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>HOME >「常設」に会いに行く >「木田金次郎美術館」(2022/9/20)

VOL18:木田金次郎美術館

《大火直後の岩内港》 (1954)
《大火直後の岩内港》 (1954)

地元に集められた作品群

 中学の国語の教科書に載っていた『生れ出づる悩み』が、有島武郎を読んだ初めだった。それは彼の小説の一部で、漁師が絵を描いていて、それを有島に見せに来るという内容だった。都会に出て描きたいというその青年に対して、いや田舎の自然の中でこそ描く価値があると説く有島に促されて彼は漁師を続けながら画業を極めることを誓うのであった。

 さて、その漁師が木田金次郎であり、その作品を集めたのが当該美術館である。この成り立ちはよくある有名画家の記念館とはやや異なる。金次郎を有名にしたのは有島の小説であるのは確かだが、彼の画業は通常の画家のように成立したのではない。彼は美術関係の学校は出ておらず独学である。漁師が独学で画家になるというと一般的には風変わりなことのように思われるだろうが、実は金次郎の生まれ育った岩内ではそれほど変わった事ではなかったらしい。彼よりも上の世代でも、現在でも、町内には彼のような独学の画家はたくさんいるという。町内で知られた画家だけでも25名ほどであるというから確かに多いと言えるだろう。

 だから、昭和29年の岩内大火によって金次郎の作品の大半が消失しても、焼け残った2割の町の中にはそれなりに彼の作品を持つ家があった。

 そしてその死から約30年後に夫人所有の30点余りが町に寄贈され、60点ほどが寄託されて美術館建設が始まった。その後も作品は順調に増え、今は約175点が収蔵、寄託、寄贈されている。

 大正12年の有島の死後、漁師を辞めて専業の画家になってからの金次郎は札幌や東京の画家や支援者との交流にも積極的であり、有島の小説のモデルというイメージとは離れた暮らしだった。中退したとは言え、大正時代に上京して京北中学に通った彼はおそらく大正モダンのハイカラな青年でもあっただろうから、それもまた彼の本質に添った生活だったのではないだろうか。

木田金次郎美術館
岩内町万代51-3 TEL:0135-63-2221
休館・開館時間:月曜日(但し、祝日にあたる場合はその翌日)※展示品入れ替えのため臨時休館12月1日~3月31日。午前10時〜午後6時(入館は5時半まで)
北海道中央バス岩内ターミナルから徒歩1分。
車なら札幌から高速利用で約1時間半。


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