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VOL.69 登場する地域:知床
高校に在職し、国語の授業を行ったり、図書館の担当になったりしていたころにずっと「ぜひとも高校2年生以上の多くの人に読んでほしいなあ」と思っていた一編がありました。とても“重い”一編です。それが「ひかりごけ」です。
特に、後半の「戯曲」をじっくり読んでほしいのです。その上で、読後に「冒頭の「ハマナス」「ハマナシ」のこと、どうしてわざわざ書いたのか?」「ラストをどう思ったか?」「どうして、あのようなラストにしたのだろう?!」「船長が見てほしいのはいったい何なのだろう?」「西川を美形にしたり船長の顔つきを変えたりしたのはなぜ?」「検事たちが光の輪を見ることができないのはどうして?!」。
そして、何よりも「この一編のタイトルに「ひかりごけ」を選んだのは何故なのだろう?発光するものは他にもあるのに……」などといったことを、“一緒に語り合ってみたい、ほしい”と思ってしまうのです。
(ただ、この作品は“重い”ので、語り合う相手は選ぶべきです。)「ひかりごけ」は、決してグロテスクでもカニバリズムでもありません。ただただ、人間が生きていくという難題、苦悩、悲哀を物語っていると私は思っています。
北海道ならではの冬の空・冬の海がひたすらに思い浮かんでしまう、苦難を描いた、悲しくも真剣な作品です。読むたびに私は、真摯に生きていかなければと背筋を正します。
札幌国際大学人文学部准教授 大村勅夫
※評者の肩書きは執筆当時のものです
「シゲチャンって、誰だ!?」 「……の、ランドって、なんだ!?」 シゲチャンランドを知らない人は、まずそう思うだろう。読む
主人公は、博士号を経歴に持つ女性警察官である。刑事の現場捜索とはいかなるものか学び、北海道警察の組織体制も絡めながら、容疑者死亡の未解決事件(=コールドケース)の真相を追っていく。読む
猫みたいな生徒が増えたな、と思う。お弁当はひとりで食べ、友人たちと群れることはしない。ステイホームと黙食を乗り越え、ひとりでいることの心地よさを得たのかもしれない。読む
「室蘭港が奥深く廣く入り込んだその太平洋への湾口に大黒島が栓をしてゐる。雪は北海道の全土を蔽ふて、地面から雲までの厚さで、横に降りまくった。」読む
『遠い地平』(1983年刊行)は、9編の短編で構成された自伝的連作小説だ。老境を迎えた筆者が、現在と過去を行きつ戻りつしながら、室蘭、札幌、樺太、満州、東京を舞台とした若き日の波瀾万丈の生き様を回想している。読む
1つの失敗をきっかけに不登校になった有人は、憧れの叔父の強引な勧めにより、北海道の照羽尻島の高校に通うこととなる。読む
そらちむらのだいぼうけん(作:かたやまじゅんいち 絵:しまざきふうか)
「絵本は子どもが読む本」「ひらがなや言葉を覚えるために読んだ」「展開が急だが、その隙間を想像して楽しむもの」。高校生に「絵本」の印象を聞くと、おおよそこのような答えが返ってきた。読む
河﨑秋子が『ともぐい』で直木賞を受賞した。私が河﨑と初めて出会ったのは、2013年桜木紫乃の直木賞受賞祝賀会が札幌で開催されたときである。読む
高校に在職し、国語の授業を行ったり、図書館の担当になったりしていたころにずっと「ぜひとも高校2年生以上の多くの人に読んでほしいなあ」と思っていた一編がありました。読む
本書は、現在も道東地方に住む著者が、大学卒業後に専業のハンターとして生活を始め、アメリカのハンター養成施設への留学を経て、ヒグマやエゾシカを獲る日々を描いたノンフィクションである。読む
開墾のはじめは豚とひとつ鍋 六花亭の銘菓『ひとつ鍋』の由来となった句だから知っている人も多いと思う。帯広開拓の苦労を伝える句である。読む
書は1999年から2004年までJR北海道の車内誌に連載された内容を書籍化したもの。筆者自らの人生を書き綴ったエッセー集。読む
1990年、私は函館の高校に赴任した。その同じ年に佐藤泰志は自殺した。インターネットもない時代、その第一報は地元の新聞からだったが、そのときまで彼の名前さえ知らなかった。読む
佐々木譲は夕張出身の直木賞作家。彼は多くの道警シリーズ作品を発表しているが、『雪に撃つ』もその中の一つ。主な舞台は雪まつり開催を翌日に控えた札幌である。読む
遠くなだれる灰光と/貨物列車のふるひのなかで/わたくしは湧きあがるかなしさを/きれぎれ青い神話に変へて/開拓紀念の楡の広場に/力いっぱい撒いたけれども/小鳥はそれを啄まなかった読む
帯広市在住の歌人・時田則雄は、身のまわりの物事にふれて体が感じとることを、きれいごとから遠く離れた言葉にしようとする。読む
松浦夏子は東京生まれの20歳。彼女は突然「修道院に入る」と宣言した。「我儘娘」と形容される彼女は美貌の持ち主ゆえ、言い寄る男たちが数多くいる読む
淡路島の貧農の家に生まれた高田屋嘉兵衛は、生来の反骨心から島を出、兵庫の廻船問屋の船員を経て独立し、巨大な船を入手して蝦夷地と兵庫とを結ぶ商いを手がけるようになる。読む
そのまっくろなしぶきをあげて/わたくしの胸をおどろかし/わたくしの上着をずたずたに裂き/すべてのはかないのぞみを洗ひ/それら巨大な波の壁や/沸きたつ瀝青と鉛のなかに/やりどころのないさびしさをとれ読む
北方領土の架空の孤島が舞台のフィクション。時は2022年、島にはレアアースの漂砂鉱床があり、採掘、製造するために設立された、日本、ロシア、中国の合弁会社の日本人が事件に巻き込まれる。読む
大正15年5月、十勝岳が大噴火を起こし、その火砕流は巨大な泥流となり、10キロ離れた上富良野町の畑や開拓集落を飲みこんだ。読む
ある年の1月、主人公の竹内美砂は、東京の自宅から流氷研究所のある紋別を訪れ、父親の友人に紹介された当所研究員である紙谷誠吾に流氷見学を依頼した。読む
弁当屋さんのおもてなし ほかほかごはんと北海鮭かま(喜多みどり)
恋人の裏切りに遭い、失意のまま転勤先の札幌に移り住んだ25歳のOL、小鹿千春。読む
『道ありき』は教科書の墨塗りの場面から語り出される。皇国思想を教え込まれてきた彼女は何の疑いもなく軍国主義教育を実践してきた。読む
余りにも有名な歌集『一握の砂』。啄木生前唯一の歌集であり、故郷渋民村だけでなく、北海道全土、函館から札幌・小樽、そして釧路と新聞記者の生活をしつつ詠んだ数々の名歌が刻まれている。読む
今春、釧路を訪れた。夕暮れ時、高校時代の通学路をたどった。幣舞橋を渡り、出世坂を上る。幣舞公園から街を見下ろす。読む
「北海道で御座います。網走とか申す所だそうで、大変遠くて不便な所だそうです。」残暑厳しい8月の午後4時、上野発青森行の汽車。主人公の男性「自分」に行き先を訊かれた子連れの女性が答えた。読む
本書は2019年に札幌芸術の森で開催された「札幌美術展 砂澤ビッキ-風-」を記念して出版された美術書である。読む
大沼湖畔に実在する児童自立支援施設をモデルにした駒ヶ岳学院が物語の舞台だ。暴力、触法行為、性非行、虐待や養育放棄などさまざまな理由で家庭から離された子供たちが家庭的な寮生活をおくりながら、自立をめざしている。読む
道東、竜ノ岬海岸に浮かぶ塔を舞台に描かれるひと夏のストーリー。濃霧に包まれる道東には、私たちが生きている時間と空間の編み目をいともたやすくゆがめ、境界をあいまいにさせる不思議な魅力がある。読む
中年男性と駆け落ちした須賀順子の生きざまを、道立湿原高校時代の同級生たち、駆け落ちされた妻、さらには順子の母、それぞれの目を通してオムニバス形式で綴った作品である。読む
本書は6編を収録する短編集で、随所に北海道ゆかりの人物が登場する。作品ごとに趣向は異なるが、当欄では冒頭作「サッポロの光」を紹介したい。読む
交通事故で同乗していた女性を死なせてしまい、厭世的な毎日を送る亮次。幼少期に母親から虐待を受けて、感情を上手く制御することのできない恭介。読む
19世紀後半、縦糸として「樺太・千島交換条約」によって故郷樺太を追われ北海道の対雁(ついしかり、江別市)に移住させられた樺太アイヌのヤヨマネクフと、横糸として露国に奪われた祖国ポーランドを解放するために「皇帝暗殺計画」に加担し流刑となったピウスツキとの両者が、樺太で運命的な出会いを経て、民族研究と共にアイヌの「学校」建設など、紆余曲折の歴史ロマンを織りなす「大群像劇」の小説である。読む
アイヌ出身者としてはじめて国会議員となった萱野茂氏が、約70年の暮らしの中で体験してきたアイヌの行事や出来事をまとめたのが、この本だ。読む
物語の舞台は北海道の北都市、架空の街である。かつて炭鉱で栄えた街、炭鉱事故という悲しい歴史を背負う街、そして大観音が見守る街。読む
『あい─永遠に在り』は、現在の千葉県東金に生まれ育ち、その後医師としてまれにみる精進を重ねた関寛斎の妻あいの一生の物語である。読む
植松電気のホームページを拝見すると「どうせ無理」を「だったらこうしてみたら?」に、人の可能性を奪わない社会を目指します、とある。読む
八木圭一は2013年、『一千兆円の身代金』で『このミステリーがすごい!』大賞を受賞しデビューした。読む
知里幸恵といえば登別出身で、彼女の業績とアイヌ文化を広く伝承する「知里幸恵 銀のしずく記念館」が有名であるが、旭川でも彼女の功績は広く知られている。読む
渡辺淳一の自伝的小説。「婦人公論」に1971〜72年まで連載し、73年に中央公論社より刊行された。ヒロイン時任純子は札幌南高校の2年生。読む
179市町村のうち、その8割以上が過疎地域になっている北海道民にとって、「過疎」ということばは、もはや当たり前すぎるものになってしまった。読む
累計発行2000万部超と言われる「青春の門」だが、第7部「挑戦篇」で北海道(江差町・函館市)が舞台となっていることは意外と知られていない。読む
北の科学者群像[理学モノグラフ]1947-1950(杉山 滋郎)
昭和20年、東京は空襲で壊滅状態となる。しかし北海道では印刷所や製紙工場が操業を継続していた。そこで、講談社を皮切りに出版社が次々と札幌に支店を開設し疎開。読む
奇跡の本屋をつくりたい くすみ書房のオヤジが残したもの(久住 邦晴)
札幌市の西区琴似にあった街の本屋さんが時代の波にどのようにあらがい、何を残していったのか、その「くすみ書房」社長・久住邦晴さんの苦闘と創意工夫、最後まで諦めずに描き続けた夢が記された本である。読む
北海道と命名されて150年だという。50年前は、「開基100年」「開拓100年」と言っていなかったか。「開基」や「開拓」の文字はなぜ消えてしまったのだろう。読む
「北海道の女の人って、みんなそんなにワイルドなの?」とは、かつて関西の友人から私が言われた台詞だが、『猛スピードで母は』に登場する母親こそ、まさにワイルド。読む
「U市は札幌から二時間汽車に揺られ、そこから私鉄に乗り継いで三十分ほどの距離にある小さな都市で、世帯のほとんどが何らかの形でU炭鉱に関わっている」。読む
日本公認女医第1号の荻野吟子(ぎんこ)の生涯を描いた小説だが、後半部分は自身が入植した「イム(ン)マヌエル」(現今金町神丘)での生活に割かれている。読む