AFC アサヒファミリークラブ

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自由に生きる、キャラクターたち

工房アルティスタ 永谷久也さん



ジンギスカンのジンくん

 札幌市の中心部、商業施設の地下に通じる階段に、30人ほどが列を作って並んでいた。辛抱強く待っているのは「ジンギスカンのジンくん」。札幌の工房アルティスタが世に出した、いわゆる「ゆるキャラ」である。

 白い毛に覆われた体、黄色い顔に赤いほっぺ、真ん丸の黒い目。頭にはジンギスカン鍋をかぶっていて、鍋の上には野菜がのっている。そのキャラクターと一緒に写真を撮れるのだ。

 店の奥から「アテンド」と呼ばれる付き添いの人に伴われてジンくんが登場した。突然の登場に周りの買い物客がざわめく。「あ、ジンくん!」と、知名度は高いようだ。自然にジンくんの周りには人だかりができ、体に触れたり、スマホをかざして写真を撮ったり、ただいっしょについて歩いたり。

 ジン君が所定の位置についた。撮影が始まる。

 「は〜い、いいですか〜、撮りま〜す!はい、生ラム!」とアナウンスが入る。

 掛け声は「チーズ」ではなくて「生ラム」なのだ。

 ジンくんと並んでポーズを決める人たちは、みんな本当に満足そうだ。

 ちょっと離れた壁際、ジンくんグッズが並ぶ特設売り場の陰から、じっとその様子を見ている男性がいる。工房アルティスタの代表、永谷久也さんだ。たまに会場に顔を出して、ジンくんの様子を見る。


写真撮影に忙しいジンくんを遠くから見守る永谷さん

「ほらね、こんな風にね、みんな笑顔になるんですよね」

 と永谷さんもにこにこしながら言う。

 ジンくんが誕生して、2018年3月でまる7年が経った。

 ジンくんの「産みの親」は北海道出身のイラストレーター、はしあさこさんだ。

 「こんなのどうでしょう?」という、本人からの売り込みが最初の出会いだった。

 「おもしろそう」と、はしさんとは初対面だった永谷さんが商品化を引き受けた。

 ジンくんの年齢は1歳未満、好きな食べ物はふりかけごはんや塩おにぎり、基本的にベジタリアンで、毛は防火耐熱性、工房アルティスタに住み込み中、という設定は作者が考える。永谷さんが、あれこれと要望することはない。作者の考えるまま、自由にやってもらっている。 「キャラクターを産むのも育てるのもクリエーターである作家さん。会社はグッズ製作のパートナー」というのが永谷さんの考えだ。


撮った写真はSNSにアップされることが多い。全国のファン達が瞬時に見て、楽しみを共有する。

 永谷さんは大学を卒業し、チェーン店の本屋で働いていた。全国的にはベストセラーでない本でも、売り場やポップを工夫することでとたんに売り上げが伸びる。それがとても面白く、物を売ることにやりがいを感じたきっかけだった。

 ある日、「ポストカードに」出会う。店にデザイナーが作ったポストカードを並べてみると、これが実によく売れる。本という完成された商品を売ることに力を使っていたが、「自分たちで作ったものを自分たちで売れるんだ」と、新しい世界が開けた。世の中には面白いものを作る人がいっぱいいる、と感じた。

 10年ほど勤めた後独立し、工房アルティスタを設立。いろいろなキャラクターを世に出した。

 その中でも「テレビ父さん」はジンくんと並んで人気がある。

 札幌の大通公園にあるテレビ塔が赤と緑に塗り替えられ、その原色に近い色合いが世間では決して高い評価を得なかったころ、それを逆手に取るように、緑の展望台部分を腹巻きにした、真っ赤な顔でいかにもさえないこのお父さんキャラクターが登場し、話題を呼んだ。今もテレビ塔の「非公式キャラクター」として根強い人気を誇る。これも永谷さんが「おもしろそう」と思ったキャラクター。テレビ塔のおみやげ売り場に売り込みに行って採用されたのがきっかけだった。


工房アルティスタのオフィス。多くのキャラクターグッズがここで作られている。この横に「購買部」があり、グッズを購入できる。

 2006年からクリスマスカードのコンテストを主催している。さまざまな人たちが応募し、クリエーターと出会い、発掘する場所となっている。

 札幌の二条市場近く、観光客でにぎわうエリアからはちょっと外れたところにある本社オフィス内、「購買部」と呼ぶ売店には、アルティスタのキャラクターのファンたちが訪れる。店の奥が事務所兼作業スペース。手作業で商品を作っているのがよく見える。

 「パン工場のはしっこで、できたパンを売っているイメージ。だから購買部」、と永谷さんは言う。

 と、突然、事務所の奥からキャラクターが店に出てきたりしてお客さんと触れ合う。

 実は登場は突然ではない。

 ツイッターなどのSNSを利用し、キャラクターの出没場所はあらかじめ案内されている。いちばんの人気者、ジンくんのフォロワーは約34,000人だ。

 SNSを見て、ジンくんに会いに行く。撮った写真はツイートされ、ジンくんを取り巻くコミュニティーはさらに盛り上がる。東京でのイベントは札幌の約10倍の人が集まり、ジンくんと会って、ジンギスカンも食べられるパーティーも人気だ。

 アルティスタでは、頼まれてキャラクターを作ることはない。

 自分たちが面白いと思うものを作る、感性の合うクリエーターたちと仕事をする、それが何より楽しい、と永谷さんは話す。

 アルティスタのキャラクターたちは、ブログを書いたり、ツイッターでつぶやいたり、それぞれがのびのびと自由に行動しているように見える。どこかの公式キャラクターになることもなく、気兼ねなく、好きなことを好きなようにやっている。そんな「生き方」を見て人々が笑顔になる。そんな世界がSNSの中で活気を帯びている。

(文・写真:吉村卓也)


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