朝日IDをお持ちの方はこちらから
AFCのログインIDをお持ちの方(2024年7月31日までにAFCに入会された方)はこちらから
新規入会はこちらから(朝日IDの登録ページが開きます)
北海道百年記念塔の解体がこの秋にも始まると報じられている。
1968年、開道100年を記念して札幌市厚別区の野幌森林公園に着工され、2年後に完成した。高さは100メートル。老朽化や維持費の問題で4年前には解体が決まっていたが、地元住民からは存続を望む声が出ているという。
元朝日新聞編集委員で札幌を拠点に執筆活動をしていた作家の外岡秀俊さんは、百年記念塔ができた100年記念事業について、記事の中でこう解説している。
「開拓100年を祝うという考え方が強く、先住民族であるアイヌの歴史を無視しているといった批判も高まり論争が起きた。そこから民衆史発掘の運動が生まれた。タコ部屋労働やアイヌ民族の問題などが掘り起こされ、私たちには、開拓だけではない幾層もの歴史があることが明らかになった」
この記事を読んで、白老町の国立民族共生象徴空間(愛称・ウポポイ)を初めて訪れたときのことを思い出した。再現されたアイヌの伝統的なチセ(家屋)の中で、ムックリ(口琴)を披露していた民族衣装姿の女性が、演奏が終わるとぽつりぽつりと話し始めた。
ウポポイができる前、ここはポロトコタンと呼ばれていた。ポロト湖のほとりの小さな集落で、アイヌの仲間たちが自ら文化や伝統を守り、伝える場だった。今はきれいな施設に生まれ変わって感謝しているけれど、ポロトコタンのことも忘れないで欲しい――
アクリル板越しに語った女性の表情を、いまでもはっきりと覚えている。
外岡さんの言う「幾層もの歴史」とは、そういうことなのかも知れない。目に映る表層の下には幾つもの歴史が折り重なっている。決して忘れてはいけない歴史である。
そう思うと、百年記念塔の奇妙な形もどこかいとおしく感じられた。
朝日新聞 北海道支社長 山崎靖
「原発用地取得ゼネコン介在/関電の依頼を受け/発覚避け偽装契約」1999年10月11日の朝日新聞朝刊1面に大きな見出しの記事が載った読む
阪神・淡路大震災から29年が過ぎた。1月17日、大阪社会部の記者だった私は、ライフラインが止まった兵庫県西宮市のマンションに妻と1歳の長男を残し、ひとり自転車で飛び出した。読む
ジョニー・ディップ主演の映画「MINAMATA」で、真田広之演じる男が自らの体をチッソ水俣工場の鉄門扉に鎖で結びつけるシーンがある。読む
大惨事は澄み渡った青空の下で起きた。2005年4月25日、神戸総局のデスクだった私は、ひっきりなしにかかってくる電話を受けながら大量の原稿と格闘していた。読む
「被災者」という言葉は使いたくなかった。 東日本大震災の直後に仙台総局のデスクとして赴任し、現場から送られる同僚記者の原稿に目を通しながら、その表現に違和感を覚えていた。読む
北緯40度11分、東経147度50分。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)から発射されたミサイルが日本の頭上を越えて着弾したと思われる地点は、雲でかすんだ水平線しか見えない太平洋のまっただ中だった読む
高校野球の季節がやってきた。北北海道大会が開催されている旭川市のスタルヒン球場は、球場の名前にもなった大投手スタルヒンの像が出迎えてくれる。読む
災害級の大雪に見舞われた札幌にもようやく春が訪れた。その厳しかった冬のまっただ中に、私たち新聞製作に携わる者にとって忘れることのできない出来事があった。読む