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VOL13:国立アイヌ民族博物館(ウポポイ内)

《ルウンペ》 江戸時代末期のもの
《ルウンペ》 江戸時代末期のもの


 5月15日までウポポイで開催されているテーマ展「白老の衣服文化」はウポポイの収蔵品を中心に各地の館からも貸借しての意欲的な展示である。白老地域の衣服はルウンペと言って紐状の細長い布と刺繍との模様が背や裾などにあるもので、例えば日高地方のカパラミプ(切り抜いた白布と刺繍による背一面の模様のあるもの)とは異なる。

 地域によってこのように様々な衣服があるのだが、それは家族に伝わる文様であった。しかし結婚すると実家と婚家の意匠を組み合わせて新しい模様を作ったりするので、必ずしも固定的なものではない。結婚に限らず女性たちは個人の新しい意匠の創出を楽しみ、頭をひねる。下地布にも工夫がこらされる。

 古い衣服を見ると高価な日本の生地が下地として用いられていることもある。明治期に木村フジヱ氏が着用した写真が残る例は彼女の祖母が江戸時代末に製作したとされる。そこに用いられているのは九州から山陰にかけて生産された精緻な絵絣2種で、この衣服に使われた分だけでも現在なら100万円くらいである。男性が着用した蝦夷錦と同様にこれほどのものは富の蓄積を表し、だから何代にも渡って丁寧に着つないできたのだろう。

 アイヌの社会は平等だとも言われるが、知力にすぐれた家系、特殊技能を持つ者などはある訳で、秀でた財力を有する家もある。和人社会から輸入される古手にも優れた意匠や品質のものが混じっていたのは秋田の西馬音内の踊り衣装に用いられた古手を見ても分かることで、現代の古着をイメージしてはならない。また絣は明治までは高価で、貧農の娘が着るものではなく、最低でも自作農以上の家庭でのみ可能な手間暇のかかる技術なのである。

 町場の庶民が用いるとしてもその場合は中流以上の家庭である。大正期に至っても例えば、新婚の柳宗悦が妻が掃除の時に着ていた紺絣の美しさに惹かれたように、柳家のような上流家庭の娘は着ないが、町医者の娘で東京音楽学校の生徒だった兼子夫人なら持っていたような着物である。

 このルウンペにしても紺絣の美しさをより効果的に見せるためのあっさりとした意匠であったように思う。

国立アイヌ民族博物館 ウポポイ(民族共生象徴空間)内
白老町若草町2丁目3
tel. 0144-82-3914
平日 9:00〜17:00 土日祝日 9:00〜18:00
閉園日 / 月曜日 年末年始(12月29日〜1月3日) ※月が祝日または休日の場合は翌日以降の平日
※コロナの状況により、入館予約や開館時間等が変更になる場合があります。詳しくはお問い合わせください。


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