朝日IDをお持ちの方はこちらから
AFCのログインIDをお持ちの方(2024年7月31日までにAFCに入会された方)はこちらから
新規入会はこちらから(朝日IDの登録ページが開きます)
メディアを考える若者座談会の第2弾です。第1回は本誌第215号(2022年7月)で「Z世代と新聞〜若手新聞記者と大学生が話してみた」として特集しました。今回はテレビの現場からも参加してもらい、大学生・大学院生4人と、ほぼ同世代の新聞記者2人、テレビ記者1人、制作スタッフ1人との座談会となりました。司会は本誌編集担当の吉村卓也です。座談会の様子を再録します。
出席の学生さんたちに事前に質問事項を送りました。その1つが新聞やテレビとの接触についてです。まず、新聞を定期購読している人はゼロ。「たまに図書館で読む」が2人、「ほとんど読まない」が2人です。テレビとの関わりは、「たまに見る」が2人、「ほとんど見ない」が1人、テレビを持っていないが1人。この回答を見て、現場のみなさんはどう感じたでしょうか。
上保:感覚的にはわかります。私が学生のときテレビも新聞もあまり見なかった。
鈴木:自分が学生の頃と同じ。半分の方が読んでいるのが嬉しいくらいです。
富永:自分も学生のときは朝にテレビを見るくらいでした。
平賀:今のテレビを現しているのかな。そんな人にも見てもらえるテレビを作りたいと思います。
最近、大谷翔平選手の通訳が賭博の疑いでチームを解雇されたニュースがありました。このニュースを知ったきっかけを尋ねたところ、全員が「ネットで」ということでした。その情報源は覚えていますか?
石附:LINEニュースですが、どこの情報だったかは気にしていなかったです。
中里:Yahoo!ニュースで見ましたが、情報源までは気にしていませんでした。
新開: X(旧Twitter)の「急上昇中ワード」で出てきたので、え!と思って調べました。
石橋:LINEニュースで出てきたので、X(旧Twitter)に飛んで知りました。その先はライブドアニュースだったかな。
それらのニュースも大元のソースというのがあって、それはたいていの場合、新聞、テレビ、週刊誌等なんですが、そこはあまり気にしていないようですね。作っている側としてはどう感じますか?
上保:書くときは、もうそういうものだということを前提にしていますね。
富永:自分が書いたものがわからなくなって寂しい気はしますが、他のところに掲載されることで多くの人が見てくれるのはそれもいいのかなとも思います。
テレビでよく見る番組があると挙げてくれたのは1人で、それは「大河ドラマ」でした。
新開:私です。国文学専攻なので、今やっている「光る君へ」がちょうどぴったりです。歴史は好きなので大河ドラマは見ていましたが、そのときにテレビのコンセントを入れて見る、という感じでした。
平賀:テレビのコンセントはつけっぱなしじゃないんですね。そうかー(笑)
石附:昔はけっこう好きで見ていたが1人暮らしになってからテレビは持たなくなりました。
中里:「ながら見」みたいにしていることはけっこうあります。朝はイチモニ!見ます。
平賀:夕方のイチオシ!!もぜひ!(笑)
石橋:テレビはネットのサブスクサービスを見るときにモニターとして使います。
平賀:たとえば、札幌で地震が起きた!というときにいちばん最初に目にしたいメディアは何でしょう?
新開:テレビつけます。
石附:スマホですかね。
中里:テレビです。
平賀:いざというときに信頼されるメディアであるのはありがたいです。速報することで市民の安全を守っていくというのもテレビ局の使命だと思っているので。
接するメディアとして「ラジオ」を挙げてくれた方が1人。
中里:深夜ラジオとかが好きでスマホでよく聴きます。ライブ感がよくて、何かつながっている感じがするので。
記者に対するイメージを聞きましたが、「権力を監視する人」という回答の他に、「ずうずうしい」という印象もありました。
上保:取材対象を尊重するのはいつも意識していますが、そこに公益性、社会性があるものであれば、聞くことが相手を傷つけることかもしれないですが、あえて聞きます。メディアはその情報を欲しい人に対して届けるための仲介者の役割があると思うので。
鈴木:記者っぽくない記者になりたいと思っています。記者である前に人として行動したい。取材先から、押しが弱いね、と言われることもあるんですが……。
富永:相手に嫌な顔されても聞かなきゃいけないこともありますね。どうしても気後れしちゃいますけど。
平賀:私がテレビ局から内定をもらった後に、友人を交通事故で亡くしました。ニュースにもなり、遺族に取材している記者を見て、自分がしたい仕事ってこれなのか、と戸惑ったことがありました。
石橋:遺族の気持ちはだいたい想像できるので、わざわざ聞く必要あるのかなとも思います。
中里:凄惨なものを見るとしんどくなってしまうけど、目をそらし続けているといけないのでは、と思う。
石附:悲しいニュースは遠ざけたい気持ちもあるけど、人の感情を知ることでこういうことを無くそうという気持ちになるかもしれません。
新開:私自身が福島で東日本大震災の被災者でした。住んでいた町の半分が津波で持っていかれました。現状を知って欲しいという気持ちと、見られたくないという気持ちが共存しました。みんなは普通に生活していて、私たちは何日も風呂に入れていないような状況を世界中にさらすの、という気持ちですね。でも、それを見たことで何かできることはないか、となるのであればそこに報道する意義があるのかもとも思います。
富永:まだ災害の現場に行ったことはないのですが、この人になら話をしてもいいなという人になれればいいと今聞いていて思いました。
上保:遺族や被害者を取材したことは何度もあり、今でも葛藤があります。玄関のピンポンを押すだけでも傷つけてしまうのではと思いますが、直接話を聞いてわかることもあります。悲しいの一言ではないことも伝えたいと思っています。
鈴木:そういう現場では葛藤しかないですね。家の前に着くまではいいんです。でもなかなかピンポンが押せない。カーテンの向こう側でおびえてる人がいるかも、と思ってしまう。押すだけでも悩んで、深呼吸して、どう話そうか考えています。
上保:これから知床観光船事故2年の取材に行くのですが、重たい気持ちはありますね。
鈴木:何も話したくないと思う方もいる一方で、ちょっと聞いて欲しいと思っている可能性もゼロではない。その可能性だけを信じてやっています。
メディアに期待することとして、「真実ではなく事実の報道に努めて欲しい」というものがありました。これはどういうことでしょう。
新開:真実は見方によって人の分だけあり、事実は間違いなく言えること。それを報道して欲しいということですね。個人の思いは個人が発信できる世の中になってきた。動くことのない事実を確認したいと思います。
上保:事実を元にして書くのは徹底しています。ただ、事実の羅列だけだと、どう読み解くかをすべて個人に委ねることになります。前提知識がないと難しい時もあります。ある程度、こういう見方ができるのではないかというパッケージは示さないといけないと思っています。
もうひとつ、「偏向報道をしないこと」という意見もありました。
中里: 見ている側の解釈を誘導するもの、という意味です。事実以上のことを発信することで、発信する側の考えに誘導するようなもの。私は流されやすいので、誘導されてしまうことがあります。
鈴木:記者として、自分の見方が入らない記事はないと思うんです。自分が伝えたいという思いを持って記事を書くので、偏ってしまうこともあると思う。違う見方の意見を登場させることもありますが、自分の思いが入らない記事はないのではないかと思います。
平賀:記者それぞれに価値観、考え方がある以上、全メディアが同じようになることはないでしょう。大事なのは、同じ内容でもいろいろなものを見比べること。その中で自分はどう思うかを大切にすることができれば、偏りを知ることが武器になります。情報収集能力がさらに深まるかもしれません。
「情報の信頼度の高さは大手メディアの強み」という意見もありました。
石附:本当に関心があって確かめたいと思ったら、新聞を参照することは多いです。SNS全盛の時代に新聞やテレビはそういうものであって欲しいと思います。
「SNSで、一般人の投稿に対して、記者と思われる人から情報提供を依頼する返信を見かける機会が増えている」というのがありました。こういうことをメディアのみなさんはよくやりますか?(※全員うなずく)
新開:SNSという、社会全体を反映しているかどうかわからない場所での情報に基づいて取材をするというところにちょっと疑問がありました。
上保:基本は直接会って話を聞くことだが、補う手段として活用しないことはないと思います。コンタクトを取って話を聞いて、その後は情報の裏付けをします。
鈴木:いち早く情報をつかむ手段として考えていました。SNSで終わるのではなく、その後の取材につなげるためのものなので、通過点だと思っています。
SNSとの付き合い方は今ならではのテーマですね。昔は記事を書いても、読者からの反応はよほどのことがない限りなかった。そのかわり「炎上」もなかった。書いたことに対して、ネットでの反応は気になりますか?
上保:記事の反応はネット上ではよく見ます。でも参考程度に。読者もある程度距離を置いて記事を読んでいるのではないかと思っています。
平賀:自分が取材した店が放送後にどんな反響があったかはすごく知りたいです。SNSよりも、取材した店に行きます。ロケの1週間後には必ず行って聞くことにしています。反響があったときはすごく嬉しいですね。
新開:SNSで何かを見て変だと思ったときに、新聞やテレビを見れば裏付けのある情報があるだろうという安心感があります。それがあるから、SNSを楽しめているという面もあります。メディアとして信頼しています、というのはお知らせしたいと思います。
平賀:どうやったらもっとテレビを見たいと思うのだろう?
中里:私は生放送だとテレビを見たくなります。生だと視聴者と媒体がつながっている感じがします。
平賀:まさにそこがテレビの強みではないかと、いろいろなところから言われますね。
今日出席されたメディアの方、まだ若いのでこれから先もこの仕事に長く関わることでしょう。未来を見据えてどういうことをやっていきたいですか。
上保:身の回りのこと以外に気が回らなくなっている人が多いと思います。場所や時間が遠く感じる話題にも窓を開きたいです。少しでも社会が良くなればいいなと思って書いています。読者と一緒に社会をより良い方向に進めて行きたいですね。
鈴木:休みの時とかはひたすらインスタを見ています。いいなと思うものを見たいと思うからです。目に留めてもらって、実際自分も経験してみたいと思うようなものを発信していきたいと思っています。
富永:免許更新のときに、交通事故被害者のビデオを見ました。これを見た後に、帰るときに運転に気をつけようと思いました。こういう役割はテレビでも大切なのかなと思いました。
平賀:素直に言うなら、こんなに幸せな仕事はないと思っています。自分が紹介したいと思っているものが放送に乗る。自分の作ったものが届く。この仕事をずっとやり続けたいです。かつての私のような子どもたちに、テレビってこんなにすてきだよと伝え続けたいですね。
ここからは特集に関連して会員の皆さんからよせられたコメントをご紹介します。
18ページ中1ページ目
テレビの旅番組を見ると無性に旅に行きたくなりますよね(H)
新聞もテレビも朝日系列とのこと、しっかりとエールに応えられるようこれからも丁寧な報道を心がけていきます(H)
18ページ中1ページ目(512コメント中の30コメント)