炭鉱の地域再生やコミュニティー変遷の研究、生活史の記憶伝承を目的に大学教員や学芸員らが参加する「産炭地研究会」。そのメンバーがデータや郷土史、写真などを整理・分析し、聞き取り調査等の成果も合わせ、芦別に暮らした人々の足跡(フットプリント)を再現したのが本書だ。これを可能にしたのが最後の炭鉱閉山の翌年(1993年)開館した「星の降る里百年記念館」の膨大な資料群と、その収集管理保存を担い本書の執筆者の一人でもある長谷山隆博元館長の存在。他に例を見ない稀有な研究成果、後世への遺産となろう。
編著者 嶋﨑尚子ほか
出版 寿郎社
発行 2023年12月28日
価格 4400円(税込)
旭川近文を訪ねた金田一京助。そこで出会った少女に送ったノートに、幸惠は祖母モナシノウクや伯母マツから聞き覚えたカムイユカラやウポポを、ローマ字書きのアイヌ語と日本語訳とで必死に綴った。そして短い生涯を捧げ『アイヌ神謡集』を完成させた。ノートは民族の口承文芸を初めて記した重要な歴史遺産として道立図書館に保存されている。本書はノート4冊と解説1冊からなる知里森舎版の再復刻版。筆跡からは文字にしぼりだす苦心や思いが感じられ、『アイヌ神謡集』とともに手もとに置きたい貴重な資料だ。
著者 知里幸惠
刊行 知里森舎
出版 藤田印刷エクセレントブックス
発行 2024年1月22日
価格 4400円(税込)
評者:鈴木幸夫 知床自然大学院大学設立財団理事・元朝日新聞文化財団事務局長