VOL.34 登場する地域:旭川市
滝川育ちの私にとって、子供の頃「旭山動物園」は近くて遠い、贅沢な場所だった。
平成の初め、生徒の引率で来た旭山動物園は、ただ広いだけで閑散とした場所だった。まるで高村光太郎の詩「ぼろぼろな駝鳥(だちょう)」のよう。
十数年後に旭山動物園を訪れ、目を疑った。動物たちの生き生きした生態。いくら見ていても飽きない。これが「行動展示」なのか、と感心したものだ。
1994年のエキノコックス禍の中、旭山動物園は閉園も視野に入れた危機に見舞われた。当時副園長だった小菅氏は「大切なのは、不遇の時の準備」と振り返る。伝説の「14枚のスケッチ」をもとに、理想の動物園づくりが始まった。その結果、2004年には東京・上野動物園に次ぐ全国2位の入園者数を記録した。
その舞台裏を語った本書『〈旭山動物園〉革命』。未曾有の危機の中で、小菅氏はじめ動物園スタッフが何を考えたのか。どんなビジョンを持ち、実現にこぎつけたか。その種明かしが示されている。
「命を感じる動物園」旭山の成功は、帯広や釧路、そして札幌・円山動物園にも好影響を与えた。僕らには良き先例に学んで世界を変える力がある。本書はそれを教えてくれる。
北海道に関係する文学作品や書籍を紹介しているこのコーナー。誌面では道内の高校や高専の先生達に評者をお願いしていますが、ウェブ版ではAFC会員の皆様から、あなたの「地域を知る一冊」を募ります。
今お住まいの地域や、生まれ育った街、旅行で訪れたあの場所…。あなたが読んだことのある、北海道内の地域に関係する、あなたのおすすめの「一冊」をぜひご紹介ください。
北海道の地域が舞台となったり、北海道に関係した本であれば、小説、ノンフィクション等、ジャンルは問いません。以下の応募フォームよりお送りください。
地域を知る一冊 Vol.13
八木 圭一(宝島社文庫)
登場する地域:陸幌町(架空の町、通称「オーロラ町」)
■この記事の執筆:田口耕平(北海道帯広柏葉高等学校教諭)
地域を知る一冊 Vol.7
杉山 滋郎(北海道大学図書刊行会)
登場する地域:札幌市西区
■この記事の執筆:菅原淳(北海道小樽桜陽高等学校国語科教諭)