朝日新聞が提供するデジタルコンテンツの中で、個人的にいちばんはまっているのが、「朝日新聞ポッドキャスト」(通称「朝ポキ」)です。
ポッドキャストという名前に馴染みのない方も多いと思うのですが、簡単に言えばこれはスマホやパソコンでいつでも聞けるラジオのようなものです。世界的にさまざまな番組があり、個人がやっている番組もたくさんあります。朝日新聞は日本のメディアの中ではいちばんポッドキャストに力を入れていて、ダントツ「ナンバーワン」です。
朝ポキの特徴は、記者が登場して、取材のこぼれ話や雑談をするのですが、そこに記者の人間性や個性が如実に現れることです。これはいくら文字として出された記事に署名がついていても、絶対にわからない「匂い」のようなもので、これがめちゃくちゃ楽しい。「話し言葉」というのはこれほど力強く、思いが伝わるものなのかと驚きます。
「ラジオと何が違うの?」と聞かれることもありますが、私は「全く違う」と答えます。いちばんの違いはラジオやテレビ番組のような予定調和がないこと。作り物感がないというか、番組の長さもまちまち、言い間違いもたくさんあり、言葉につまったり、喋り手が考えこんでしまうようなこともあります。記者同士が話している番組が多いのですが、そのやり取りが絶妙で刺激的です。
新しいところでは、最近7回のシリーズが終わった「わした島うちなー」。沖繩の本土復帰50年の特集番組ですが、沖繩出身の記者、安田桂子さんが50周年の日をめがけて実家に帰り、そこでの親子の会話(親子げんかも含む!)や、出会った人たちと復帰の意味について考えている音声ルポです。復帰後に生まれた安田記者にとって、本人も悩みながら「復帰」の意味を自問しながら取材しているのがわかり、文字だけでは伝わらない現地の空気感が漂ってきます。
私がいちばん衝撃的だったのは、「アフガニスタン、沈黙の裏事情」。現地で井戸を作る活動を行っていた医師の中村哲さんが襲撃され殺害された事件で、取材した乗京真知記者がその背景に迫っていくシリーズ。紙面にも掲載されていましたが、記者本人の話で聞くと、理解度が断然深まり、聴いていて興奮しました。
MCとして番組の中核を担っているのが記者の神田大介さんです。元イラン特派員だったそうですが、適当に受け流すことは絶対にせず、軽妙な語り口の中にも鋭く記者が記者に切り込む言葉のやりとりはエキサイティング。
朝ポキにはいろいなジャンルがあり、千本以上の番組がいつでも聴ける状態になっています。なんと、これが全部無料です。「ながら聴き」できるのもポイントです。私は長距離の運転や家事など、耳が空いているときはほぼ必ず聴いています。
記者の個性が見え、新聞でその記者の署名を見つけたりすると急に親近感がわきます。
今回の特集の記者との座談会でも記者の思いが近いものになったと思います。朝ポキは記者と読者をつなぐ、すばらしい試みだと思っています。朝日新聞音声チームの活躍にますます期待します。
▶ 朝日新聞ポッドキャスト(朝ポキ)