2001年に選定が始まった「北海道遺産」。準備段階から常にその精神的支柱として遺産構想をリードした故辻井達一北大名誉教授は、様々な地域資源に光を当て、そこに人が集う仕組みを老若男女がまじわりわいわい楽しく議論しながら作り上げる、そんな魔法が掛けられる人だった。文化財的価値だけでなく「担い手」「思い入れ」「らしさ」を基準とすることで、遺産が地域の未来の核を創る。こうして20年で67の遺産が選定された。豊富な写真と的確適量の解説が付され、地域の夢を楽しく巡るのに最適な1冊だ。
著者 佐藤圭樹 出版社 北海道新聞社 発行 2021年6月16日 価格 1870円(税込)
ページをめくる手がなかなか動かない。小さなラベルひとつひとつの意匠から、その時代の空気や匂いまで立ち昇り、目が離せなくなる。それらが記憶と結びつくことで様々な発見があり、また次の疑問がわき、自分の奥深くに潜む言葉にならない感覚がうずくのだ。大正期から昭和30年代までの小さな文化財たち。収録された1200点もの燐寸箱は著者のコレクションのごく一部といい、それらをカテゴライズして見事な時代絵巻に仕立てた編者の力量もすごい。この小宇宙を、ゆっくりと味わっていただきたい。
著者 上ヶ島オサム 編者 和田由美 出版社 亜璃西社 発行 2021年8月7日 価格 2200円