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VOL5:中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館 ブロンズと友情の作家

ブロンズと友情の作家

中原悌二郎 《若きカフカス人》1919年
中原悌二郎 《若きカフカス人》1919年
舟越桂 《点の中の距離》2003年
舟越桂 《点の中の距離》2003年


 中原悌二郎(1888〜1921)といえば、東京新宿中村屋を連想せざるを得ないだろう。彼の代表作とされる「若きカフカス人」のモデルであるアジアを放浪していたロシア人"ニンツァ"に会ったのはこの中村屋であり、悌二郎の人生にとって重要な友や師との出会いも中村屋を経由しなければ、ありえなかったからである。
 明治21年に生まれて、大正10年に早逝した悌二郎が到達したブロンズ彫刻の技術は当時の日本人青年としては驚異的に確かな水準に達した。若い詩人や芸術家が集った新宿中村屋での日々。世界中とつながっているような気分にさせてくれる自由でモダンな空気の中で彼は新しい造形とは何かを追求したのだろう。この記念彫刻美術館にあるのと同じ「若きカフカス人」が中村屋サロン美術館にもある。一つの型から複数の作品を鋳造できるブロンズの良いところである。
 ただし、たとえ中原悌二郎がすぐれた彫刻家であっても、個人記念館に恵まれるためにはそれなりの仕掛けが必要であった。2人の彫刻家、加藤顕清(かとうけんせい)と平櫛田中(ひらくしでんちゅう)に助けられた作品の収集があって初めて記念館構想が動いた。そして、元陸軍将校達の親睦サロン的な建物だった旭川の「偕行社」という重要文化財の改装を得て、彼の全遺作ブロンズ12作の居場所が定まった。豊かな若い日の友情と没後の敬愛を得て、実は幸運な作家であったと言えるだろう。
 旭川の街には買い物公園があり、そこにはさまざまな彫刻が置かれている。ここは彫刻を愛する街なのだ。だから、公園などの野外に置かれた作品を毎年掃除するボランティア活動も盛んである。ボランティアの方々は旭川市内の彫刻の所在を調査し、地図も作ってしまった。
 この美術館でも50年前から中原悌二郎賞を設けて、若手の発掘に尽力してきた。木内克(きのうちよし)、舟越保武から三沢厚彦までの錚々たる作家がこれを受賞している。この美術館の2階には歴代の受賞作が入れ替えながら展示されている。旭川駅の東口にある分館・彫刻美術館ステーションギャラリーにもその一部がある。受賞作以外の砂澤ビッキなどの作品を含めて、熱心に収蔵されてきた優品揃いだ。


旭川市春光5条7丁目 tel:0166-46-6277
9:00〜17:00(入館は16:30まで)。休館:毎週月曜(月曜が祝日の場合は翌日)、年末年始(12月30日から1月4日)6月から9月の間は無休。一般450円、高校生300円、中学生以下無料。詳細はお問い合わせ下さい。


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