今回はスポーツ担当の記者さんの登場です。スポーツの取材って、どのように行われるのでしょう。スポーツ取材のベテランで、東京本社スポーツ部札幌駐在の畑中謙一郎記者にお話を聞きました。
まず恒例の質問となりますが、なぜ新聞記者を志したのですか?
畑中:(以下、畑:)青臭いかもしれませんが、いろいろな世界を見てみたいと思ったからです。新卒で新聞社を受けたのですが落ちて、銀行に就職しましたが諦めきれず、2度目の挑戦で入社しました。
スポーツの担当は希望したのですか?
畑:最初からスポーツというわけではないんです。入社後は地方支局で経験を積み、その後経済部に在籍しました。当時の上司から、「君は将来どうしたいんだ」みたいなことを聞かれて、銀行が嫌で辞めたので経済はもういいです、と好きなスポーツの担当を希望しました。
スポーツは昔から好きだったのですか。
畑:はい、スポーツを観るのは大好きでしたね。
自分でも何かスポーツを?
畑:いえ、子どものころにスピードスケートをやったくらいです。それよりもスポーツを観るのがとにかく好きだったんですよ。
これまでにはどんなスポーツを担当してきたのでしょうか。
畑:スポーツ担当になって初めて担当したのが、プロ野球の巨人です。長嶋茂雄さんがダイエーの王貞治監督と日本一を争った2000年ですね
初めて現場で観るプロ野球はいかがでしたか。
畑:最初は、ああ、テレビで観る人たちがいる、みたいな感じでしたけど、選手たちの身体能力の高さには驚きました。まさにスーパーアスリートたちですね。
野球の試合取材はどんな段取りなのでしょう?
畑:試合開始の4時間前くらいには球場入りします。午後6時開始なら2時頃には行きますが、選手たちはもう来ていて、アップを始めています。チームの練習の中で、選手や監督に話を聞きます。ゲームが始まったら、とにかく早く原稿を書いて送ることに全力を尽くします。
監督や選手はけっこう話してくれるものですか。
畑:長嶋監督はメディアにはとても協力的な方でした。何か超越的な雰囲気がありましたね。選手の対応は人それぞれ。清原和博選手はこわもてですが、ボソッとつぶやく一言が面白い。松井秀喜選手は4番らしく、堂々と対応してくれました。
高校野球は担当しないのですか。
畑:原則、各都道府県にいる若い記者が担当します。ただ、各地方大会の決勝は、スポーツ部の記者も必ず取材することになっています。
野球取材の経験が長いので、チームの実力もだいたいわかるものですか。
畑:甲子園に行ってどのくらいまで勝ち進めそうか、だいたい予想はつきますね。
野球以外の担当は何でしょう?
畑:ゴルフはもう20年くらい担当しています。
ゴルフは海外遠征も多いですよね。
畑:日本選手が出場するツアーを取材するために、しょっちゅうアメリカには行ってました。延べで言えば2年間くらいは取材で滞在していると思います。タイガー・ウッズ、宮里藍、上田桃子、石川遼、松山英樹……。錚々たるスターたちが活躍する時代に担当することができたのは幸運でした。
北海道での担当は?
畑:もちろん、プロ野球の北海道日本ハムファイターズとサッカーの北海道コンサドーレ札幌は重点的に取材しています。
前シーズン日ハムの成績は奮いませんでした。
畑:2年連続の最下位でした。新庄 剛志監督にとっては勝負のシーズンです。オフに大型補強を進めたので、今季はAクラス入りに期待しています。
新球場はいかがでしょう?
畑:アメリカの大リーグの球場をいくつも見ていますが、それに引けを取らないすばらしい球場だと思います。センター方向ガラス張りのデザインもすばらしいし、天然芝の香りもよいです。通っていて毎日が楽しくなる球場です。
今季のコンサドーレはどうでしょうか。
畑:複数の主力選手が抜け、序盤は苦戦が続いています。でも、若い選手たちが経験を積めば、シーズン後半から盛り返してくると思います。
トップアスリートたちと接していて何か感じることはありますか。
畑:まず、基礎体力が全く違うということです。陸上競技をやれば、日本代表になれそうな素質を持った選手が何人もいます。でも身体能力に任せていても結果が出る時代ではなく、どういう体の動かし方をするかとか、運動生理学のこととか、ものすごく研究して、みんなとても真面目です。
最近印象に残ったアスリートは?
畑:ジャンプの葛西紀明選手。ワールドカップの成績は奮いませんでしたが、もうスターでしたね。世界の国の選手たちがみんな彼と一緒に写真を撮りたがったり、サインを求めたりしていました。正にスーパーアスリートという印象を持ちました。
畑中謙一郎 記者
余市町出身、恵庭市で育つ。1992年朝日新聞社入社。長崎支局(現総局)、筑豊支局、西部本社経済部を経て2000年東京スポーツ部(当時は運動部)、大阪本社スポーツ部(広島駐在)、東京本社スポーツ部(デスクを含む)。現在東京本社スポーツ部札幌駐在。
今回は函館支局長の野田記者です。長かった警察担当記者から、現場を離れて北海道ではデスク業務を担当。でもやはり現場に戻りたいということで、函館支局長となり、日々取材現場に出ています。読む
今回は北海道内の経済を担当する記者さんです。東京経済部という部署を兼務していて、北海道だけでなく、全国の中での北海道の立ち位置を考えながら全国に発信しています。読む
今回は事件や事故、警察、裁判などを担当する記者さんです。かつてなら「事件記者」と聞いたほうがピンと来るかも。いったいどんな取材活動を行っているのでしょうか。読む
今回は道東・根室の支局長であり、科学ジャーナリストとして海の生き物や環境問題についても精力的に執筆活動を行っている記者さんを紹介します。そんな方がなぜ根室に? 聞いてみました。読む
今回は記者は記者でも写真記者、フォトグラファーのご紹介です。文章ではなく写真、いや写真だけでなく、写真も文章も動画も有りです。読む
今回は朝日新聞に連載中の「心臓病と走る」の筆者、網走支局長の神村正史記者です。冠動脈硬化症という持病を抱えながら、フルマラソンやサロマ湖の100キロウルトラマラソンを走ります。読む
今回は「編集委員」という肩書きの方に話を聞きました。新聞社の編集委員ってどんな仕事をする人なんでしょう。読む
今回は札幌を離れ、帯広で勤務する記者に話を聞きました。地方にいる新聞記者の日常ってどんなものなのでしょう。読む
2022年4月23日、知床の海で、信じられないような観光船の事故が起きてから1年以上が過ぎました。事故発生当初から知床に何度も通い、多くの記事を書いたのが佐野楓記者です。知床観光船事故に向き合った1年間はどんなものだったのか。佐野記者に聞きました。読む
統一地方選を控えた昨年末と今年3月、「地方自治クライシス」という連載企画がありました。選挙に関する連載としては、政治家だけでなく市井の人にフォーカスする読み物として斬新な切り口で、読み応えがありました。そもそもこの企画はどのように始まったのですか?読む
紋別を目指した旅人、到着したのは?(2023年3月6日 朝日新聞北海道版道内面 19ページ)
北海道を訪れたある旅行者が、バスでオホーツクの「紋別ターミナル」を目指したが、たどり着いたのは十勝・広尾町の太平洋側読む