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>HOME >映画と握手 >VOL34「ガチ☆ボーイ(2008年)」

映画と握手

VOL.34

ガチ☆ボーイ(2008年)

監督:小泉徳宏 ロケ地:札幌、小樽、深川ほか

 ロケ地にこだわる私が言うのも可笑しいが、映画の魅力は俳優によるところも大きい。「ガチ☆ボーイ」は、主演した佐藤隆太の直球の演技が楽しめる1本だ。

 私の佐藤隆太ファン歴は長い。何しろ高校生の頃、彼が俳優デビューした宮本亜門演出の舞台「BOYS TIME ボーイズ・タイム~つよく正しくたくましく!!」(1999年12月~2000年2月初演)をテレビで見て以来なのだ。明朗快活な好青年役を得意とし、無邪気な笑顔が持ち味の佐藤にとって、本作の主人公、学生プロレスに青春を賭ける五十嵐良一はまさにハマり役! 共演した向井理、仲里依紗ら今も活躍する俳優たちの若々しい姿も目を引く。

 物語は、「北海道学院大学」のプロレス研究会に、入部希望の3年生・五十嵐(佐藤)が現れるシーンから始まる。前部長が引退して以来、試合は盛り上がらず、人気も低迷していた研究会のキャプテン・奥寺(向井)やマネージャーの朝岡(サエコ)らは喜んで受け入れたものの、彼はポラロイドカメラを片時も離さず、どんなことでもメモする、ちょっと変わった学生だった。

 東京の劇団・モダンスイマーズが2004年に上演した「五十嵐伝~五十嵐ハ燃エテイルカ~」を映画化したそうだが、調べた限り、原作舞台は北海道と関わりないようだ。ということは、あえてロケ地をここに選んだはずだが、牧場や農家など北海道ロケにありがちなモチーフは出てこない。その分、緑豊かな北海道大学構内をはじめ、小樽都通り商店街など、地元住民には馴染み深い風景がふんだんに登場。撮影は全編、2007年7~8月、真夏の北海道で行われたそうだが、いわゆる〝観光映画〟とは違う、大学生・五十嵐の日常をきちんと描こうという意気込みが感じられる。

 ちなみに、北大のほか、北海道文教大学、札幌国際大学、札幌大学、小樽商科大学、北海道工業大学(現・北海道科学大学)、酪農学園、とわの森三愛高校もロケに協力。どのシーンにどの学校が出てくるか、探してみるのも面白い。また、五十嵐の実家となった「深川湯」もかつて実在した銭湯だ。古めかしい佇まいが、銭湯の主人・泉谷しげる演じるぶっきらぼうな父親像と相まって、ストーリーに味わいを添えていた。

 練習に人一倍熱心な五十嵐だったが、初試合で段取りを忘れ、研究会ではタブーとされたガチンコ勝負をして仲間を驚かせる。ところが、駆け付けた妹(仲)を通して明かされた彼の秘密は、さらに驚くべきものだった。彼がなぜ、突然学生プロレスにのめり込んだのか。その理由が分かった時、彼を取り巻く景色の見え方はガラリと変わってくる。一日一日、一瞬一瞬を前向きに生きようともがく五十嵐の姿は、閉そく感の漂う日々を乗り切るヒントかもしれない。

 蛇足だが、本作を私が好きになった理由がもうひとつ。五十嵐がドロップキックの練習に励む場面で流れる曲は、ウルフルズの「暴れだす」。実は、先に触れた「BOYS TIME」は、ウルフルズのヒットナンバーを歌って踊るミュージカルだった! 力強くて温かい、トータス松本のあの歌声に包まれ、学生たちが夕焼け色に染まる風景は、この青春コメディの中でひときわ輝いて見えた。

イラスト&文 新目七恵(あらため・ななえ) ライター、ZINE「映画と握手」発行人。スポ根モノが苦手な私が、縁遠いプロレスの魅力を知ったのは、宮藤官九郎脚本×長瀬智也主演のテレビドラマ「俺の家の話」(2021年1~3月放送)でした。両コンビの過去作(池袋ウエストゲートパーク)で重要な役を演じた佐藤隆太もスペシャルゲストとして登場し、ファンの胸を熱くさせてくれました!

映画と握手バックナンバー

映画と握手 Vol.34NEW!

ガチ☆ボーイ(2008年)

監督:小泉徳宏 
ロケ地:札幌、小樽、深川ほか

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.33

おろしや国酔夢譚(1992年)

監督:佐藤純彌 
ロケ地:奥尻

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.32

満月 MR.MOONLIGHT(1991年)

監督:大森一樹
ロケ地:札幌、小樽

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.31

きみはいい子(2015年)

監督:呉美保 
ロケ地:小樽

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.30

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監督:石井輝男 
ロケ地:網走

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.29

ガメラ 2 レギオン襲来(1996年)

監督:金子修介
ロケ地:札幌

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.28

アイヌモシリ(2020年)

監督:福永壮志 
ロケ地:釧路・阿寒

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.27

ハルフウェイ(2009年)

監督:北川悦吏子
ロケ地:小樽、石狩

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.26

ジャコ萬と鉄(1949年)

監督:谷口千吉 
ロケ地:増毛

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.25

南極料理人(2009年)

監督:沖田修一
ロケ地:網走

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.24

駅 STATION(1981年)

監督:降旗康男 
ロケ地:小樽、札幌、増毛ほか

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.23

喜びも悲しみも幾歳月(1957年)

監督:木下恵介
ロケ地:石狩、小樽

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.22

田んぼdeミュージカル(2003年)

監督:伊藤好一
ロケ地:むかわ町穂別

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.21

魚影の群れ(1983年) 

監督:相米慎二
ロケ地:増毛

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.20

シムソンズ(2006年) 

監督:佐藤祐市
ロケ地:北見市常呂

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.19

羊と鋼の森(2018年)

監督:橋本光二郎 
ロケ地:旭川

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.18

君よ憤怒の河を渉れ(1976年) 

監督:佐藤純彌 
ロケ地:浦河、様似

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.17

挽歌(1957年) 

監督:五所平之助
ロケ地:釧路、札幌

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.16

モルエラニの霧の中(2019年)

監督:坪川拓史 
ロケ地:室蘭

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.15

森と湖のまつり(1958年) 

監督:内田吐夢 
ロケ地:標茶

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.14

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話(2018年) 

監督:前田哲 
ロケ地:札幌、美瑛

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.13

海炭市叙景(2010年) 

監督:熊切和嘉 
ロケ地:函館

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.12

Love Letter(1995年) 

監督:岩井俊二 
ロケ地:小樽

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.11

氷点(1966年)

監督:山本薩夫 
ロケ地:旭川

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.10

女ひとり大地を行く(1953年)

監督:亀井文夫 
ロケ地:夕張、釧路

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.9

探偵はBARにいる(2011年)

監督:橋本一

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.8

コタンの口笛(1959年)

監督:成瀬巳喜男

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.7

結婚 佐藤・名取御両家篇(1993年)

監督:恩地日出夫

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.6

社長忍法帖 (1965年)

監督:松林宗恵

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.5

点と線(1958年)

監督:小林恒夫

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.4

ギターを持った渡り鳥(1959年)

監督:斎藤武市

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.3

銀の匙 Silver Spoon (2014年) 

監督:吉田恵輔

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.2

幸福の黄色いハンカチ (1977年) 

監督:山田洋次

■イラスト&文:新目七恵

映画と握手 Vol.1

男はつらいよ 寅次郎忘れな草 (1973年) 

監督:山田洋次

■イラスト&文:新目七恵