このWebサイトの全ての機能を利用するためにはJavaScriptを有効にする必要があります。
>HOME >「常設」に会いに行く >「札幌芸術の森野外美術館 気持ちよい屋外空間で出会う作品群」(2021/10/18)

VOL7:札幌芸術の森野外美術館 気持ちよい屋外空間で出会う作品群


佐藤忠良《足投げる女》 1958年
佐藤忠良《足投げる女》 1958年

 札幌芸術の森野外美術館はとても気持ちの良い美術館だ。野外美術館はどこもそうかもしれない。こう言っては身もふたもないが、うねうねと広がる空間そのものが気持ちよく、刺激的なのだ。しかし仮に彫刻がなく、その空

間だけがあったとしたらと考えると、やはり彫刻のために用意された空間なのだと分かる。その答えはたぶん、ここで一番有名な作品·砂澤ビッキの「四つの風」だろう。朽ちるのに任せ、今はもう1本しか残っていない風である。人の営みとはそういうものなのだ。

 同じようで、反対方向からの作品が環境造形Qによる「北斗まんだら」であろう。これは最初は150センチくらいの苗木だったが30年たった今は巨大な陰を落とし存在を主張している。石と木の造形が、人の営みと自然との相克を、または調和を哲学しているようにも思える。

 しかしそんな思索的な作品ばかりではなく、例えば福田繁雄の「椅子になって休もう」は、見学の子供たちが必ず一番前の人の膝に腰掛け、人々の列の間に入って遊ぶという。それは正しい鑑賞である。なぜなら、そうなってほしいという作者の気持ちが伝わるからである。お陰でこすれて色がはげるので、何回も塗装し直さなければならない。

 坂坦道の「風の中の道化」の横で同じポーズをとる子もいる。

 そして、ついこの5月に90才で亡くなったダニ·カラヴァンを見る。環境彫刻という言葉もまだ浸透しない時期から、自然の中での造形、または自然を意味づける造形を求め続け、本館の構想段階にも寄与した。

 佐藤忠良の「足なげる女」などは、青銅製なのに、なんと気楽でリラックスしているのだろう。この空間にあるからこその像であり、駅前広場とかにはおけないような気がする。

 それにしてもこの素晴らしい美術館で終日、あまり人の姿を見かけないのは残念なことである。いっそ駐車場も含めて無料公開して、市民の散歩道にしたらどうだろう。彫刻の間に見え隠れする10月の素晴らしい紅葉を、より多くの方がご覧下さるのではないか。

札幌芸術の森野外美術館
料金:大人(高校生以上)700円、65才以上560円、中学生以下無料 開館:4月29日から11月3日 9:45~17:00(入館は閉館30分前まで)、6~8月は17:30まで
休館:11月4日から4月28日 ※野外美術館内の佐藤忠良記念子どもアトリエのみ開館(9:45~15:30、毎週月曜日休館(月曜が祝日・振替休日の場合はその翌平日)、)。1~3月は、かんじきを履いて冬の野外彫刻を鑑賞いただける「芸森かんじきウォーク」を実施予定。(新型コロナウイルス感染拡大の状況、および積雪量によって期間は前後します。詳細はHPで確認を)
問合せ:札幌芸術の森 TEL:011-592-5111
ダニ・カラヴァン《隠された庭への道》 (部分)1992~1999年
ダニ・カラヴァン《隠された庭への道》 (部分)1992~1999年

全文を読むにはログインしてください。


「常設」に会いに行く バックナンバー

「常設」に会いに行く vol.23 2023年2月20日

荒井工芸館

白老で創作木彫り作家・荒井修二の作品に出会う読む

「常設」に会いに行く vol.22 2023年1月16日

有島記念館

美術館の個性は常設コレクションにあり!北海道内の美術館の「常設展」を訪ねます。読む

「常設」に会いに行く vol.21 2022年12月19日

北海道立釧路芸術館

釧路芸術館は写真のコレクションが充実している。読む

「常設」に会いに行く vol.20 2022年11月21日

モエレ沼公園

大地に刻んだイサム・ノグチの夢読む

「常設」に会いに行く vol.19 2022年10月17日

北一ヴェネツィア美術館

北一ヴェネツィア美術館は、株式会社北一硝子が建てたヴェネツィア風の建物に本場ヴェネツィアのガラスを招いて作った美術館である。読む

「常設」に会いに行く vol.18 2022年9月20日

木田金次郎美術館

中学の国語の教科書に載っていた『生れ出づる悩み』が、有島武郎を読んだ初めだった。読む

「常設」に会いに行く vol.17 2022年8月15日

ニトリの小樽芸術村に4月に加わったアールヌーヴォーの館

この春に小樽で開館したばかりの西洋美術館にはステンドグラス、アールヌーヴォーのガラス、近代のブロンズ彫刻などの他に家具がある。読む

「常設」に会いに行く vol.16 2022年7月19日

苫小牧市美術博物館

苫小牧市美術博物館はその名の通り、博物館と美術館の両方の機能を持つ。もっとも英語では同じくミュージアムであるが。読む

「常設」に会いに行く vol.15 2022年6月20日

相原求一朗美術館(中札内)

中札内村にある六花亭アートヴィレッジで、もっともよくそのコンセプトを表すのは相原求一朗美術館ではないかと私は思う。読む

「常設」に会いに行く vol.14 2022年5月16日

第一洋食店(苫小牧)

 2019年に苫小牧市美術博物館で『特別展 第一洋食店の100年と苫小牧』が開催された。読む

「常設」に会いに行く vol.13 2022年4月18日

国立アイヌ民族博物館(ウポポイ内)

5月15日までウポポイで開催されているテーマ展「白老の衣服文化」はウポポイの収蔵品を中心に各地の館からも貸借しての意欲的な展示である。読む

「常設」に会いに行く vol.12 2022年3月22日

芸術の森美術館

 札幌芸術の森美術館ではこの3月13日まで『きみのみかた みんなのみかた』と題した展覧会を開催していた。これは収蔵品の「みかた」について一つの視点を提示し、鑑賞の幅を広げようという企画である。読む

「常設」に会いに行く vol.11 2022年2月21日

市立小樽美術館

文学館と隣り合った美術館で出会う小樽の作家たち読む

「常設」に会いに行く vol.10 2022年1月17日

小樽芸術村 ステンドグラス美術館

 「ステンドグラス美術館」はニトリが運営する小樽芸術村の中にある。旧高橋倉庫と旧荒田商会の歴史的建造物を再生して、小樽の古い町並みを保存する一助ともなっている。読む

「常設」に会いに行く vol.9 2021年12月20日

本郷新記念札幌彫刻美術館

宮の森の本郷新記念彫刻美術館への道を登っていくと、途中の松の木の下でブロンズ製の乙女がギターを奏でていた。読む

「常設」に会いに行く vol.8 2021年11月16日

北海道立近代美術館

 道立近代美術館は、大きな企画を持ってくる所と一般的には思われている。ゴッホ展などにはたった2、3ヶ月の会期中に何十万人も入る。しかし実は5000点以上の収蔵品を持つ大きな美術館でもある。読む

「常設」に会いに行く vol.7 2021年10月18日

札幌芸術の森野外美術館 気持ちよい屋外空間で出会う作品群

 札幌芸術の森野外美術館はとても気持ちの良い美術館だ。野外美術館はどこもそうかもしれない。読む

「常設」に会いに行く vol.6 2021年9月21日

北海道立帯広美術館 自然との対話

 広い広いどこまでも続く土地。私たちが帯広と聞いてイメージするのはそういう風景である。読む

「常設」に会いに行く vol.5 2021年8月16日

中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館 ブロンズと友情の作家

中原悌二郎(1888〜1921)といえば、東京新宿中村屋を連想せざるを得ないだろう。読む

「常設」に会いに行く vol.4 2021年7月19日

北海道立函館美術館 西洋文化の窓口、東洋美術の精華

 北海道立函館美術館は、道内では最も早く開けた土地柄からして古くからの文化があり、特に書に関するコレクションが充実している。読む

「常設」に会いに行く vol.3 2021年6月21日

小川原脩記念美術館 失意と回復の狭間で

小川原脩(おがわらしゅう)(1911〜2002)は北海道以外の地域で意外に知られる画家である。読む

「常設」に会いに行く vol.2 2021年5月17日

北海道立旭川美術館 北の木工を支える人々

美術館の存立理由は世界中から借りてくる名品を展示する企画展にではなく、その館が所有する所蔵品にある。読む

「常設」に会いに行く vol.1 2021年4月19日

北海道立三岸好太郎美術館

三岸好太郎の代表作は?と副館長・五十嵐聡美氏に問うと「のんびり貝」と「飛ぶ蝶」だという返事が返ってきた。読む

先頭へ戻る