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特集「難病の子供たちと家族にそっとより添う」の表紙の写真です

特集Vol.199
『難病の子供たちと家族にそっとより添う』

公開:2021年3月16日 ※記事の内容は取材当時のものです。

難病の子どもたちと家族を支える
ドナルド・マクドナルド・ハウス

ハウスマネージャー
ドナルド・マクドナルド・ハウス さっぽろのハウスマネージャー・福原洋勝さん(右)とボランティアの伊藤真由美さん(中)、加藤孝子さん(左)。ハウスの中のベンチにはマクドナルドのドナルドが座っている。コンサドーレの選手がイベントでハウスを訪れることもあった。

病気の子どもと家族のためのハウス

 すぐ隣には、北海道立子ども総合医療・療育センター(愛称:コドモックル)という難病を抱える子どもの医療を行う病院がある。愛來ちゃんは、この病院に2回入院していた。ドナルド・マクドナルド・ハウスは、この病院に入院したり通院したりする子どもに付き添う親が、長期間安価に滞在できる宿泊施設だ。すべて企業、団体、個人からの寄付、少数の専任スタッフと多くのボランティアで運営される。

突然の入院、付き添う家族は

 トーマスさんと京子さん夫妻はスイス在住だった。2017年、京子さんは里帰り出産のため、実家のある札幌に戻っていた。出産を終え落ち着いたら子どもとスイスに戻る予定だった。
 ところが妊娠32週目、定期健診で訪れた産婦人科で赤ちゃんの胎動が弱いことを指摘される。北大病院に紹介され、さらにすぐにコドモックルに転送。「赤ちゃんが苦しんでいる可能性がある」と、夫のトーマスさんを呼び寄せるのも間に合わず、すぐに帝王切開で出産することになった。誕生した愛來ちゃんにダウン症の合併症の内臓疾患があり、そこから8ヶ月間の入院が始まる。数日後にトーマスさんは日本にやって来て家族3人となったが、京子さんは病室で付き添い、簡易ベッドで寝た。「命が危ないと言わ続けた中、限られた時間の中でできるだけそばにいてあげたかった」と京子さん。「今ならこんな風に振り返れるが当時はそれどころじゃない。一緒にいられるだけでよかったです」と語る。
 入院中、トーマスさんも毎日面会に訪れ、病院から紹介されたさっぽろハウスに滞在した。午前中〜午後8時の面会時間まで子どもといっしょに過ごし、ハウスに帰って寝て、朝また病院に行く毎日だった。
 2回の手術を経て、愛來ちゃんの様態は落ち着いたが、現在も通院を続ける。愛來ちゃんの体調では、まだ飛行機に乗ることはかなわない。コロナもあり、トーマスさんも簡単にスイスに帰国することもできなくなり、スイスでやっていた会計監査の仕事もやめ、一家は日本での人生を再設計中だ。
 子どもの入院時、途方にくれた状況の中で、さっぽろハウスはトーマスさんの一つの救いでもあった。
 「同じ境遇の人がいる。コミュニティーのような、同じ船に乗っているという感覚でしょうか。たいへんな時期でしたが、とても安らぎがありました」とトーマスさんは言う。
 当時の夜間ボランティアの人が、若いときに行ったヨーロッパの話や滞在したスイスのホテルの話をしてくれたり、当時の写真を持ってきてくれたりしてとても仲よくなった。
 「ハウスに帰ってくるとまるで自分の家に戻ったようが気がしましたね」とトーマスさんは当時を振り返る。

アメリカから始まったハウス

 ドナルド・マクドナルド・ハウスは1974年にアメリカのフィラデルフィアで始まった。当時、アメリカのプロフットボール選手の娘が白血病で入院。当時のアメリカでも、付き添いの家族は病院の待ち合い室や病室の床で寝たり、食事は自動販売機ですませるという状況が普通だったようだ。それを知った地域の経営者、フットボールチームやメディアが動き、募金活動が始まる。家族の経済的負担が少なく、安心して滞在できる場所を作る動きとなった。そのときに中心となった人の1人が、現地のハンバーガーチェーン、マクドナルドのフランチャイズオーナーだった。やがてその動きはマクドナルドの本社まで巻き込み、その名を冠したハウスは世界に広がった。現在世界45カ国に377のハウスがある。日本では2001年に東京・世田谷に第一号のハウスができ、さっぽろハウスができたのは2008年、全国で6番目だ。日本には全部で11のハウスがある。

ハウスの中は明るく、いつもきちんと掃除されている。
ハウスの中は明るく、いつもきちんと掃除されている。
共用のキッチンとダイニングは利用者の語らいの場でもある。
共用のキッチンとダイニングは利用者の語らいの場でもある。

寄付とボランティアに頼る運営

 ハウスはドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパンという財団によって運営されており、ハンバーガーのマクドナルドは大口寄付者の一つで財団の運営には関わっていないが、店舗のレジの横には必ずハウスの募金箱が置かれているのに気づかれた方も多いだろう。さっぽろハウスをサポートしてくれる企業、団体は50、医療機関140、加えて、数多くの個人サポーターがいる。
 ちなみに、マクドナルドハンバーガーのシンボルキャラクターの本国での正式名はドナルドではなく「ロナルド」。日本に進出するとき「ドナルドの方が日本人にはわかりやすい」と「ドナルド・マクドナルド」となり、ハウスの名前もそれが踏襲されている。

年間約550家族が利用

 さっぽろハウスには家族滞在用の部屋が10室ある。患者の家族、ひとり一日1,000円で一カ月まで利用できるが、延長も可能。共用のキッチン、冷蔵庫、ランドリー、子どものプレールーム、図書室を備える。ソファーのある共用のリビングルームにはテレビがあるが、個室にはテレビはない。最近はコロナ対策で利用を減らざるを得ないときもあったが、普段は年間約550家族が利用する。

そっとより添う、ボランティア

 きれいに整頓された室内、飾られたボランティアのパッチワーク作品や飾り物が心を和ませる。壁には寄付企業や個人の名前を刻んだプレートが貼られている。
 さっぽろハウスの責任者は、財団の職員であるハウスマネージャーの福原洋勝さんだ。福原さんは17年間の会社員生活を経て、求人誌にあった募集を見て2008年にこの仕事に就いた。考古学が好きで発掘のボランティアはたくさん経験したが、初めての分野だった。もう1人の財団職員、2人のパートタイムの計4人の専任職員に加え、20代から80代まで、208人の登録ボランティアがハウスの日常業務を回す。ボランティアは1人1日3時間。日中9人、夜間1人の一日計10人で業務を回す。1人のボランティアの活動は月に2日程度で無理がない。
 「利用される家族の方は不安な状態でやって来ます。ここに滞在して少しずつ緊張がほぐれていってもらえるとうれしいですね。共有エリアが接点となり、お互いに支え合うきっかけがあったのですが、今はコロナでなかなかそれができないのが残念です。家族を孤立させないように気をつけています」と語る。

 ボランティアの1人、伊藤真由美さんは始めて9年目のベテランだ。町内会の広報を見て、自分の子どもが中学生になるタイミングで始めた。PTAの役員もやっていたが、さらに社会とのつながりが欲しいと思い応募した。チェックインの手伝いや清掃を担当している。
 「家の仕事で家族からありがとうと言ってもらえることはあまりないけど、ここだとあるんですよね。ボランティア仲間のいろいろな人と出会えること、誰かの役に立てるということがすごくうれしい」と話す。
 ボランティアといっても、積極的に利用者と触れ合うことはあまりない。「たいへんな状況の中で来られているみなさん。軽々しく理解を示すことはできません。ただ使っていただく方が気持ちよくいられるように、それをいつも心がけています」という。

パッチワークの制作はボランティアの仕事。
パッチワークの制作はボランティアの仕事。
部屋のベッドカバーもパッチワーク。
部屋のベッドカバーもパッチワーク。

 加藤孝子さんはボランティア2年目。教員を定年退職後に始めた。ハウスの事務を手伝う。自分で役に立つのだろうか、と思い「飛び込むには勇気が必要だった」という。しかしボランティアの現場では、これまでの職場とは違った人との付き合いが生まれた。あまりすることのなかった自分の話も、年代も、境遇も、住んでいる場所も違う人たちと、交わすことができた。「自分が生かされていると感じる」と加藤さん。「教員時代、学校の授業で社会学習、地域学習、ボランティアのことなどもやりましたが、実際にやってみると、そのころはよくわかっていなかったと感じます」と話す。

 釧路、函館、苫小牧……。さっぽろハウスには道内各地から利用者が訪れる。このハウスができる前、付き添いの家族は民宿やホテル、あるいは、病院の待合室や控室に寝泊まりすることも多かったという。大きな経済的負担、疲れもたまるに違いない。ハウスは先着順ではなく、より遠方で、必要性の高いと判断した家族を優先的に受け入れるという。
 ハウスができる前、そして、今もこのようなハウスがない地域では、付き添いの家族はどんなに不便で、心細い日々を過ごしていることだろう。
 ハウスには利用者が思いを書き、誰もが見ることができる「つぶやきノート」がある。
 ノートの一節にこうあった。
 「さっぽろハウスが過去の色々な想いがつまって出来たハウスであることを忘れないで欲しいです。そして次の方につないでいって下さい。お願いします。ボランティアの皆さん、いつもありがとうございます。皆さんの温かいお気持ちが支えになっています」。

(文・写真:吉村卓也)

●ドナルド・マクドナルド・ハウス  さっぽろ
札幌市手稲区金山1条1丁目2−5
TEL  011-688-4533

ドナルド・マクドナルド・ハウス さっぽろ
クラウドファンディングのお知らせ!

付き添う家族においしい食事を届けたい

病気と闘う子どもと付き添いにがんばっている家族のみなさんを支援してみませんか?あなたの応援が、患者さん・家族の支えとなります!
(※クラウドファンディングとは、ネット上でやりたいことを発表し、賛同してくれる人たちから広く資金を集める仕組みです)

 ハウスから病院に通う付き添いの家族のみなさんは、ハウスのキッチンで食事を作り、ゆっくり休養し、またお子さんのところへ向かうという生活を繰り返しています。しかし、親一人の食事となると、必要最低限の調理や、コンビニ弁当、インスタント食品で済ませることも多く、長い入院生活を支えていく上で、体力・精神的にもとても不安な材料でもあります。
 今回のクラウドファンディングは、滞在する家族に対して「人が作った温かい食事、季節感が感じられるような食事や食材」を提供し、日々付き添いで疲れている家族の支えになれるような支援を行いたく、本プロジェクトを立ち上げました。ハウスの利用家族アンケートでも、食事提供の要望がたくさんあり、家族が今必要としている支援の1つでもあります。

寄付はコチラから

A-portクラウドファンディング

■ 目標支援額:300,000円
支援金額に応じて、食事サポート内容を検討し、家族をサポートいたします。
※目標額以上にご支援いただいた金額に関しては、さっぽろハウスへ寄付します。
■ リスクについて
目標金額に達しなかった場合も、プロジェクトは必ず実行しますが、支援できる家族数が減少いたします。
■ リターンについて(一律)
お礼のメッセージ、および、さっぽろハウスニュースレターにお名前を掲載

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ここからは特集に関連して会員の皆さんからよせられたコメントをご紹介します。

投稿テーマ
『社会参加、ってなんだろう?』
おっと、今回はなんか難しそうなテーマですね……。
社会参加、社会貢献?
「ワーク・ライフ・バランス」なんていう言葉も聞かれるようになってきました。
「仕事と生活の調和」と説明されるようですが、仕事上の責任もきちんと果たした上で、自分が暮らす社会や、家庭での役割に対する責任も果たしましょう、そういう時間も大事にしましょう、ということのようです。
広く言えば仕事も社会貢献活動のひとつかもしれませんが、我に返ってふと考えてみると、自分がやっている社会に貢献できる活動ってどんなことがあるのだろう?
ボランティア、町内会活動、地域の清掃、PTA、」まちづくり活動、募金活動……
社会とのつながりが「仕事」だけではどうも単調だし、視野も狭まりがち。社会とのつながりが増えれば、それだけ人生に発見も楽しみも増えるかも。みなさまの社会とのつながり、どんなものがあるでしょうか。どうぞお聞かせください。

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自分が社会貢献・社会参加できているのか、全く分かりませんし、全く自信がありません。
ちゃんと社会とつながれるよう、つながっていると言えるようにしたいなって思います。(ぴのこだっくさん)

例えばエコバッグを使うなど、身近なことでも社会貢献だと思います。(ひーたんゆうゆうさん)

町内会の付き合いくらい、それも昔ほどは深くないです。(のるんさん)

仕事しかないです。(kawaさん)

ご近所さんとの繋がりも社会との繋がりの1部だと思いました!(ちぇりんさん)

10年前に今の所に引っ越してきてから、子ども会に入るきっかけがなくなってしまい、隣人もいないため完全に町内との関わりが減ってしまいました…。今自分が社会とのつながりでできているものってなんだろう?と考えた時に、不用品の寄付だったり、環境への配慮を考えた行動(ゴミをへらす、など)ぐらいしかできていなくて、もう少し自分でできること探したいと思いました。熊本地震の時にボランティアを少しだけしたけれど…
(うさこさん)

地域の清掃活動実施しています(ヨシエさん)

退職して思うことは、やはり社会、人との関わりをもつことの大切さを感じます。社会参加はなんでもいいと思います。働くこと、ボランティア活動、趣味のコミュニティなど。私は新年度からカフェをオープンします。ここに居場所を作ってくれるひとができるこよを願って。(ちるちるみちるさん)

町内会活動(やまとん883さん)

自治会の役をくじ引きで当たってしまってやる事になりましたが町費を集めたり煩わしい事も多いですが仕事の関係で関西に来てまだ1年なのでこれまで交流のなかった方とも知り合いになったり地域の中で必要とされるよう日々奮闘する毎日です。住んでいる地域は毎年ゴミ掃除があって行かないと罰金もあるので面倒だけどみんなで掃除をして総会も出て意見を言い合うのも地域の中での小さなコミュニティで大切ですね。(KANTON$さん)

社会とのつながり、現代社会なら、SNSをうまく活用させていく事でさまざまな、活動が可能になると思います。(タレちゃんさん)

災害が多い日本なので、いざというとき隣近所のみなさんと顔見知りなることが大事だと思います!(まゆぞうさん)

社会参加???仕事だけの生活では交友関係も狭くなるし・・・。でも、人間関係構築は面倒。特に町内の人間とは関わりたくないかな。(サン太とアニさん)

専業主婦ですが、子供2人産んで育てること・スーパーで買い物して消費活動をすること・ゴミの分別を正しく行うこと、です。今の私にできる精一杯で社会とつながっているつもりです。(ニーナさん)

是非使わせて欲しい。(まこっさんさん)

地域ボランティアなど(ミヤトシさん)

学生時代のアルバイトも含めて、働く事も社会に参加している事だと思う。ボランティアや、選挙もそうかな。みんなが社会を作るように、少しでも関心を持つ事が社会に参加している事かもしれない。(まるさん)

特に肩肘をはらず隣近所との普通の関係を続けるのが大事と考えています。(オリジナルリリーさん)

普段の生活の中での普通のつながりが大事(チバタロウさん)

募金やPTA活動は参加してます(パンナさん)

仰々しく考えることが多いと思うが、そもそも生活しているだけで社会とのかかわりがあるので社会参加、なのでは。
少なくとも消費者であることは間違いない。自分は日々の生活の中でささやかな楽しみを見つけるのもまた大事にしている。(akikuroさん)

地元のJAで農作物を買うこと。小さなことですが、地元の特産品をよく知ることも、社会との繋がりです。(しずかさん)

地域とのつながりが大事(ヨシコさん)

献血(ronさん)

本かなんかで読んだけど、いろいろな分野で社会参加することにより高齢者は元気になるらしいよ
高齢者の社会参加を促す策を開発すること、また社会参加が高齢者本人. の健康や生きが出ることはいいことだと思う(サンダル博士さん)

道案内。(Malibuさん)

束縛です(水曜どうでしょうさん)

昔から募金活動に励んでいます。
募金の協力をお願いする経験があるからこそ自分も募金しようと思いますしその大切さを学びました。(このあーさん)

私にとっての社会参加は学校とバイトとボランティアです。社会という定義が曖昧ですが、個人的には人との繋がりから成り立っている関係だと思っています。人間は独りでは生きていけません。なので、どんな方でも社会参加していると思います。(茶々さん)

仕事以外での活動、たとえば趣味の集まりや音楽仲間とか、そういうつながりを持つことって楽しみも充実感も増えるし、
今後無理して働いたり仕事のための無理した付き合いとかはどんどんなくなっていくと思うので必要かなと想います。(マスタクさん)

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