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>HOME >朝カフェ 北海道の小さなお話 >「北海道の鉄道の将来像って?」(2023/10/16)

VOL19:北海道の鉄道の将来像って?

 「え? 飛行機を使うの?」。帯広在住の私。昨冬、網走に流氷観光に行こうと、乗り換え案内サイトで公共交通機関のルート検索をして驚いた。出てきたのが、約160㌔逆方向の新千歳空港に行き、飛行機に乗って女満別空港を経由するルートだったからだ。

 自分で時刻表をめくって納得した。一番早い列車で帯広を出ても、網走到着は夕方5時17分。乗り換えの釧路駅で、網走行きの列車まで3時間17分も待たされる。ちなみに飛行機利用だと網走着は午後2時22分だった。

 車なら、網走までは約200㌔、4時間というところか。だが、厳冬期、ツルツル路面に心砕きながら長距離を運転する気になれず、結局、今回の旅行は諦めた。

 帯広に住んでいて、鉄道の利用に不便な思いをすることが多い。

 真冬に、約180㌔離れた滝川に出張しようとした時。本来なら根室線で直通だが、途中の東鹿越―新得間が2016年夏の台風災害以来、不通になっている。代替バスは乗り継ぎが悪すぎた。車は峠越えが不安だ。なので、一度、特急で札幌まで出て、函館線で滝川まで行くことに。約120㌔の遠回りとなった。

 特に、この不通区間を含む根室線・富良野―新得間は、来年3月末での廃止が決まってしまった。帯広から旭川に行く最短の鉄路でもあったのだが、これでさらに不便になる。

 私は、かつて新婚旅行でスイスに行ったことがある。主要都市、観光地へは鉄道網が張り巡らされていて、外国人は周遊切符で乗り放題。ダイヤもよく考えられていて、どこへ行くにも不便を感じなかった。外国人旅行者にとってバスやレンタカー利用は少しハードルが高いだけに、鉄道で気軽に移動できるスイスがすっかり好きになった。

 外国人観光客の誘致を推し進める北海道にとっても、道内各都市の移動に便利な鉄道システムをつくることは有益なはずだ。また、高齢化社会が進む中、冬季の運転に自信のない人にとっても、貴重な都市間移動手段になる。

 だが、今、北海道の鉄道の将来像は、採算性だけが注目されて、活用方法はあまり議論されていない気がする。実に、もったいない。

朝日新聞帯広支局長 中沢滋人

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