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くらしの法律ノート vol.22

75歳の父から突然の相談…現金と空き家、賃貸不動産は相続対策になる?【相続税お悩み相談室】

公開:2026年6月10日(262号掲載)
くらしの法律ノート
お正月に実家へ帰省した際、75歳で一人暮らしをしている父から「手元に現金がかなりあるので、賃貸用不動産事業を始めようかと思っている」と相談されました。父が亡くなった場合、父の住む自宅や賃貸用不動産は私と妹の2人で相続することになります。ただ、私たちはすでにそれぞれ自宅を持っており、将来相続した後の資産管理や税金のことが気になっています。どのような点に注意すべきでしょうか。(東京都在住・47歳女性)

ご相談のように、相続した実家に住む予定がなく、将来「空き家」になり得るケースでは、「相続税」と「相続後に不動産を売却するか、保有するか」の判断が難しくなりがちです。まず押さえておきたいのは、相続税がかかるかどうかの目安、実家が空き家になる場合の「売却時の税金」の考え方、そして賃貸用不動産を相続対策として始める場合の注意点、の3点です。さらに賃貸用不動産を使った相続対策を考える場合は、制度の要件や改正の動きも踏まえて整理しておく必要があります。

相続税がかかるかどうかは「基礎控除4200万円」が出発点

まず、相続税の基本から整理しておきましょう。相続人が姉妹2人の場合、相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円×2人=4200万円」です。相続財産の総額がこの金額を超えると、相続税の申告・納税が必要になります。 お父様が保有している「現金がかなりある」という点は、相続税の見込みを考えるうえで重要です。まずは、実家などの不動産と現金を合わせた全体で、基礎控除を超えそうかどうかを把握しておくと、相続対策の検討もしやすくなります。

実家が空き家になるなら「空き家特例」を考える

相続税の見込みと並んで、実家が将来空き家になりそうな場合に確認しておきたいのが、「相続した不動産を売却するときにどの程度の税負担があり得るか」という点です。相続で不動産を取得した段階では相続税の問題が中心になりますが、その後に売却する場合には、売却益(譲渡所得)に対して所得税・住民税がかかります。 そのため、ご相談のように「相続した実家に住む予定がない」ケースでは、相続税だけでなく、売却時の税金まで含めて全体像を押さえておくと、相続後の資産管理の見通しが立てやすくなります。そこで関係してくるのが、空き家を相続した場合に使える「3000万円特別控除」です。

空き家を相続した場合に使える「3000万円特別控除」

お父様のご自宅が、相続時点(亡くなった日)で「空き家」に該当する場合、一定の要件を満たして売却すると、売却益(譲渡所得)から最大3000万円を控除できる特例があります。これは相続税を軽減する制度ではなく、不動産の売却時に発生する所得税・住民税を軽減する制度です。長期譲渡所得税率(20.315%)を踏まえると、この特例により税負担が最大で約600万円も軽くなる可能性があります。

さらに、姉妹が共同で相続した後に売却した場合には、1人あたり最大3000万円、合計6000万円まで控除を使える点も大きなメリットです。なお、2024年1月以後は、相続人が3人以上の場合、1人あたりの控除額が2000万円になっています。3人であれば6000万円です。相続人の人数や分け方によって、手取り額に大きな差が出る制度です。

「空き家特例」を使うための主な要件は以下のとおりです。

  • 1981年5月31日以前に建築された家屋であること
  • 区分所有建物(分譲マンション等)ではないこと
  • 相続開始直前に、故人以外が居住していなかったこと(原則は一人暮らし。老人ホーム等に入所していた場合でも、一定要件を満たせば対象となります)
  • 相続から売却まで、事業用・貸付用・居住用に使われていないこと
  • 売却代金が1億円以下であること

また、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することが条件となります。現行の空き家特例制度については、2027年12月31日までの譲渡が適用対象です。

特例を使うときは遺産分割の内容と引き渡しのタイミングに注意

空き家特例を使うためには、遺産の分け方も非常に重要です。ポイントは「家屋とその土地をセットで相続すること」です。

たとえば、一次相続で「母と長女が家屋と土地を2分の1ずつ相続」し、二次相続で長女が残りを相続するケースでも、結果として家屋と土地を一体で取得していれば、特例を活用できます。一方、分け方によっては特例が使えなくなる場合もあるため、相続前から分割方法を含めて専門家と確認しておくことが大切です。

なお、空き家特例は、空き家を売却する場合だけでなく、空き家と土地を相続して建物を取り壊し、土地(更地)を売却する場合でも、一定の要件を満たせば対象となります。築年数が経過している場合には売却前に耐震リフォームを行うケースは少なく、家屋を取り壊して土地のみを売却するケースが多いのが実情です。

また、原則は「期限までに引き渡し」ですが、一定の要件を満たせば、売買契約日が期限内であれば、引き渡しが期限後でも適用できる場合があります。さらに、2024年以降は制度が柔軟化され、売買契約に基づき、買主が翌年2月15日までに耐震改修や除却を行う場合でも適用可能となるなど、細かな要件があります。判断に迷った場合は、必ず専門家に確認してください。

賃貸不動産による相続対策は税制改正を踏まえて慎重に

ご相談にあるお父様の賃貸用不動産の購入による相続対策については、将来の相続における資産管理や相続税の見通しに直結します。相続開始以前の対策として、確かに、不動産は現金よりも相続税評価額が下がりやすく、貸家の場合は、通常評価から約30%評価減される仕組みがあります。

一方で、2026年度税制改正(2027年1月1日以後の相続)により、貸付用不動産の評価方法が見直される予定です。具体的には、相続開始前5年以内に取得・新築した貸付用不動産については、取得価額ではなく、相続時の通常の取引価額で評価されることになります。今後は、「不動産にすれば相続税が下がる」という単純な話ではなくなります。

相続対策は、空き家特例の活用、遺産分割の方法、不動産取得のタイミングを含めて、全財産と債務を一覧にしたうえで総合的に判断することが重要です。安易に判断せず、一度立ち止まって専門家に相談することをおすすめします。

(記事は2026年2月1日時点の情報に基づいています。質問は実際の相談内容をもとに再構成しています)

相続会議

「想いをつなぐ、家族のバトン」をコンセプトに、朝日新聞社が運営する相続に関するポータルサイト。役立つ情報をお届けするほか、お住まい近くの弁護士税理士司法書士を検索する機能がある。以下から自治体名をクリックすると、相続会議と提携している弁護士や税理士、司法書士に相談ができる。

※このページの内容、執筆者の肩書きなどは執筆当時のものです
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