記者の原稿をチェックするデスクという仕事をしているので、どうしても細かな言葉の使い方が気になるものです。次の二つの原稿を読み比べてみて下さい。
【A】イヌやネコの愛らしい表情をとらえた写真展が、札幌市中央区で開かれている。撮影したのは写真家の伊藤唯行さんで、家で飼われている動物の写真30点が展示されている。
【B】写真家の伊藤唯行さんが、イヌやネコの愛らしい表情を撮影した写真展を、札幌市中央区で開いている。伊藤さんが家で飼う動物の写真30点を展示している。
どうでしょうか。同じ内容でも印象が違いませんか。そしてたぶん、Aのほうが耳に心地よいと思います。でも、私が新聞の原稿として正しいと思うのはBです。
違うのは能動態か受動態か。「した」が能動態、「された」が受動態です。受動態だと主語がなくなります。
Aは、最初の文では誰が展覧会を開いたのかが分かりません。次の文で主催者、撮影者が分かりますが、今度は「展示され」「飼われ」とあり、全体的に情報がぼやけています。さらなる説明も必要で、文章も長くなります。Bは主語を明示していて、文章も短い。情報を簡潔に伝えるという新聞の使命からすれば、Bが適当だと思います。
ただ、Bが堅く聞こえるのも事実。テレビでは冒頭に会場の映像を流すので、映像に合わせて「開催された」と言うのが一般的です。日常会話でも「私が、彼が」と主語を強調すると、なんだか自己主張の強い人に見えてしまいます。若い記者のほうが原稿で主語を消す傾向があり、社会の流れなのかもしれません。
言葉は時代と共に変わるもの。最近は受動態を交ぜたほうが自然に聞こえる場合は、固執せず採り入れるようにしています。「でもなあ」と時にぼやきつつ、より分かりやすく、読みやすい原稿を模索している日々です。
執筆者:朝日新聞北海道報道センター次長 伊藤唯行
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