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ネット上には動画のコンテンツが増えています。特に、TikTokなどに代表されるスマホで見られるショート動画は、自分の好みに従って次から次へと表示されてついつい見てしまい、気がつけばあっと言う間に1時間!人の注意を引くための刺激の強い動画ですから、さて見た後に何か残ったかというとほとんど何もなく、いったい何をやっていたんだろうという自己嫌悪に襲われます。
せっかく見るなら、もっと意味あるものを見たいと思いませんか。そんなときにおすすめしたいのが、朝日新聞デジタルが提供しているドキュメンタリー動画です。え?新聞社がドキュメンタリー番組?
そうなんです。デジタルの時代、これまでの新聞=文字、ラジオ=音声、テレビ=映像という図式はガラガラと崩れ去りました。世の中の出来事を伝えるというメディアの本来の立ち位置に立てば、伝える手段は何でもよいはずです。新聞社がドキュメンタリー動画を作って悪い訳はありません。
数々の作品がありますが、最近「これは見てよかった!」と思ったものをいくつかご紹介します。一つは「映像企画『LastDay』」というシリーズ。全国各地、「最後の日」を迎えるものを、そこに関わった人間にフォーカスして伝えます。例えば第一話は、半世紀以上続く山形県の小さな居酒屋の閉店の日。97歳で亡くなった先代の女将の後を継いだ息子さんが切り盛りしていましたが、ついに閉店の日です。常連客が集まり、女将の思い出話に花を咲かせます。いよいよ閉店の時間になり、最後の挨拶で号泣する息子さん。カメラがその姿を捉えます。その他、奈良県の町で親しまれていた映画館の閉館日、東京都杉並区で夫婦2人で40年間営んでいた銭湯の最後の営業日、仙台市の小さな遊園地で54年間走り続けたジェットコースターのラストラン、結成10年を前に解散を決めたお笑いコンビの最終ステージ……、といったストーリが並びます。どれも普通の人たちの、普通の生活の中でのそれぞれの区切り。どれもニュースで大きく取り上げられる社会現象ではありませんが、必ず訪れる「何かの最後」に密着した素敵なドキュメンタリーでした。
もう一つはちょっと硬派のドキュメント「漬物クライシス」。これは食品衛生法の改正で漬物への規制が強化され、これまでのように漬物が流通しにくくなるというテーマです。保存食であるはずの漬物になぜ厳しい規制がかかるようになったのか、本当に必要な規制なのか、編集委員の記者が掘り起こします。記事は8回の連載ですが、動画は約20分の1本。これを見れば、漬物を取り巻く現状とその問題点がクリアに分かります。
どちらの作品もしっかりと編集されていて、音声もクリア、BGMもあり、引き込まれてしまいます。引き込まれるのは冒頭にご紹介したショート動画も同じですが、見終わったあとの充実感が違います。ああ、いいものを見たな、学びがあったな、と思えるのがよいですね。
プレミアムプレス編集担当 吉村 卓也
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