阿寒湖(釧路市)の大きなマリモは自然の神秘が生み出した植物だ。
長さ3~4センチの糸状の藻がからまりあい、波の力で回転して直径20センチを超えるまで成長する。時に岸に打ち上げられて壊れるが、破片が湖に戻り、再び球状に成長していく。こうした「破壊と再生」のメカニズムや、国内では阿寒湖でのみ大きく育つ条件は、ここ30年来の研究で明らかにされてきた。
昨年の秋、「マリモ博士」として知られ、研究の中心だった若菜勇さん(66)にマリモの現状を聞いた。「近年、大型マリモが減る傾向にあり、かなり心配している」と説明してくれた。
マリモは過去に何度も絶滅の危機にさらされ、その都度、何とか守られてきた。直近の危機は約10年前だ。下水道整備により水質が浄化した半面、アマモなどの在来の水草が増え、マリモの成長を阻害した。水草は2016年の台風の際に一度減り、直後にマリモが回復したが、この数年で再び水草が勢力を再拡大しているという。
加えて、市と国内の大学との共同研究によると、地球温暖化の影響も指摘されている。
今年1月、マリモの現状と課題について阿寒湖周辺の住民向けの説明会があった。
若菜さんの報告もあり、参加した観光協会の幹部は「行政の動きが遅い」と危機感を募らせた。
関係者の念頭にあるのは、阿寒湖と並んで大型マリモの群生地とされたアイスランドのミーヴァトン湖だ。06年に地元の研究者がマリモの減少を警告し、14年に同国からマリモの絶滅が宣言された。その間わずか8年。
阿寒湖のマリモの現状については、研究者の間で見解が分かれる部分もあり、危機かどうかは確定していない。新年度以後に実施される現地調査を待つ必要がある。
記事を書く側としては、冷静に見極めたい。一方で、もしも本当に危機なら残された時間は少ない。例年、マリモが生息する湖北部のチュウルイ湾を覆う氷が解けるのは4月中旬。再会が待ち遠しい。
朝日新聞釧路支局長 古源 盛一
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