ある年の1月、主人公の竹内美砂は、東京の自宅から流氷研究所のある紋別を訪れ、父親の友人に紹介された当所研究員である紙谷誠吾に流氷見学を依頼した。
余りにも有名な歌集『一握の砂』。啄木生前唯一の歌集であり、故郷渋民村だけでなく、北海道全土、函館から札幌・小樽、そして釧路と新聞記者の生活をしつつ詠んだ数々の名歌が刻まれている。
今春、釧路を訪れた。夕暮れ時、高校時代の通学路をたどった。幣舞橋を渡り、出世坂を上る。幣舞公園から街を見下ろす。
「北海道で御座います。網走とか申す所だそうで、大変遠くて不便な所だそうです。」残暑厳しい8月の午後4時、上野発青森行の汽車。主人公の男性「自分」に行き先を訊かれた子連れの女性が答えた。