新型コロナウイルス感染拡大が、看護師の養成にも大きな影響を及ぼしています。
看護学校では休校や病院実習の中止が続き、来春に向けた看護師採用が遅れている医療機関も少なくありません。看護学生からは「病棟での実習がなく、看護師として働くことになるのが不安だ」などの声が上がっています。今回は、北海道で看護師を志す人の思いを聞きました。
「将来は助産師さんになりたい。子どもの虐待などのニュースをみて、妊娠期から母親の支援や心のケアをしていきたいと考えています」と夢を語ってくれた天使大学看護学科2年生の石川優愛さん(20)。
緊急事態宣言と共にスタートした大学生活。不安な気持ちも抱えています。
「入学時からオンライン授業が続き、初めて大学構内で授業を受けたのは8月でした。病院での実習は全てなくなり、入学以来、一度も医療の現場に立ち会えていません」
そんな学生達に考慮して、天使大学では急きょオンラインで代替となる実習を行いました。いったいオンラインで、どう実技を学ぶのか?私はオンライン実習の映像を拝見して、大変驚きました。
教室内に模擬病棟を作り、指導教員のみなさんが看護部長役、病棟課長、夜勤看護師、患者役となり、演技を交えながら学生に問いかけていきます。
「ここでの患者さんへの声かけ、何て伝える?」「器具の置く場所はどうする?」「患者さんの体位は?」など、リアリティをもって細かい問いかけが続きます。
ナースステーションでの報告や、患者のバイタル測定などの手順も、点滴をかける器具にカメラをつけてその様子をオンラインで共有していきます。試行錯誤をしている教育現場を目の当たりにしました。
「学生同士でやる演習とは全く違い、リアリティがあって緊張感のある経験ができました。オンラインで他の学生のやり方や考え方も共有できて、自分では気づかなかった視点に気付く事もできました」と看護学科2年生の渡部琴絵さん(20)はオンラインのメリットも感じたようです。
「けれど、体験不足はいなめない。専門の器具などを使っての練習は、家では技術練習もできず、イメージトレーニングにも限界はあります」と、コロナ禍で学ぶことの難しさも話してくれました。
看護学生にとって逆境ともいえる状況を天使大学の服部容子先生は冷静に見つめています。
「コロナ世代と呼ばれる学生達は、自分たちの経験が足りないと自覚しています。とはいえ、看護の質は落とせません。患者さんにどう接していけばいいのか、そこで求められている看護はどういうものか、実践で臨機応変に対応できる看護師になれるよう導いてあげなくては」
指導する先生方や学校も苦労と工夫を重ねていました。
コロナ禍の1年間を経験して、看護師になることに本当に不安はないか、あらためて尋ねてみました。
「不安はありますが、将来は終末期ケアに携わって、ガンや重い病気と向き合う患者さんの役に立ちたいという目標があるので、一生懸命学んでいきたいです」と渡部さん。
困難な状況の中でも、諦めずに学び続ける。二人の未来の看護師さん、心から応援しています。
森さやかの思うコト 学生の不安や将来への希望、先生方の苦労や工夫など、共感することが沢山ありました。コロナ世代と呼ばれる若者たち。体験や経験が不足していることが懸念され、指摘をうけることがあります。社会に出た時に、不安を感じないようにフォローする体制や、見守る視点が必要になってくると考えます。そういう温かい目を、今から養っていきたいと思いました。
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