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十勝川温泉は十勝平野の中にこつぜんと現れる温泉地だ。「温泉地」という言葉からイメージされるような山や渓谷というものはない。帯広の市街から車で20分程で来れることもあって、気軽に利用できる。定山渓温泉が札幌の奥座敷と言われている感覚に近いかもしれない。
そして、十勝川温泉といえば何といっても「モール温泉」だろう。モール温泉の名前はドイツ語で「湿原」を意味する「モール」に由来する。ドイツのバーデン・バーデンにある温泉が有名なのでドイツ語が使われたようだ。日本でも最近「モール温泉」を名乗るところが増えてきたが、元祖はここ、十勝川温泉だ。
モールは「泥炭・亜炭」と言われ、石炭になる前の植物の堆積物。このあたりは数万年前には湿原で、そこに生えていた植物が堆積した層を、水が通って温泉として湧き出てくる。一般的な温泉のように鉱物が溶け込んでいるのではなく、植物性の「弱アルカリ性単純泉」であることが大きな特徴だ。色は茶色で、昔々の植物の名残がふわふわと漂っていたりする。音更町十勝川温泉観光協会の事務局次長、窪浩政さんに話を聞く。
「日が当たると藻が発生します。つまり、微生物が繁殖する、生き物が生きられる温泉なんですね」。
この温泉が見つかったのは1900年ごろ。冬も凍っていない場所があり、掘ってみたら40度くらいのお湯が出てきたのが始まりらしい。地元の人が沸かして使っていたという。
十勝川温泉がいちばん栄えたのは昭和50年代くらい。小豆が豊作のときは特に賑わったといい、年間約72万人の入込客数があった。そこからだんだんと利用者は減り、2016年には40万人まで下がったが、その翌年に45万人に回復し、50万人を目標にと思っていたところにコロナ禍が来た。年間の入込客数は約半分に減ったがそれでも「道内の温泉地としてはかなりましな方です」と窪さん。
効能は、免疫力増加、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、疲労回復、など。そしてチーズ磨きにも相性がよいのは、特集でご案内の通り。
※1月29日〜2月20日には温泉街近くの十勝が丘公園で、冬のイベント「彩凛華」が開催される予定だ。
(写真右・提供:十勝川温泉観光協会)
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