産声をあげる。18年の歳月を経て、2006年に「シャインマスカット」として品種登録された緑色のブドウだ。皮ごと食べられる手軽さ、ぱんぱんに張った輝くような特大の実は、もはや芸術品といってもいいほどだ。デパートの贈答品フルーツの常連で、箱入りの高級品では一房1万円前後となるものもある。
 北海道では、大粒ブドウ栽培に個別に挑戦する農家はあったものの、地域としての取り組みとはならなかった。全国のブドウ農家の多くが大粒品種の栽培を始め、北海道にも道外から食べやすく見栄えもよい大粒種がどんどん入ってくるようになり、それに押される形で道内ブドウの販売価格は低迷が続いていた。

北海道でもできないか

 この状況を打開しようと、大粒ブドウに挑戦した地域があった。それが仁木町だ。
 最初に挑戦を始めたのは、「仁木ハウスぶどう生産組合」に所属する地元のブドウ農家だった。2〜3件の農家が道外で栽培されている大粒品種の苗木を何種類か取り寄せ、試験的に栽培し始めたのが約10年前。実際に栽培してみて越冬できない品種も出る中、総合的に判断していちばんうまくいったのがシャインマスカットだったという。全国的なシャインマスカット需要の高まりも理由のひとつだ。実は2〜30年前にも大粒品種を試したこともあったが、全くうまくいかなかった。今回は2度目の挑戦だった。
 仁木町を担当するJA新おたるの営農経済部販売第一課長の川端正人さんも、生産者に寄り添い、大粒ブドウの生産を後押ししてきた。
 「仁木を代表するサクランボは半分以上を道外出荷していますが、ブドウはほぼ道内消費。高値のつく大粒ブドウは魅力的でしたが、最初は『本当に北海道でできるのか』と思っていた人は多かったと思います」と当時を振り返る。
 大粒ブドウは、北海道で作られているような小粒種と比べて格段に手間がかかる。房の形をきれいに整え、粒を大きくするために若いうちに粒を間引きする「摘粒」というおそろしく時間のかかる職人技的な作業があるのに加え、「ジベレリン処理」という若い房を溶液に浸してブドウを種無しにする作業、色づきをよくするための一房ずつの袋掛けや、日焼け防止のための傘かけ、など、道内のブドウ作りではあまり馴染みのない作業が加わる。

坂東弘一さんの畑で実ったシャインマスカット
坂東弘一さんの畑で実ったシャインマスカット。色づきをよくするため、一房一房青色の袋をかける。
生産組合の坂東弘一組合長(左)と、JA新おたるの川端正人さん
仁木ハウスぶどう生産組合の坂東弘一組合長(左)と、JA新おたるの川端正人さん。農家とJAが協力しながら、シャインマスカットの栽培方法を模索してきた。

十年前からの努力が実る

 十年程前、シャインマスカットの苗木を手に入れるのも難しかった時代、まずなんとか苗木を手に入れ、植え始めた。ブドウは植えてから実がなるまでに3〜5年かかる。やっと実が実るようになったころ、何件かの農家が道外のシャインマスカット産地に勉強に行き、育て方を勉強したという。そして、ブドウの樹が本来の力を発揮して本当に美味しいブドウがなるためには約10年の時間がかかると言われている。
 仁木町のシャインマスカットが出荷を開始したのは、2020年秋。植え始めてからほぼ10年が経っていた。仁木ハウスぶどう生産組合で出荷基準を決め、糖度17度以上のもの、グレードが上級なものには「ラ・ラ・シャイン(La・La・shine)」という独自の名前を冠することにした。この名前は地元の公募で選ばれた。
 当初は少数の生産者からスタートしたが、現在は同生産組合の中にシャインマスカット部会ができ、参加農家は19件に増えた。

手間のかかる房づくりは職人技

 同生産組合が、本格的にシャインマスカットの栽培に着目したのは、二代前の組合長だった森敬承さんの時代。次の組合長だった山田徹さんがそれをブランド化し、現組合長としてそれを引き継ぐのは坂東弘一さんだ。
 坂東さんは10年程前から、個人的な興味もありいろいろな大粒ブドウの苗を取り寄せて育てていた。シャインマスカットも当初はうまくできなかったが、現在、10年目となった樹が見事な房をつける。
 「自分で作りたくてやってましたけど、最初はうまくいかなくて。部会で勉強したりしてここまで来ました」と語る。一番手間のかかる作業、「摘粒」に使うハサミを見せてもらった。ブドウの房の奥まで刃が届くように、細いくちばしのようなハサミの先端。そして反対側には大きなピンセットのようなものがついている。ハサミを差し込んで切り、ピンセットでつまみ出す。
 「摘粒は本当にたいへんな作業。きれいな房を作るために神経を使います。マニュアルもありますが、どんな形の房を作るか、最後は作り手のセンスですね」と言う。
 作り手によって、微妙にブドウの房の面構えが違うようだ。今も新しい樹を育てているので、今後は生産量を増やす予定という。

作業用ハサミ
きれいな房を作るための「摘粒」(間引き)作業用ハサミ。反対側には粒をつまみ出すためのピンセットがついている。
庫内の気温は1度
生産者の中には専用の特別な冷蔵庫を持つ農家も多い。田中貴博さんは8年前からシャインマスカットに参入。庫内の気温は1度。直接冷気が当たらないように調整しながら、年末年始の需要に合わせて出荷する。

変わっていくブドウ造りの風景

 昨年の仁木町のシャインマスカットの扱いは約2,300Kg。本州の大産地に比べればまだ微々たるものだ。後発産地として、組合の農家の何軒かは保存用の大型冷蔵庫を導入することによって出荷時期を調整し、年末年始の需要にターゲットを合わせる戦略を取った。道外物のシャインマスカットがピークを迎える秋にはあまり勝負をかけない。冷涼な気候で出荷時期が道外物より少し遅くなる事、さらにそれを冬まで引っ張る事により全国で品薄となる時期に出荷する作戦だ。去年は道外には出荷しなかったが、今年あたりからは道外にも出していきたい、とJA新おたるの川端課長は語る。
 仁木町での挑戦が嚆矢となり、北海道産の大粒ブドウが市場を賑わす日も近い気がする。こつこつと植えられたシャインマスカットの樹は順調に育ち、これからはどんどん実る房も増えるだろう。数年後、仁木町のシャインマスカット畑の風景は大きく変わっているはずだ。
(文・写真 :吉村卓也)

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投稿テーマ
『秋、果物の季節!』
秋に実る美味しいものと言えばやっぱり果物!
ブドウ、プラム、プルーン、梨、リンゴ、などなど。
北海道が美味しい果物の産地であること、実はあまり知られていないかもしれません。
道外物も含め、スーパーや八百屋に並ぶ色とりどりのフルーツを見るのは楽しいものです。
秋の果物、どんなものがお好きでしょう?
生食以外でも、加工して美味しいレシピがあったらぜひ教えてください!

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(のるんさん)

柿が好きです!(このあーさん)

いちじくが美味しい季節です。(ヨウちゃんさん)

秋は様々な、美味しい果物がありますが、中でも梨、特に洋梨が好きです、独特な甘さと、しっとりとしたやわらかさが最高です!(タレちゃんさん)

梨が好きですが、特に加工などせず普通にそのまま食べるぐらいです(ぴのこだっくさん)

ブドウが好きです(あやあやさん)

梨・ぶどう・柿が大好きです♪(マスタクさん)

ブドウやミカンを生クリームと混ぜてパンに挟んで最近流行りのフルーツ生クリームサンドをつくりました。とても美味しいのでおすすめです。(まるさん)

(マサユキさん)

秋の果物で好きなのは梨です。
噛んだ瞬間のシャキっとした歯ごたえや、瑞々しい果汁が溢れ出るところがたまりません。
すっきりとした甘さもお気に入りのポイントです。
お風呂上りによく冷えた梨を食べると、火照った身体がクールダウンしていく感じがして気持ちがいいです。(まめ太郎さん)

フルーツポンチ(ファンタグレープの中にあるフルーツを一口大にして入れるだけ)やミックスジュースによくします。
(まるさん)

シャインマスカット(てるみちゃんよさん)

余市で収穫したプルーン、生でもおいしくいただけますが、プルーンを煮詰めたジャムやホワイトリカーで作るプルーン酒は長く保存でき大変重宝しています。(さぼちゃんさん)

柿が好きです!甘いあの味がおいしくて秋にしか食べれないので一番好きですね(パンナさん)

(ronさん)

りんごのアップルパイ(空城城太郎さん)

リンゴ(くりぼうさん)

毎年義父から送ってもらうブドウ!(りさん)

秋といえば、柿ですね。実家の畑に柿の木があって、渋柿から干し柿を作ってお正月に食べるのが私の家の伝統でした。
渋柿の皮を向いて、ヘタにビニール紐を結び、沸騰したお湯に10秒くらい付けて、軒下の日当たり、風通しの良いところに干す。
雨に当たると、カビが生えるので濡れないようにして3週間くらいで出来上がり。
(mimimさん)

梨と柿が好き(め組さん)

梨が好きです♪(ぽっちさん)

梨が好きです♪(ぽっちさん)

梨が好きです♪(ぽっちさん)

梨が好きです♪(ぽっちさん)

梨が好きです♪(ぽっちさん)

梨が好きです♪(ぽっちさん)

梨が好きです♪(ぽっちさん)

梨が好きです♪(ぽっちさん)

梨が好きです♪(ぽっちさん)

梨が好きです♪(ぽっちさん)

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