このWebサイトの全ての機能を利用するためにはJavaScriptを有効にする必要があります。
>HOME >「常設」に会いに行く >「相原求一朗美術館(中札内)」

VOL15:相原求一朗美術館(中札内)

《早暁 十勝岳》 1991〜1992
《早暁 十勝岳》 1991〜1992

十勝の自然の中、札幌軟石でできた美術館

中札内村にある六花亭アートヴィレッジで、もっともよくそのコンセプトを表すのは相原求一朗美術館ではないかと私は思う。
 1927年創業で1995年まで現役であった帯広湯という銭湯を移築改装した建物は札幌軟石製のあまり見たことのない洋風建築の湯屋である。これを見て銭湯だと即座に分かる人はどれほどいるだろう。敷地はあまり掘り返されたことがない落ち葉の堆積なのか、または堆肥を入れて非常によく耕されたのかフカフカで、こんな贅沢な土に建つ美術館は初めてだ。
 求一朗は埼玉の人であるが、北の荒野をよく描いた。春の雪解けの畑、荒波の寄せる切り立つ海辺、雄渾な山々。それは兵として過酷な若い日を過ごした「赤い夕日の満州」への思いからだと言うから、これも一種の戦争画というべきなのだろうか。不本意に異国に連れていかれ酷い生活を送ることになった日々、場所を忘れられない、似た場所を繰り返し描きたいのはなぜなのか。香月泰男は満州以上に過酷な日々を過ごしたシベリアを生涯描いた。
 酷くても喜びに溢れていても、拭い去れない思いという意味では同じことなのかもしれない。具体的な細部は語れないような兵士の日々。その中で斃(たお)れて失われた友。その語りたくても語れない思いをはき出せるのは求一朗の場合はよく似た北の風景だった。
 今回の戦争で、ウクライナの女性がロシア兵に近づいて「このヒマワリの種をあげるからポケットに入れておきなさい。ウクライナの土地で死んだあなたの体からヒマワリが咲くように」と言ったユーチューブの画像が忘れられない。同じようなことを求一朗も満州で中国人から言われたのかもしれない。

六花亭アートヴィレッジ中札内美術村 相原求一朗美術館

中札内村栄東5線 tel. 0155-68-3003
JR帯広駅からバス(十勝バス大樹・広尾行き、約60分)で中札内美術村停留所下車、徒歩1分/車では帯広空港から約15分、JR帯広駅から約35分
開館:4月下旬~10月上旬の土日祝日、夏休み期間のみ開館。その他は休館。10:00~15:00
※コロナの状況により営業時間等が変わる可能性があります。
詳しくはお問い合わせください。


「常設」に会いに行く バックナンバー

Vol.16NEW!

苫小牧市美術博物館

苫小牧市美術博物館はその名の通り、博物館と美術館の両方の機能を持つ。もっとも英語では同じくミュージアムであるが。…

Vol.15

相原求一朗美術館(中札内)

中札内村にある六花亭アートヴィレッジで、もっともよくそのコンセプトを表すのは相原求一朗美術館ではないかと私は思う。…

Vol.14

第一洋食店(苫小牧)

 2019年に苫小牧市美術博物館で『特別展 第一洋食店の100年と苫小牧』が開催された。…

Vol.13

国立アイヌ民族博物館(ウポポイ内)

5月15日までウポポイで開催されているテーマ展「白老の衣服文化」はウポポイの収蔵品を中心に各地の館からも貸借しての意欲的…

Vol.12

芸術の森美術館

 札幌芸術の森美術館ではこの3月13日まで『きみのみかた みんなのみかた』と題した展覧会を開催していた。これは収蔵品の「…

Vol.11

市立小樽美術館

文学館と隣り合った美術館で出会う小樽の作家たち…

Vol.10

小樽芸術村 ステンドグラス美術館

 「ステンドグラス美術館」はニトリが運営する小樽芸術村の中にある。旧高橋倉庫と旧荒田商会の歴史的建造物を再生して、小樽の…

Vol.9

本郷新記念札幌彫刻美術館

宮の森の本郷新記念彫刻美術館への道を登っていくと、途中の松の木の下でブロンズ製の乙女がギターを奏でていた。…

Vol.8

北海道立近代美術館

 道立近代美術館は、大きな企画を持ってくる所と一般的には思われている。ゴッホ展などにはたった2、3ヶ月の会期中に何十万人…

Vol.7

札幌芸術の森野外美術館 気持ちよい屋外空間で出会う作品群

 札幌芸術の森野外美術館はとても気持ちの良い美術館だ。野外美術館はどこもそうかもしれない。…

Vol.6

北海道立帯広美術館 自然との対話

 広い広いどこまでも続く土地。私たちが帯広と聞いてイメージするのはそういう風景である。…

Vol.5

中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館 ブロンズと友情の作家

中原悌二郎(1888〜1921)といえば、東京新宿中村屋を連想せざるを得ないだろう。…

Vol.4

北海道立函館美術館 西洋文化の窓口、東洋美術の精華

 北海道立函館美術館は、道内では最も早く開けた土地柄からして古くからの文化があり、特に書に関するコレクションが充実してい…

Vol.3

小川原脩記念美術館 失意と回復の狭間で

小川原脩(おがわらしゅう)(1911〜2002)は北海道以外の地域で意外に知られる画家である。…

Vol.2

北海道立旭川美術館 北の木工を支える人々

美術館の存立理由は世界中から借りてくる名品を展示する企画展にではなく、その館が所有する所蔵品にある。…

Vol.1

北海道立三岸好太郎美術館

三岸好太郎の代表作は?と副館長・五十嵐聡美氏に問うと「のんびり貝」と「飛ぶ蝶」だという返事が返ってきた。…

先頭へ戻る