本連載では、紙の新聞と紙でないもの、つまりデジタルな新聞について色々と思うところを書いてきました。今回はその最終回となります。
この記事を読んでいる皆様は、果たして紙で読んでいるでしょうか、それともデジタルで読んでいるでしょうか。同じものを読んでいるのですが、両者に違いを感じますか?書かれた文字は同じなはずです。内容も同じです。紙とデジタルでその受け取り方が違うとすれば、それは一体何なのでしょう?
紙は形があり触ることもできますが、デジタルはそれができません。だからといって、その違いが記事の理解にどう違いをもたらすのか、私にもよくわかりません。
毎朝、新聞受けにコトリと新聞が入る音を聞いたり、新聞を開くとインクの匂いがして朝を感じる、というような身体的経験は確かに懐かしい。
やはり紙が良い、と言う声も多く聞きました。目が悪くなったから、老眼が進んだから、自由に文字が拡大できるデジタルが良い、と言う声もあります。所詮それは好みの問題ですから、紙とデジタルの対決に話を持っていっても、あまり意味のあることには思えません。
そうこうしているうちに、連載中にもいろいろなことが起きました。100年以上の歴史を持つ週刊朝日が休刊となりました。同業他社ではありますが、北海道新聞の夕刊もなくなってしまいました。これまであったものがなくなるのは寂しいですが、反対に、デジタルの世界では新しいメディアが次々と誕生しています。メディア業界では紙の発行を止め、デジタルのみに切り替えるところも増えているのが現状です。郵便で届く請求書も「デジタルに切り換えましょう」と毎回言われる時代です。多分この流れは変わることはないでしょう。
なぜ「新聞」を読むのか。ここでかっこつきで「新聞」と書いたのは「新聞」という営みについて言いたかったからで、それは紙でもデジタルでも関係ありません。
ネットやSNSで、様々な情報が、玉石混交で人の目に触れるようになりました。極論は人の注意を引きやすく、事実に基づかなくても人を「論破」する発言がもてはやされたり、それがあたかも真実のように取られることも少なくありません。そんな危うい刺激に囲まれていると、脳みその中が不健康になっていく気がしてなりません。
なぜ私は「新聞」を読むのでしょう。それは意識して「知的健康」を保ちたいと思っているからです。気をつけていないと知らず知らずに偏食になっていくように、自分の意見に合わないものは排除し都合の良いものだけを聞いていたら、筋力が落ちるように「脳力」も退化するでしょう。頭も健康でありたいものです。
紙であろうがデジタルであろうが、「新聞」が担うジャーナリズムの役割は、おそらく変わることはないでしょう。記者の労力に裏打ちされた、きちんと取材された記事、それはジャンクフードが溢れる中で、料理人が手間ひまかけて作った料理のように、きっと体に良い影響を及ぼすに違いありません。
買い物は投票行動だと言われます。体によいものはお金を払ってちゃんと食べたい。ニュースも同じです。自分の頭で考えられる知的健康を保つため、私は「新聞」の営みに1票を投じます。どんな形でそれが届けられるにせよ、これからも揺るぎなく「新聞」を続けていって欲しいと切に願いながら、この連載を終えることにします。
プレミアムプレス編集担当 吉村 卓也
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