野生のヒグマをみたい。
とはいえ、「ヒグマと会わないために」と書いてる手前、筋の通らない行動はできない。
自然を楽しみながら、安全に目撃できる場所はないか。知床五湖の地上遊歩道は、2011年から自然公園法の「利用調整地区」に指定された。背景には、自然景観や生物多様性の維持を推進し、観光資源としての利用価値を高めるという側面がある。
立ち入り人数が制限され、ヒグマの活動期には認定を受けたガイドの同行が義務づけられる。今年は176件の目撃があったが、指定以降、人身事故は確認されていない。
今年7月下旬、知床五湖に向かった。野生動物に餌を与えない▽植生を踏み荒らさないなど、注意書きが並ぶ。
遊歩道に足を踏み入れ、数秒後。茂みの隙間からメスシカが顔を出していた。その距離は5㍍もない。「メスはクマが近寄らない遊歩道の近くに来るんだ。クマは人のところに来ない」。例年、50回ほどヒグマを目撃するガイドの男性(63)が説明してくれた。
歩みを進めると、縦に3本の傷がついた木がいくつもあった。ヤマブドウを食べるために、ヒグマが登った跡だという。堅い木をえぐるほどの力。目には見えないが近くにヒグマがいることを感じ、興奮と恐怖が入り交じった。
自然の豊かさを実感しながら歩くこと1時間半。
「がさごそ」と茂みが揺れた。目を凝らすと、1㍍もないくらい小さな生き物が木々の間を走り抜けていく。エゾクロテンだ。
「クマよりレアですよ」とガイドの男性も興奮気味。動きも素早く小さいため、めったに出会えないという。その価値を理解しきれずにいると、トランシーバーが鳴った。「四湖の対岸。メスの成獣」。私の後に入った班が目撃し、情報共有されたようだ。その後、ヒグマの影は見えずに歩き終えた。
ヒグマ対策は命に関わる問題。会えなかったが、その生態を間近で見られただけで十分だ。記事を書く上で、現場の感覚を少しでも知りたかった。クマより珍しい、エゾクロテンにも会えたし。
朝日新聞北海道支社記者 古畑 航希
豊頃町を昨年12月中旬に初めて訪れた。目的は、町で唯一のスーパーが閉店したのちに、町の要請を受けてセイコーマートが出店したことを取材するためだ。読む
阿寒湖(釧路市)の大きなマリモは自然の神秘が生み出した植物だ。長さ3~4センチの糸状の藻がからまりあい、波の力で回転して直径20センチを超えるまで成長する。読む
新聞記者になって18年経つが、ここまで読者と密にやり取りした経験はなかった。紙面購読者を対象に開催している「朝日新聞デジタル体験会」に11月25日、記者として初めて登壇した時のことだ。読む
野生のヒグマをみたい。とはいえ、「ヒグマと会わないために」と書いてる手前、筋の通らない行動はできない。 読む
発生から9月で5年になった北海道胆振東部地震で、山の大規模表層崩壊があった厚真町吉野地区に通って、農業を営む早坂信一さん(58)を取材した。読む
「え? 飛行機を使うの?」。帯広在住の私。昨冬、網走に流氷観光に行こうと、乗り換え案内サイトで公共交通機関のルート検索をして驚いた。読む
夏の甲子園は慶応(神奈川)の優勝で幕を閉じました。今大会、北北海道の担当を務めました。読む
今年の春に北海道報道センターに着任しました。前任は東京本社のコンテンツ編成本部。読む
ヒグマの目撃情報が相次ぐこの時期、決まって思い出すのが、5年前、本島から20キロ以上を泳ぎ利尻島に渡ったあの若い雄のヒグマのことだ。当時は利尻島を担当する稚内支局長だった。読む
2002年、当時の北海道報道部で取材指揮や紙面編集の責任を負うデスク(次長)5人の末席に連なっていた私は夏の高校野球を担当した。読む
同郷の歌人石川啄木ゆかりの函館に赴任して、真っ先に行ってみたかった場所がある。立待岬にある一家の墓でも、代用教員を務めた小学校でもない。「乞食(こじき)」の供養塔だ。読む
ふとした街の風景を見落としていないか。運転に集中しなければいけない車や、トンネルを走り続ける地下鉄を使っていると、時折、そんなふうに思う。読む
夏の甲子園で、宮城県の仙台育英高校が優勝してから約2カ月。北海道では、春の甲子園出場を目指す20校が戦う、秋季全道大会が終わりました。読む
札幌勤務で単身赴任となって半年になる。たまたま北大に通っていた長男の近くに住もうと、大学からほど近いところに部屋を借りた。読む
5月1日、札幌ドームでラグビー早明戦があった。北海道ラグビーフットボール協会が招待し、北海道では9年ぶりとなった対決にまつわる話を紹介したい。読む
記者の原稿をチェックするデスクという仕事をしているので、どうしても細かな言葉の使い方が気になるものです。読む
やっとだ。札幌市内に残る雪はどんどん少なくなり、街に明るさが戻ってきた。赴任して3月末でちょうど2年。今年こそ、マスクを外して札幌の街中を散策したい。読む