新しい味との出会いがありました。「シケレベカレー」です。シケレベとはアイヌ語で、「キハダの実」のこと。このカレーを初めて口にした時、このシケレベの香りが何とも言えない爽やかな風味で、私はすぐに気に入りました。それから、時々デリバリー注文してはお昼に食べることが、外出自粛中の楽しみの一つになりました。
いつも笑顔で配達してくれる女性こそが、このシケレベカレーを作る川上容子さん(43)です。
「体に優しいカレーを作りたい」と、容子さんは自身のルーツであるアイヌの家庭に伝わるシケレベを、スパイスの一つに加えました。容子さんの実家では、シケレベをカボチャの煮物や甘露煮などに入れるなど、家庭料理で馴染みのあるものだったそうです。また、風邪をひいた時に煮汁に砂糖を入れて飲む「薬」としても用いていたそうです。殺菌・消炎作用があるとされるシケレベは、アイヌの人々が自然から学び得た健康を保つための知恵の一つでもありました。子どもの頃はあまり得意ではなかったという、シケレベの味。カレーのスパイスとして使ってみると、柑橘系の香りがたち、少し痺れるようなピリリとした辛味が、スープのおいしさを引き立てます。
シケレベは、ミカン科の植物で、北海道にも広く分布する落葉樹。木を切り倒す際にはみかんの香りが広がるのだそう。容子さんが持ってきて見せてくれた黒い実がシケレベを乾燥させたもの。山椒よりも大粒で、コショウにも似ています。
「そのまま食べてみてもいいですか?」と口に入れて噛んでみると……驚きました!
ミカンの皮をかじったような強い香り。清々しい香りが鼻にぬけていきます。そして、噛んでいくと次第に苦みが広がり、最後は舌がピリピリ痺れるような刺激が残ります。癖になるような、まさに和製スパイス。
容子さんは、シケレベに、カルダモンやシナモンなど、10種類のスパイスを合わせ、スープにはハーブや日高昆布なども使用。食材はそれぞれの産地や、オーガニックのものなど、一つひとつ丁寧に選びこだわっています。甘口のカレーは子どもでも食べやすいように、野菜は細かく刻んでトロトロに煮込んでいます。
このシケレベカレーを、デリバリーで販売するようになったのは昨年5月。新型コロナの感染拡大が収まらない中、自分が薬として飲んでいたシケレベで「みんなの体調が良くなってくれたらいいな」そんな想いをこめて、カレーを届けています。水曜日と金曜日のみ、デリバリーでの販売です。優しさいっぱいのシケレベカレーを、ぜひ一度味わってみて下さい。(※ご注文は090-5468-3811まで)
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