阿寒出身で現在は陸別に住み、全国に向けてアイヌ文化やその歴史を発信している藤戸ひろ子さん。その4回の講義を軸に半期にわたって展開された神戸女学院大学の講座記録だ。サブタイトルを見ての通り、企画した教員を含め一方通行の講義ではなく、対話を軸とした学びによって講座が進行していったことがわかる。そしてこの本は、それを追体験できる構成となっている。先入観やイメージでなく、今を生きるアイヌ民族を学ぶための好著だ。
共著 藤戸ひろ子、石川 康宏ほか 出版 日本機関紙出版センター 発行 2022年8月4日 価格 1650円(税込)
著者は小川未明文学賞大賞受賞者。相次ぐ事故や閉山により沈滞していく炭鉱町を舞台に、家族や友人、先生、周囲の大人たち、先祖や亡くなった人々、自然や生き物との交わりを生き生きと描く12の短編小説だ。三笠市で育った自らの体験をベースに創作された各編は相互に繋がっていたりその変奏曲であったりして、併せ読むことで見えてくる物語もある。産炭地の歴史や生活、そこに生きた人々の息遣いまで伝わる。次代に残したい記憶である。
著者 市川洋介 出版 共同文化社 発行 2022年10月21日 価格 1430円(税込)