札幌勤務で単身赴任となって半年になる。たまたま北大に通っていた長男の近くに住もうと、大学からほど近いところに部屋を借りた。
あたりは閑静な住宅街というよりは、ときににぎやかな学生マンション街。スーパーや飲食店も近くにあり、なにより良書ぞろいの古本屋に歩いていけるのがうれしい。
この半年で街には大きな変化があった。会社の行き帰りに通るJR札幌駅の北口周辺で、工事現場や車線規制をよく目にするようになった。街を彩る駅のショッピングモールの閉館セールも始まった。
2030年度末に札幌まで延びる北海道新幹線の新駅や高架をつくる工事がいよいよ本格化しようとしている。
先日、ポストに封書が入っていた。新幹線建設に伴う新たな通行止めや車線規制について、近く住民説明会を開くというお知らせだった。
「騒がしくなるかな」と考えつつ、説明会の文字をみて、この春に小樽市で取材したときのことを思い出した。新幹線が延びるかわりにJR函館線の小樽―長万部間の約140キロは廃線になり、代替バスが運行する見通しだ。
小樽市が開いた説明会をのぞきにいく際、山あいにある小さな無人駅に立ち寄った。がらんとした待合室で、お年寄りの女性がカメラを肩にかけた私をみて、話しかけてきた。
「鉄道がなくなると、すごく困るんです。小樽にも新幹線は通るけれど、ここは取りのこされてしまう」
バスになるといっても、ただちに不便になるわけではないという声もある。ただ、人口が減るなかで利用者も少なくなり、道内では代替バスを廃止する町も出始めた。
工事が構想通りに進めば、札幌から東京まで最速約4時間半でいけるようになる。ますます便利になる地域がある一方で、その恩恵にあずかれない人たちも少なくない。
新幹線という光に隠れがちな影の部分に、目をこらしていきたい。
朝日新聞編集委員 堀篭俊材
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