今回は朝日新聞に連載中の「心臓病と走る」の筆者、網走支局長の神村正史記者です。冠動脈硬化症という持病を抱えながら、フルマラソンやサロマ湖の100キロウルトラマラソンを走ります。インタビューしたのは、神村さんも参加した8月27日の北海道マラソンの翌日でした。疲れているのでは、と心配したのですが……。
昨日フルマラソンを走ったのですよね?普通に歩いてますね。
神村:(以下、神)はい。なんともありませんよ。全く普通です。
昔からランニングをやっていたのですか。
神:いいえ。中学時代に陸上部に所属していましたが一度もレギュラーになれず、というくらいで、そのあとは特に。狭心症の発作をおこしてから、医者に有酸素運動を勧められて始めたのがきっかけです。最初は50メートルも走れなかったのが、1年でフルマラソンに出られるようになりました。
ドクターから激しい運動には注意するよう指導されていると聞きましたが……。
神:はい、ですから激しい運動にならないように走ってます。ペースを上げません。2013年に冠動脈の狭さくで倒れ、今もその治療を続けていますので。
最初の100キロマラソンの後は、立てないくらい脚にダメージがありましたが、心肺には負担をかけないようにしていました。
普段はフルマラソンを3時間40分台後半くらいで走ると聞きました。けっこう速くないですか?
神:昨日の北海道マラソンは5時間11分でした。暑かったですからね。そういうときは無理しないんです。絶対ペースを上げません。
はぁ。そういうものなんですね。それから、神村さんは読売新聞からの転職なんですね。
神:北海道に行きたくて。読売新聞にいたら北海道への転勤がなさそうだったので転職しました。
転職後、最初の勤務地が札幌だったんですね。
神:夢が叶いました。入社の面接で、「なんで北海道に行きたいの」と聞かれたので、「カラフトマスが上がってくるような地域を取材テーマにしたい」と答えたんです。
カラフトマス、ですか?希望が具体的ですね。
神:魚が好きなんですよ。特にサケ科が好きですね。子どものころ、関西でアマゴというサケ科の魚に触れたのがきっかけです。外遊びが好きで、生態系に興味を持つようになりました。魚は表情が豊かでたまりませんよ。
魚に表情があるんですか!?
神:あるんですよ!潜水取材もするんですが、こっちが危害を加えないと分かると魚もタコもカニもニコニコして寄って来ますよ。反対にヤスやモリを持っていると、ピリピリした表情になってます。釣りもするんですが、釣り上げられた魚は「しまった!」という顔をしてますよ。
神:自然を見ていると飽きないんです。転勤希望は網走、釧路、根室しか書いたことがありません。海や山のある環境の中に身を置いていたいですね。
デスクという管理職もされていましたね。
神:宮崎と東京でデスクをしてました。やっぱり自分の好きなところに取材に行けないというのは辛いですね。これからはずっと一記者としてやっていきたいと思っています。
連載の中には骨折の話も出てきました。
神:そうなんです。昨年11月、支局の植木の剪定(せんてい)をしていて脚立から転落して骨折し、しばらく入院しました。痛みはまだあるんですが、6月のサロマ湖100キロマラソンにも出場することができました。
心臓病の話にしろ、骨折の話にしろ、自分の身の回りに起こったことを記事にしようというのは誰の発案なのでしょう。
神:自分の考えで始めました。こんな心臓でも走れるんだ、奇跡ではないんだ、と。有酸素運動でどう病気が回復するのか、そんな情報がほとんど無くて、それなら自分で記録を残したら人の役にも立つだろうと思いました。骨折のときも同じです。けがで運動を諦める人もいると思うので、参考になるかなと。
読者からの反響も多いですか?
神:ありましたね。読んでいてくれた人がいて、走っている最中に声をかけられたこともあります。こんな風に読者とつながれるのは初めての経験です。
走り続けるのはランナーズハイ、なのでしょうか?
神:人によって違うと思うのですが、私の場合は走っていると感情が高ぶって抑えられなくなることがあります。カッコつけてると思われるかもしれませんが、それは「ありがとう」なんです。妻を含め、周りの人に対する感謝の念。それが溢れてきて涙がボロボロ流れます。不思議なものです。
次の出場予定は?
神:新潟県佐渡島を一周する208キロの大会があるので、9月はそれに出場する予定です。
208キロ! がんばってください!
神村正史(かみむらまさふみ) 記者 1967年神戸市生まれ。読売新聞を経て2000年に朝日新聞に入社。札幌、福岡、根室、札幌、宮崎総局デスク、東京文化くらし報道部デスク、札幌、根室での勤務を経て、現在網走支局長。「心臓病と走る」を連載中。
連載「心臓病と走る」はこちらから
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