著者は長年にわたりヒグマやエゾシカ研究に携わり、「北海道エゾシカ管理計画」策定や日本学術会議による環境省への提言「人口縮小社会における野生動物管理のあり方」(2018年)を実質的にまとめたパイオニアだ。野生動物と共生するためワイルドライフマネジメントの重要性を訴え、それを担う人材育成に尽力してきた。自らの研究生活を振り返りながら、調査・研究・管理手法や異分野・海外との連係の足跡を振り返り、その成果とエッセンスを初学者にもやさしく解説する。喫緊の課題に対する最良の教科書だ。
著者 梶光一 出版 東京大学出版会 発行 2023年5月15日 価格 4620円(税込)
明治政府の支配(植民地化)によって奪われたアイヌ民族の生活権、喪失の危機に晒された言語や文化。2019年「アイヌ施策推進法」により、民族文化面の回復復興発展を図るための要とされたのが「ウポポイ」である。その前身であるポロトコタンの歴史から、中核施設である国立博物館の意義やあり方、開設準備段階から始まる様々な議論と試行錯誤、コロナ禍での開業を余儀なくされた苦難への対応、ウポポイの理念を具現化するための様々な工夫や試みについて、当事者たちが率直に語った貴重な記録である。
編者 国立アイヌ民族博物館 出版 国書刊行会 発行 2023年3月30日 価格 3080円(税込)