やっとだ。札幌市内に残る雪はどんどん少なくなり、街に明るさが戻ってきた。赴任して3月末でちょうど2年。今年こそ、マスクを外して札幌の街中を散策したい。
そして、あと3カ月ほどで、札幌市中央区の円山公園一帯に「あれ」が現れる。通称「G」。正式名称ヤマトゴキブリ。家の中のゴキブリは嫌いだが、不思議なことに、ヤマトゴキブリに屋外で遭遇する分には、嫌悪感よりも好奇心が勝つ。観察が楽しみだ。
彼らの境遇を振り返る。真偽不明の俗説では、万葉集の時代から畿内にいた、とされる。現在、東京など本州の屋内で一般的にみられるのはクロゴキブリという種で、素人目にはそんなに違いはないのだが、生存場所を巡って争う間柄らしい。その結果、クロゴキブリにおされてヤマトゴキブリは姿を消している可能性もあるという。
札幌には移植された樹木か何かにくっついて近代になってたどり着いたとみられる。円山公園でひっそりとコロニーをつくり、繁殖し、厳しい冬を乗り切って、命をつないでいる。
人前に姿を見せるのは、暖かくなった7月から9月の夜8時以降だ。ハルニレなどの樹木の表面や、周囲の地面をかさかさと動き回る。個人的には、確かにGなのだが、ふつうの昆虫と変わらない。
昨年夏の夜、北海道大学電子科学研究所の西野浩史助教と、北大大学院理学研究院の水波誠教授(行動神経生物学)がヤマトゴキブリを研究のために捕獲した。研究者には垂涎の的なのだろう。
昨年12月、朝日新聞のデジタル版と紙面で、この円山公園のヤマトゴキブリたちを紹介したところ反響は大きかった。これに対して、西野さんは「愛好家が乱獲しないか」と心配を口にした。筆者は「そんな好事家が何人もいるのかな?」と思うのだが。
執筆者:朝日新聞北海道報道センター記者 松尾一郎
イラスト説明:【マンガ動画】北海道にゴキブリがいるって本当?
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