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>HOME >特集一覧 >VOL172「留萌・田中青果の「やん衆にしん漬け」」
特集「留萌・田中青果の「やん衆にしん漬け」」の表紙の写真です

そこかしこにある大きな樽の上に、漬物石がドンと置かれている。創業時に海から拾ってきたものだそう。
そこかしこにある大きな樽の上に、漬物石がドンと置かれている。創業時に海から拾ってきたものだそう。

この漬物は生きている。
ニシン漬けは北海道の伝統食

 かつて北海道ではニシンが大量に獲れた。日本海に面する留萌も、もちろん例外ではない。

 留萌にある田中青果は、今はニシン漬けを始めとする漬物類が主力商品となっているが、元々八百屋と花屋だった。現社長は二代目の田中欽也さん。妻の美智子さんも「統括本部長」として、営業や商品の開発を担当する。

 昭和30年代前半まで、海を埋めるように押し寄せたニシンの大群は、ある時期を境にすっかり北海道の海から姿を消してしまった。2人が生まれた時代、もう海からニシンは消えていたが、ニシンの子、数の子の加工業は今でも留萌を代表する産業となっている。

八百屋から漬物へ

 欽也さんの父、常男さんは元々山形から北海道に行商に来ていたが、昭和33年に留萌で田中青果を創業した。ニシンはいなくなっていたが、高度成長期、商売はそれなりに繁盛した。妻の和子さんは増毛町出身。現在は田中青果の会長を務める和子さんの母は地元で「漬物名人」として知られていた。

 欽也さんは、その祖母の漬物を食べて育った。父は故人となったが、野菜を売るだけでなく、北海道の伝統の食文化を全国に広めたいと常々夢を語っていた。

 人口減、大型スーパーの台頭と、個人商店の八百屋を取り巻く環境は厳しくなっていった。余った野菜で漬物を作って、商品にしてみよう、と欽也さんの挑戦が始まる。

 最初は浅漬けをつくっていたが、次第に「北海道の漬物」、ニシン漬けに思いが傾いていった。ニシン漬けは家庭の漬物。正しいレシピはなく、どこの家庭でも思い思いの方法で、当たり前のように漬けていた。初冬にはダイコンを干す風景が家の軒先にも見られた。目指したのは、漬物名人の祖母の味である。

 「寒い、重い、地味。仕事としての漬物づくりのイメージはこんなものでしたね」と欽也さんは言う。「だからみんなやりたがらない。おのずとライバルは少ないだろうと思いました」と、今は笑いながら当時を振り返る。だが商品化への道はそれほど平坦なものではなかった。

色とりどりのピクルスは妻の美智子さんの担当。タマネギ、長イモ、トマト、豆、ジャガイモ、キノコ等、使う素材もさまざまだ。
色とりどりのピクルスは妻の美智子さんの担当。タマネギ、長イモ、トマト、豆、ジャガイモ、キノコ等、使う素材もさまざまだ。

漬物の話しかしない夫

 妻の美智子さんも留萌出身。銀行員として8年間働いた。結婚するまで漬物など漬けたこともなかったが、漬物は常に身近にあった。冬場、家の外に保管してある漬物を取ってくることをよくやらされた。木の樽に入れてあっても、冬場は表面が凍る。張った氷をトンカチで割って、シャリシャリした漬物を取り出して、丼に盛って食卓に出す。

 「そうやって一冬かけて食べてましたね」と美智子さん。その後、八百屋に嫁いだものの、まさか自分が漬物屋になるとは思いもよらなかったという。 

 「漬物の話しかしない夫」に毎日付き合わされ、「すっかり洗脳されました」と笑う。

 その後、野菜ソムリエの資格を取り、新商品としてピクルスの開発も担当するようになった。

自ら書いた「一」の字の前の田中欽也さんと、美智子さん。
自ら書いた「一」の字の前の田中欽也さんと、美智子さん。「一」の下には小さく「歩」の字が。「一歩一歩進む」を表しているという。商品名の「やん衆にしんづけ」の「やん衆」はニシンが大漁に獲れた時代に、漁場で働いていた季節労働者のことだ。

この食文化を未来へ

 ニシン漬けという北海道の伝統食を何とか全国に広めたいという父の思いを欽也さんは受け継いだ。だが、家庭で冬場に作っていたニシン漬けを、通年生産して全国発送できるまでになるには、長い試行錯誤が待っていた。

 ニシン漬けは発酵食品。ダイコン、キャベツ、ニンジン、身欠きニシンに米麹を加え、発酵させる。野菜も季節で状態が変わり、温度管理も微妙に変わる。温度が何より重要で、発酵をうまくコントロールするのに季節ごとの多くのデータが必要だったという。舌が覚えていた祖母のニシン漬けの味に近づけるため、データを数値化して蓄積し、商品として通年で流通できるようになるまで約15年間かかった。到着したら発酵が進み過ぎて袋がぱんぱんに膨らみ、返品の山、そんなことが何度もあったという。到着してから、1週間から10日で食べ切るのが一番おいしいように作る。

 「漬物を生き物とし扱います。樽のフタを開けて発酵の具合を確かめながら、漬物と対話する。チーズと似ているかもしれません」と欽也さんは語る。塩分が低くても保存食になるのは、低温と乳酸菌が守っているからだ。

 「『売っているニシン漬けはおいしくない』という考えを覆したい」と欽也さん。

 北海道の漬物、「ニシン漬け」の本当の味を全国の人に知ってもらうため、自ら道外の物産展にはひんぱんに出展する。対面販売が基本。説明を厭わない。

 商品を売るだけではない。田中青果は、毎年「ニシン漬け教室」を開いていて、その作り方を教えている。また、すぐに食べられる商品の他に「ニシン漬けキット」という材料と漬け樽のセットも販売している。

 自分の開発した商品は最後まで面倒を見るのが会社の方針。漬物のパッケージには欽也さんが自ら書いた筆文字が踊る。書道の経験はない。ピクルス担当の美智子さんは、ジャガイモ、キノコ、タマネギ、等の斬新な素材をピクルスにし瓶の中にディスプレーする。

 「漬物という食文化を絶やしたくない。この伝統を紡いでいくのも大事な仕事と思ってます」と欽也さんは語る。二人が漬物と対話する日々はこれからも続きそうだ。(文・写真:吉村卓也)

田中青果 留萌本店
(留萌市栄町2丁目3-21)
0164-42-0858
10:00~18:00
不定休
http://www.yanshu-tanaka.co.jp/

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『やっぱり漬け物でしょ!』

ここからは特集に関連して会員の皆さんからよせられたコメントをご紹介します。
面白かったコメント、私も同じ!と思ったコメントは、ぜひいいね!を押してください。

1ページ

塩分が高いので食べません。

玉屋さん

買う派 ちなみに両親は自分で漬ける派

ナンゴウヨンさん

漬物があればご飯2杯たべられます

よまたけさん

漬け物は、スーパーで買います。特に、キムチが好きです。

はなちゃん3さん

きゅうりとなすびのぬか漬けと
白菜の漬物は自分でします。今白菜の漬物を作っている途中ですが、葉っぱと芯の部分の塩分さが出てしまって日々調整しています。
キムチに挑戦したいと今は思っています。

つかじさん

買う派
好きなのは白いたくあんです。

めんばめいさん

買う派です!
頂いたりもします^^*
色々な味を楽しみたいです!

あさひこさん

夫が秋田出身なので、もっぱらいぶりがっこです。

ゆずむぎさん

お漬物・・・。もう何年も食べていません。。

ゲラさん

自分で漬ける派でなすの浅漬けがすきでよく作ります。

アイヨリブルーさん

買う派です
なすの漬物が大好きです。

みのりのあきさん

自分で漬ける派
キュウリの浅漬けが好きです。

シスカルメンさん

買う派
しば漬けか梅酢たくあんが好き

たぶえむたぶさん

やはり酢

いむさん

自慢になりますが、妻の漬物は絶品です。今日もキムチを夕食でいただきました。市販も美味しいけど家庭の味も良いですね。

ビビの父さん

2ページ

漬物は最近キムチにハマっています。

レイチェルさん

漬物は買う派です。キュウリのQちゃんや、キムチが大好きです。毎日欠かさず温かいご飯と一緒に食べています。

がっちゃんまんさん

基本的に買う派ですが、きゅうりを塩や醤油や唐辛子などの漬けダレに一晩漬ける簡単漬け物はたまに家で作っています。

ユウさん

つけたいけど買う派です。

ぽっちさん

沢庵で沢庵丼をよく作ってしまいます

pinevillageさん

キムチが大好きで。毎食キムチを食べてます

けいこまりさん

両方です。観光で行った場所でおいしそうな漬物を見つけて試食して美味しかったら必ず買います。

ハイジさん

両方です。旅先で試食しておいしかったら買っています。

かめちゃん」さん

きゅうりのキューちゃんが大好きです。

リキリキさん

半々です。自分で漬けたり、買ったり。でも、田舎なので貰う事も多いです。

まいこさん

買う派です。歯が悪いので、なるべく柔らかいたいぷのものを選んでいます。茄子の浅漬けなど。

まあくんさん

きゅうりの塩漬けが大好きです!売っているものも作ったものも美味しくてハズレがないところが良いです。各地のきゅうりや塩を使った塩漬けを食べてみたいです!

Rilyさん

いずし、たくわん、浅漬を買います。ぬか漬け、作りたいですね。

yayaさん

地元の守口漬が最高

チイチイ江森さん

お父さんがつけてくれた一夜付けが一番好き

ハチ公さん

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